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靴ベラジカ
靴ベラジカ
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魔法少年とーりす☆マギカ 第十話「グリーフ・ラッシュ」

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肌を焼く強い日差しが刺さる、昼下がりのときわ町中央通り。 ときわ町は貿易の要所であった前世代から、欧米系、アジア系、ブラックパーソンと様々な人種が居を構えていたが、夏休み真っ盛りのこの日は観光客に溢れ、普段以上に多種多様な頭髪や肌色が行き交い商業地区を賑わせていた。 急激に暗雲が立ち込め、太陽が覆われていく様を見て、一般人達はある者はスマートフォンを掲げ、ある者は天気予報アプリケーションを起動させ、ある者はざわめき―
どうであれ、彼らの中にこれから起こる事を、これから起こる惨劇を、予測できた者など居なかった。

 喧しいホバリング。 プロペラの風切り音。 ときわランドマーク展望台屋根の上、無軌道に気象速報の空撮にでも来たのか、正しく飛んできた民間の報道ヘリは、展望階を穿ち丁度芯となる電波塔の反対側。 心のない淫靡な面持ちで首を傾ける人影達に容赦なく暴音を叩き付ける。 無感情で感情的な水子魔女等は方々に首を擡げ、うちの一体が右手に折れ曲がった棒状の暗雲を固めていく。 唖然とするフェリクスはボブの金髪を僅かに揺らし、喉の奥に沈殿しかけた固唾を再び飲み込んだ。 何事もなく済む筈が無い。 この狂った魔法少年の言う通りならば、彼らは人間のカタチをしているだけの― 魔女なのだから。 水子魔女の内一人の手元に一メートル近い暗雲は時折淀んだ浅葱を絡めて硬化、直後。
 黒き呪いが僅かにうねり、円環の正反対へヘアピンカーブ。 薄墨の様な浅葱色の闇はあべこべな蛍光エメラルドを撒き散らしながら加速し、報道ヘリを後部席貫通、ターン操縦席貫通、軌道微調整カメラマン貫通、急上昇上部プロペラ貫通、双曲線軌道で燃料タンク貫通、Vターン撮影機材貫通、機内をピンボール軌道で蹂躙しパイロット貫通、アナウンサー貫通… 魔法少年すら目で追うのが精々の異常速度で無辜のヘリコプターは血塗れグズグズの肉片が眠る鉄製棺桶の襤褸屑と変わり、放られた湿った生塵の如く、ゆっくりと海浜公園方面に墜落していった。
 夏の猛暑を詰る冷たい暗雲の下爆発炎上、黒煙を撒き散らしながら堕ちる民間報道ヘリ【だったもの】。
 その様を、ガンメタル染みて光沢の少ない漆黒に浅葱の遊色が蠢く、拘束するかのように全身くまなく纏わりつく、ベルト状で彩られた、タイトなボディスーツ染みた呪いの装束に身を包み。 バッシュの死体【だったもの】事、【太陽の水子魔女】は淫靡かつ無感情に目視し、悪魔的装飾が施されたバヨネットを抱き頬を寄せた。
 対話はもう不可能。 咄嗟に判断したフェリクスは爆発的強化の緋を足に乗せ太陽の水子魔女頸部に延髄斬り、しかし新手! 彼の先輩であった【剣劇の水子魔女】と化した菊は、振袖とオフィススーツのキメラの様な奇怪な黒い衣服を振り乱し、桜色の斬撃で緋の魔法少年を牽制、フェリクスは飛び退き回避! 寸でで退いた床に極大の切断痕と僅かな紅混じりの黒煙が残った。 
 負傷は無いが魔女の損傷は皆無、対峙する魔法少年の能力も未知数。 魔法的にブーストされたフェリクスの思考回路を電子信号が駆け巡る。 肉体が脊髄反射の反応を返す前に、フェリクスは緋の妖光に包まれ―
 左喉元に収まる井桁のソウルジェム。 トーリスが幾度となく守られた戦装束に似て非なる、遥かに優美な意匠が施された胸と肩の甲冑に、ドレープと編み上げが要所にあしらわれ裾がタイトスカート風に伸びる堅牢なトップスの上にブレザー様のジャケットを羽織り、短パン状のボトムスに白黒ボーダー柄のオーバー二―ソックスと、中性的な印象の魔法装束に身を包んでいた。
 仮想敵の武装になど目もくれず、無色の魔法少年は大きく一呼吸、長杖を振り下ろし、上半身はカソック風、失われた下半身からは霧状の闇が、古式ウプランド様に蠢き伸びる姿の【故】フェリシアーノ、【白衣の水子魔女】に指示を仰ぐように一瞥した。 示し合わせ共鳴するかの様に、魔女の発する幼い少年斉唱は、魔女の様なソプラニスタ魔法少年の朗唱に滑らかに重なっていく。
 恐らく現地人に聞かせても意味の解せぬ、素人耳でもすぐ判別出来る程に、カタカナ発声の拙い歌声。 耳にタコが出来る程聞き飽きたメロディ。 緋の魔法少年の脳内に魔法的同時翻訳が掛けられていく。 目前で数人の一般人が惨殺された、極限状況の場にはあまりにも不釣り合いな歌詞。 不穏と恐怖の二正面攻撃に煽られる緋の警告灯。 フェリクスは震える足に強化の布陣を敷き、駆けた。