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敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女

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ハートの上



〈ゼロ〉と〈タイガー〉は全機で大きな編隊を組み、冥王星の〈白いハートマーク〉の上にいた。

見渡す限り白い氷原であるために、もしも下から狙い撃つものがいればすぐわかる。敵の方もそれは承知でいるらしく、こんなところに武器は置いてないようだ。

ゴンズイ戦闘機どもにしても三分の二が死なずに命がありながらどこかに逃げていってしまった。ゆえに古代達は今、敵に殺られる心配をとりあえずはせずにいられる。

『さて。どうすんだ、これから』加藤の声が通信で入ってきた。『隊長、〈ヤマト〉はまだなんにも言ってこないの』

「『まだ』って言っても、まだいくらも経っていないぞ」

古代は言った。〈魔女〉を討つのに成功してからまだ十分も経っていない。

「とりあえず、全機まだまだ飛べるんだろ」

『うん。まだビームもミサイルも残ってる』

さっき、『あんたがおれ達のエース』と言った割りには今の加藤の声には、上官であり隊長でもある古代に対する敬意はあまり感じられない。やはりアマチュアはアマチュアと言う考えでいるのかもしれない。

『核もね。何より燃料がある。もうひと暴れ充分できるよ』

「となると、またもう一度、基地を探しに行けってことに……」

『さっきは見つからなかったぜ』

「だよなあ。あれをもう一度やったところで無駄な気がするが……」

古代は窓外を見渡した。この〈ハートマーク〉の上には、先の索敵で〈ゼロ〉と〈タイガー〉が手分けして全部まわりきっている。ここをもう一度調べたところで何が見つかるとも思えない。

『それに』と山本。『もう〈魔女〉は討ったのだから、〈ヤマト〉自身が白夜の上を基地を探して飛べるはずです。わたし達がやらなくても……』

「そういう話にもなるよな」

と言った。この〈ハート〉の上まで来て〈魔女〉の撃破成功を伝え、『以後の指示を乞う』と〈ヤマト〉に通信を送ってそろそろ五分。返事があっていい頃でもあるはずなのだがどうなのだろう。

加藤の声が、『グズグズしてると、敵は避難させてた船を呼び戻しちゃうんじゃねえのか。そうなると厄介だぜ』

『そうです。ヘタすりゃ、今度は戦闘機も二百三百で来るかもしれない』と別の四機編隊のリーダー機が言ってくる。

『敵がいったん逃げてったのは、そのためと言うことだって……』

「うん。だよなあ。どうするんだろ」

言って古代は考えてみた。しかしどうするもこうするもない。自分としては〈ヤマト〉が『やれ』と言うことに従う以外の選択はないのだ。

「なんにしても、早く決めてくれないもんかな」

『けど……』と、また別のタイガー隊員の声が通信に入ってくる。『基地を見つける手段がもうひとつあったでしょう。あれ、どうなってるんですかね』

「ああ」と言った。「エコーでどうのこうのってやつだな。あの話ってどうなったんだ?」