敵中横断二九六千光年1 セントエルモの灯
状況終了
シミュレーターから古代はヨロヨロと這い出した。人工のGに振り回されて体はもうフラフラだった。
足なんか関節がふたつくらい増えた気がする。まるで立っていられずに、へたり込んでうずくまった。
「五分休憩です」と山本が告げる。
「うにゃあ」
「その後はランニングマシンによる走り込みと筋力トレーニングをしていただきます。それからまた休憩をはさんでシミュレーター」
「うにゃにゃあ」
「それから……」
「うにゃにゃにゃにゃにゃにゃっ!」
「いえ、火星と木星行きが取りやめになったとお伝えしようと思ったのです。代わりに小惑星の陰を渡りながら土星に向かうそうです」
「うにゃにゃあ……」なんとか口が利けるようになってから、「なんかあったの?」
「いいえ」とだけ山本は言った。
作品名:敵中横断二九六千光年1 セントエルモの灯 作家名:島田信之