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敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女

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リメンバー・パールハーバー



地球の無人偵察機が捉えたふたつの核の閃光。うち最初のひとつめは、しばらく前に〈コスモタイガー〉のうちの一機が、ガミラスのドリルミサイル発射台を叩き壊したときのものだ。

そしてもちろん、二発目の核は、山本の乗る〈アルファー・ツー〉が〈反射衛星砲〉のある穴にめがけて射ち放ったものである。起爆装置のタイマーは、弾頭が標的に命中してから二十秒後に作動するようにセットされていた。それだけあれば〈ゼロ〉と〈タイガー〉が核爆発を避けるために充分な距離まで逃げられる。

古代達は知らなかったが、それは〈タッチの差〉であった。そのとき、敵の砲台は、〈ヤマト〉めがけて必殺のビームを放とうとしていたのだ。核の起爆が一秒の何分の一か遅れていたら、ビーム発射が先となり、天の衛星で反射されて〈ヤマト〉をブチ抜いていただろう。その出力を最大にセットされたビームの威力は、〈ヤマト〉をふたつにヘシ折ってあまりあるものだった。

わずか零コンマ数秒の差――それが明暗を分けたのだ。しかし古代ら航空隊の者達はもちろん、危なく沈むところであった〈ヤマト〉に乗るクルー達も、その事実を知らなかった。知っているのはガミラス基地司令室で、祈る思いで発射秒読みを見守っていたシュルツとその部下のみである。

「なぜだ……」

とシュルツは、床に膝突いて呆然と言った。『頼む』と叫んだ次の瞬間、食い入るように見ていた画面が核の閃光で真っ白になり、その光に眼が眩(くら)んだのだ。

さらに次の瞬間、カメラが殺られて画面は真っ黒に変わったけれど、シュルツはもうそのときには何も見ていなかった。よろけながら頭を振って、別のカメラが映す画面――〈ヤマト〉を捉えた映像の方に眼を向けようとした。

砲手は確かに『ゼロ』と言ったではないか。だからビームは撃ち出されたはずではないか。そうとも。ならばそれでよいのだ。〈ヤマト〉さえ沈められたらもう砲台に用はないのだ。どうせあいつは地球の船をただ一回、沈めたならばお役御免の使い捨て兵器だったのだから。だから核で吹き飛んだなら、解体する費用が浮いてかえって助かるくらいだ。

そうだ。そうだろう。そうなんだ! ビーム砲台はやってくれた。最後に〈ヤマト〉を殺ってくれた。そうに違いないのだと念じながらパネルを見て、そこに〈ヤマト〉が何事もなく宙に浮かんでいるのを見つけ、嘘だ、これは幻覚だとシュルツは思った。きっと今の閃光で眼がおかしくなったのだ。本当はもう〈ヤマト〉は真っ二つに分かれ、この星の氷の上に転がっているのだ、と――。

しかしそんなことはなかった。〈ヤマト〉は無事で宙にあった。〈反射衛星砲〉発射の秒読みは彼らの数字で確かに《ゼロ》を指していたが、その後に小数点以下の数字が何やら続いて止まっていた。

「なぜだ……」

そうつぶやきながら、遂にシュルツは床に膝を突いたのである。

「殺られた……」と砲手も言う。「どうして……」

「いや待て、まだ終わりではない!」とガンツが叫んだ。「司令、しっかりしてください! まだ終わりではありません!」

「何を言っとる」

「司令!」叫んだ。「まだこの基地が残っています! 避難させた船さえ戻せば……」

「フン」と言った。「今からでは間に合わんよ。やつらはどうせ我々など相手にせずに行ってしまうだろう」

「し、しかし、しかし、しかし……」

「司令」と、ガンツとは別の参謀が言った。名前をヴィリップスと言う。「〈ヤマト〉の目的は本来、この基地を見つけて叩くのと、遊星投擲を止めることにあったはずです。やつらはそれを遂げてはいません!」

「そ、そうです!」ガンツが叫んだ。「戦艦もビーム砲台もやつらの第一目標ではない! やつらの目標は我々なのです!」

シュルツは言った。「そりゃあそうかもしれんがな」

「でしょう! しっかりしてください! 我々が姿を見せれば〈ヤマト〉は来ます!」「そうです! 今まで隠れてましたが、しかし教えてやるのです。『基地はここだ。我々はここだ』と。そうしたならばやつらは来る!」

ガンツとヴィリップスが口々に言う。それに応えてシュルツは言った。

「どうかなあ。わからんぞ。やつらは『もう充分な戦果は上げた』と考えるかもしれん」

「何を言うのですか司令!」

「『何を』って、わたしは敵がどう考えるかと言う話をしているのだよ」

「リメンバー・パールハーバー!」

とヴィリップスが言った。シュルツとガンツは「ハン?」と言ってその参謀の顔を見た。

「リメンバー・パールハーバー!」と彼は同じ言葉を繰り返した。「地球人の英語です。真珠湾を忘れるな。『日本人よ、この作戦での失敗を戦訓にして忘れるな』と言う意味です」

ガンツが言った。「ええと、その言葉って、ちょっと意味が違うんじゃあなかったか」

「地球人の言葉はよくわかりませんが」とヴィリップス。「とにかく、あの〈ヤマト〉と言うのは、日本の船であるのでしょう。その艦長は恐るべき者だ。ならばこの言葉の意味を正しく理解しているはずです」

「そうなの?」とシュルツは言った。「どういうこと?」