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ヤマト空想科学教室11 コーシロー弁護は通用しない

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コーシロー弁護は通用しない



実写版『ヤマト』と言えばキムタクだ! キムタクと言えば『HERO』だ! 関係ねーだろと言わば言え! 加藤を演った俳優も被告人役で出てるじゃんよ!

前回の〈大和→ジャパン〉だが、あれとは他に、その昔、〈日本〉の二文字に「ジッポン」という読み方があって、それが〈ジパング〉になったんじゃないかっていう説もある(だから信じるなと言ったろ?)。ヤマト空想科学と言いつつSFでもなきゃ『ヤマト』でもない。詐欺教室だって? その通りだ! 今回は『HERO』やっちゃうぞ。劇場版でキムタク検事は後に加藤を演ることになるあの俳優を訴追する。あの人、名前はなんてんですかね。おれは知らないんだけど。

が、本当の敵は弁護士だ! 演るのは松本幸四郎だ! コーシローは法廷でキムタクに向かい言うのであった。「推定無罪の原則をアナタは知らないのですか。無実の可能性がわずかでもあれば人を有罪にできないのですよ」と。

って、あのなあ。もし弁護士が現実に法廷でこんなこと言ったら、裁判官に、

「判断するのはワタシですよね。いつからアナタが決めることになったのですか」

と言われてすごく怒られるぞ。が、この際それはいい。このログでおれが言いたいのは別の話だ。

コーシローは法廷でひとつの実験をしてみせる。被告人カトーサブロー(おれは役名忘れた)の頭は金髪だ。それが(つまんないので略)なので無罪だと言うのだ。目撃者は被告人の顔を見たと言っていますが、そんなのアテにできません、と。

ああ、くだらねえ……映画館でこれ見たときは、おれはカネと時間を無駄にしたと思ったね。コーシロー先生、あいにくだけどその主張は、現実の裁判では通らねえよ。

そう思った。殺人ならおれは一件、若い頃にちょいと関わり合いになり、刑事が「アンタを探してたんだ」と訪ねてきたことがある。刑事は写真を三枚並べて、おれに、「この中に見覚えのある顔はないか」と言った。あったんだよねえ。おれは一枚を指差して、

「ええ、この人なら……けど、何かやったんですか」

「知らなかった? こいつは人を殺したんだよ。で、その後でキミに……」

えーっ!てなもんだ。ビックリしたなあ、あんときは……が、とにかく『HERO』だ。あの話の目撃者はカトーの顔を離れた場所から夜目に見ただけなのだった。コーシローはなんでそんなの証拠になると言うのだが――。

言えるんだよね。それは充分過ぎるほどの証拠なのさ。若い頃のおれの話でわかるだろう。刑事はそのとき写真を三枚並べたが、うち二枚はおれが野郎の顔が分かるか確かめるための無関係なものだった。

映画やドラマで〈面通し〉って見たことあるでしょ。マジックミラーの向こうに何人か並ばせて、『この中にアナタが見た者はいますか』と聞くやつ。あれだ。理屈は同じことであり、警察は当然これをやってるものと考えるべきだ。ここで「はい、あれです」と自信を持って言えない者は、証人として使えないわけ。

だいたい、考えてみろってえの。事件を目撃したという人がいれば警察は聞く。「犯人の顔はわかりますね? 裁判で証言していただけますか?」

「え?」とここで普通の人は、たじろぐもんなのである。「いや、見るのは見ましたけど……法廷に立って証言なんて、無理です。自信ありません」

みんなそう言うに決まってる。そこで面通しを行う。あの『HERO』の場合だと、金髪男を五、六人、街で集めて部屋に並ばせ、「この中にその男は――」

「あ! あれです!」

「確かですか? 髪型だけで言ったりしないでくださいよ。ちゃんと目とか鼻とか見て……」

「ちゃんと見て言ってます! あの目、鼻、口、あの輪郭。あいつなんです。あいつ! あいつ! ワタシが見たのはあれに間違いありません!」

こう言い切れる者だけが、証言台に立たせられる。てゆーか、自分から言うだろね。さっきまで「証言なんて自信ない」と言っていたのが態度を変えて、「やります! 証言します!」と。

つまり事件が検察に送られて来る前の段階で、そういうことがあったと考えていいのだ。よほどのことがない限り、この証言はくつがえせない。裁判官はコーシローの主張に「あんた、バカなんじゃないの」と言って、カトーサブローは有罪としてしまってよいのである。

だいたい、おれはあの俳優、名は知らないけど出た瞬間に、「あ、こいつ『パッチギ!』で見たな」と思ったぞ。金髪なんかにしてもわかるよ。時代劇にチョンマゲで出たのも見たことあるけど、一発でわかるね。わかりますよね? ま、現実は甘くないから、悪いことして罪を逃れられるとは思わない方が利口でしょう。