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金剛になった女性 - 鎮守府Aの物語

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--- 11 爆発する感情




 木曜日から土曜日まで、金剛は日本から南東の方向に出撃していた。


 目的の海域までは艦娘専用の護衛艦で行くのが常だ。それは他の国の艦娘も同様である。当たり前だが艦娘の艤装でいくら海上を単独で進めるようになるとはいえ、燃料は普通の船よりも少ない。作戦や戦闘以外で消費するのは避けられるべきなのだ。
 日本からは鎮守府Aと、中部地方と四国にある鎮守府から艦娘の艦隊が派遣され、一隻の護衛艦に計18人と18人分の艤装が乗り込んでいた。他の国からの出撃も同じようにその国の護衛艦や巡洋艦に艦娘が乗っている。
 帰路に着く際も同じ状態で帰還する。(途中護衛艦の補給や休憩のために第三国の港に寄港する)


 南東への出撃任務から金剛たちが帰ってきた。アメリカと中国の艦娘の艦隊と合同で取り組んだ深海凄艦の撃退は大成功のうちに終わったのだ。
 鎮守府Aからは次のメンツで参加していた。
 旗艦金剛。彼女が職業艦娘なので、学生艦娘も中規模以上の出撃任務に参加させることができる。というわけで同じ艦隊に駆逐艦不知火、黒潮の二人が、不知火らの学校の艦娘部の顧問および保護者として隼鷹、同じ軽空母仲間の飛鷹も参加していた。
 そして、姉妹艦の比叡も参加していた。
 ちなみに隼鷹は非常勤の教育秘書艦でもあったため、裏の目的では生徒の指導や金剛の監視など別の作業も兼ねている。


 鎮守府Aに帰還したあと、隼鷹が裏で提督に報告した内容は、いささかまずいものが含まれていた。なんと金剛が、意図的でないにせよ他の鎮守府の艦娘に艤装の動的性能変化・心を検知する機能の存在について話してしまったのだ。他の鎮守府の艦娘らはそんなこと一切知らなかったため、金剛の話を一蹴してそれ以上話は広がらなかったが、その後の金剛の対応もまずかった。
 旗艦は金剛であったので、起こした問題についても合わせて問いただすことにした。


「金剛、報告書は見ました。作戦成功ご苦労様。・・・と言いたいところだが、帰還するまでが作戦行動なのは言われなくてもわかっているよな?」
「ハイ。」


「隼鷹から話は聞いた。帰還途中に他の鎮守府の艦娘たちにバラしてしまったそうだな。」
「・・・ハイ。」
 相槌なのか、そうですという意味なのか、金剛はハイしか言わない。


「それ自体は仕方ない。まあいい。どうせ他の鎮守府の艤装は動的性能変化は起きないから嘘だと思われてもさ。だが喧嘩はまずい。他の鎮守府とのいざこざはまずいんだ。ことの顛末を教えてくれ。」
 これまで優しく接してくれて会話してきた提督が、聞いたことがない強い口調で問いただしてきた。彼が怖くなったがここはあくまで仕事場。金剛は説明し始めた。


「比叡をバカにされたので怒りマシタ。その後の相手の言い方も許せませんデシタ。頭にキて手をあげ、演習を申し込みました。」
 彼女の説明とさきほどの隼鷹の説明をまとめることによると、同艦隊にいた比叡が他の鎮守府の艦娘よりも(動的性能変化により)高出力での砲撃を繰り返していたのが他の鎮守府の艦娘の気に触った様子とのこと。比叡の艤装は不正改造されていたのではとか、比叡は同調率も低くて艤装をうまく扱えていないだけの計画性のない初心者・ラッキーガール、アホなだけなのではと。


 あまりに態度悪く言われていたが、比叡は持ち前の明るさでそれを意に介さず受け流している様子。が、金剛はそれが我慢ならなかった。鎮守府Aのこと、(提督から聞いていた)比叡のこと何も知らずに適当なこと言い並べるんじゃないと。
 比叡に対しては陰口でも言われていたと知り、それが彼女の怒りを倍増させていた。彼女は、比叡に対する相手のやり方を、自分に重ねていたのだ。


 金剛の怒りは相当なもので、その流れで艤装のことをバラしてしまった。それでも相手が馬鹿にするのをやめず、艤装のことについて信じようとしなかったのでつい勝手な演習を申し込んでしまった。比叡や隼鷹ら、そして駆逐艦二人が止めに入ったが聞く耳持たず、演習には自分一人で挑むと金剛は言い放った。


 その時金剛は頭に血が登っていたが、変に冷静な部分もあった。今なら艤装と心の力を発揮できるかもしれないと。自分が勝ったら比叡に謝れと約束を交わし、金剛VS他の鎮守府の艦娘6で演習を始めた。
 しかし艤装の動的性能変化はまったく起きず、圧倒的な戦力差もありあっさり負けてしまった。結局比叡をばかにされたままで、さらに自分も啖呵を切って挑んだはいいが恥ずかしいまでの負けを見せつけられた。悪口は自分にもついてしまった。妄言する鎮守府Aの金剛、と。


 今まで2ヶ月の間見たことがなかった金剛の激しい荒ぶりに、比叡や駆逐艦二人は驚いた。駆逐艦二人にいたっては怖がって残りの帰路では同じ部屋にいようともしなかったらしい。


「提督。勝手な演習してしまい申し訳ございませんデシタ。ですが教えてくだサイ。あのとき私は今なら激しい怒りで艤装を完全に使いこなし、相手をアっと言わせることができると確信していまシタ。けれど演習ではいつもどおり、普通の性能しか発揮できませんデシタ。なぜデス?何が原因デシタか?」


「・・・本当ならここで、怒りだけではダメだとかかっこいいこと言えればいいんだけど、残念ながら金剛。本来の戦闘以外では精神を検知する機能をスキップするようにしているんだ。他の鎮守府の艤装と同様にうちに配備される艤装も普段はオフにしている。これも大本営からの指示でね。つまり、演習では他の鎮守府の艤装と同じ制限のもと、同じ性能しか発揮できないんだ。このあたりも着任当初の研修で教えていたと思ったのだが・・・」
 きちんと説明してくれた提督に金剛は感謝ではなく、文句を言った。


「・・・!そんな!そんなこと教えてもらっていないデス!それじゃあ私の行動は無駄だったということデスか!?あなたの言うとおり、私は比叡を、仲間を大切に思いマシタ!今ならデキると思っていマシタ。その証明が許されないなんて・・・」
「せっかく君がそこまで比叡を、仲間に対して想えるようになったのに、濁す形になってすまない。
今度はそれを、深海凄艦との戦いの中で発揮して欲しい。」


 金剛は俯いて可能性を否定する。
「・・・強く想うなんて、そう何度もできるとは思えマセン。特に私なんか・・・。周りに迷惑をかけてしまい、どういう顔して残り約2週間、比叡や駆逐艦のあの子たちと接すればいいのかわかりマセン。」
 頭に血が登っていたときの行動とはいえ、まだ暗いところのある自分が他人を思い、感情を爆発させたことに自分自身驚きを隠せない金剛だったが、二度とそういうことはできないだろうと感じるところがあった。


 今まで口数が少なく、協調性もなかった金剛が荒ぶった、珍事件だと他の艦娘に知られればまた影で何か言われ、クスクス笑われバカにされるかもしれない。再びトラウマになるのではと恐怖が芽生えてくるのを感じていたのだ。
 提督から、2〜3日身体を休めてゆっくりするように金剛は言われた。