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敵中横断二九六千光年1 セントエルモの灯

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ゲーム開始



「ガミラス艦を生け捕るための艦隊がこの〈ヤマト〉を捕まえようとしている? 〈メ二号〉をやるために?」南部が言った。「冗談だろ?」

だがもちろん、冗談ではない。メインスクリーンに〈ヤマト〉に向かって進んでくる五つの指標が映っている。駆逐艦五隻によって構成された高速の艦隊。ガミラス艦を捕らえることのみを目的に特化された船の速度は、波動エンジンを持つ〈ヤマト〉にも劣らない。加減速と小回りでは〈ヤマト〉をはるかに凌駕するそれらが、宇宙に五弁の花を咲かせたような航跡を描いて散開した。

「今なら主砲で沈められます。けど――」

新見が言うと、沖田が、

「当たり前だ。味方を撃つわけにいくか」

南部が言う。「しかし、どうするんです! 捕まったら〈メ二号〉を強要されることになる!」

迫ってくる小型の味方――これは大艦巨砲主義の盲点を突く状況と言えた。〈ヤマト〉の主砲は小さな敵の射程外から相手の装甲を貫ける。そのように設計されたのだ。だから本来、駆逐艦の五隻やそこら、まだ遠くにいるうちに穴開きのオカリナ笛にしてしまえばいい。しまえばいいが、しかしそれができないとなると?

「落ち着け! 勝手が違うのは、やつらにしても同じことだ。あの艦隊は、本来もっと小さな船を生け捕ることを目的にしている。この〈ヤマト〉やこの前の空母のような大物を捕らえるのは想定にないのだ。本当ならばデカい砲を積んだ相手に向かうようなことはない――」

だがその五隻が、〈ヤマト〉を囲み込もうとしている。明らかに〈ヤマト〉には自分達を撃てないと見たうえでの行動だった。そして彼らも、〈ヤマト〉乗員を殺すつもりなどはない。ただ相手を生かしたまま捕らえようとする者達と、こちらもそれを殺すことなく逃げなければならない〈ヤマト〉。互いに生死はかからぬが、しかし身に背負うものすべてを懸けたといえるゲームがいま始まったのだった。

「通信を入電! レーザー通信です」相原が叫んだ。「『停船せよ。さもなくば実力で止めるのみ』」

「ふむ」と沖田。「そうか」

「返信しますか?」

「そうだな。『来てみろ』とでも打ってやれ」それから言った。「島、このまま全速だ!」

「はい!」

「やつらは速い。だがチーターのような短距離選手だ。この〈ヤマト〉の全速にいつまでもはついてこれん。まずは逃げの一手で行く」

「艦長」と徳川が、「サブは慣らしを終えたものを積んどるが、メインエンジンにはまだ負担をかけられんぞ」

「わかっている。出せる範囲でやってくれ」

沖田は言って、新見を向いた。

「問題は、しかしわしもそこまでしか知らんということだ。新見君、あれに関する情報はあるか」

「いいえ……あの艦隊については軍内部でも機密が多く……おっしゃる通りそう長く息が続かないのは確かですが、その詳細も明らかではありません。ガミラス捕獲にどんな手を使うのかも……」

そこで森が叫んだ。「艦隊が何か撃ち出しました!」

メインスクリーンに映像が出る。五隻の駆逐艦すべてが、それぞれの前方に向けて何か発射したらしい動きが線で表されていた。

「魚雷です! 連続して射っています。その数二十!」

一隻が四本ずつ射った勘定だ。宇宙空間を二十本の航跡がわずかに広がりながら駆ける。しかしどうやら、〈ヤマト〉を狙って射ったのではないようだ。

「なんだ? 前へ追い抜いてくぞ」

太田が言った。その通りだった。〈ヤマト〉の後方から放たれた二十本の宇宙魚雷はどれも進路を曲げるでもなくただ前へと抜けていき、そして〈ヤマト〉のはるか前方で次々に爆発した――いや、『爆発』と言うよりも、

「花火?」南部がキョトンとした顔で言った。

無理もなかった。それはまったく、打ち上げ花火を上でなく前に見たような光景だった。二十本の魚雷がただヒュルルルと前に進んでいったと思うと、パンパンと球状に光る点を広がらせたのだ。

次から次にそれが二十。まったく夏の夜に見上げる打ち上げ花火そのものだった。それが〈ヤマト〉の進む先に展開される。

「なんだありゃあ」島もアッケにとられて言った。

「新見君、あれはなんだかわかるか」

沖田が言うが、新見も、

「さあ……」

そのときだった。真田が叫んだ。

「待て! あの中に突っ込んじゃダメだ! 島、あれを回避しろ!」

全員が真田を向いた。真田は言った。

「あれはおそらく、〈反重力感応器〉だ」