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敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女

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どういうこと



ガミラス基地でシュルツと部下がそんなやりとりをしている間に、ビーム砲台を討った核の閃光が秒速三十万キロと言う遅さでやっと一億キロ離れた地球の無人偵察機まで三百三十三秒、つまり五分半かけて届いて撮影され、後は超光速通信でたちまち地球に送られて藤堂長官が知ったのである。しかし彼には冥王星でまた核爆発が起きたと言うこと以外まったく何もわからなかった。

「どういうことだ?」

と側近に聞く。

「わかりません」と相手は首を振って応えたが、「しかしとにかく、さっきの核では〈ヤマト〉は沈みはしなかったと言うことでしょう。だとしたら……」

「戦っている……」藤堂は言った。「〈ヤマト〉は戦っていると言うのか。ガミラスと。あの星で、ただ一隻で……」

「そう考えることもできます」

「すぐに発表するんだ」と言った。「市民に報せろ。『冥王星で二発目の核が爆発』とな」

「それだけですか」

「他に言えることがない。問われたとしても応えるのだ。『それ以外は不明だ』と。事実その通りなのだからな」

「わかりました」

言って相手は引っ込んでいった。

藤堂はまた各国の代表と向き合う。彼らもまた今のやりとりを聞いていた。

『トードー!』とひとりが叫ぶ。『今のはなんです! わたし達に相談も無しに……』

「失礼しました。しかしどのみち、ああするより他にないのではないでしょうか」

『そんな簡単に。少しは考えてものを言ったらどうなのですか!』

「また核の爆発があった――ならば〈ヤマト〉が戦っていると言うことなのかもしれない。今はそれだけが希望の光です」

『そうかもしれんが、しかしですよ』

「昨日人類は滅亡しました。我々はもう死人なのです。なのに発表を控えることになんの意味があるでしょう。失くした命を取り戻すには、希望を持つしかありません」

『希望ですって?』

「そうです。〈ヤマト〉が冥王星で敵に勝ってくれたなら、誰もが希望を持てるでしょう。波動砲を使わずに勝って初めて人々は〈ヤマト〉に希望を見出すのです。沖田はそれがわかっているからこそ向かっていったのです。だから必ず勝ってくれると信じるしかないでしょう」

『わかりました……』

とひとりが言った。他の者達も頷いた。

『わたしもまた、わたしの街に同じように発表しましょう。しかしふたつも核が爆発したのなら、〈ヤマト〉はもう敵に勝ったと言うことにはならぬのですか。なのに「他は不明」と言うのは……」

「いえ、先程も言いましたが、冥王星の敵を完全に殲滅するにはひとつやふたつの核ではおそらく足りぬはずです。十も二十も射って初めてトドメを刺せると見るべきなのです」

『十も二十も?』

「そうです。もしも〈ヤマト〉が今、優勢であるとするならば、二発の核でまだ障害を潰しただけと言うところなのかもしれない。一次と二次の核攻撃で基地を護る者を叩き、そうして初めて本丸に臨める」

『「ホンマル」ですって?』

と質問が来る。どうやら翻訳機がその日本語を認識できずに訳されなかったようであったが、それには応えず、

「そうです」と藤堂は言った。「これから〈ヤマト〉の敵に対する第三次攻撃が始まる、と言うことなのかもしれません」