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敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女

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睡蓮



ガミラス基地司令室は、今〈蓮池〉の上に姿を出していた。何しろ基地の構造が地球の蓮と言う植物そのものなのだからそのように呼ぶしかない。

〈池〉の表面を覆うカモフラージュ板は水底の泥に埋まる宇宙船ドックその他の主要施設とチューブ状の連絡筒で繋がっていて、さらに無数のチューブがウネウネと窒素とメタンが液体でいられる温度に温められた〈水〉の中を漂っている。それらの先には蓮の花の蕾(つぼみ)のようにレーダーやら対空砲、小型宇宙船を離着させるポートがあり、必要に応じて蓮の葉状のカモフラージュ板をちょいとどかして〈池〉の上に首を出させる。で、その〈花〉が開いてそれが果たすべき役を果たす仕組みなのである。

ガミラス基地司令室もまた、一輪(いちりん)の巨大な睡蓮(すいれん)のようであった。普段は泥の中に埋まっているものが、連絡筒を引きずっていま水上に出たのである。そして周囲を飛んでいる〈ヤマト〉の戦闘機隊めがけて対空砲の〈花〉を咲かせた。

あちらからもこちらからも水柱を立てて対空砲台が昇る。その光景はまさしく睡蓮の花咲き乱れる池のようだった。

戦闘機どもは散り散りになって逃げていく。

「フフフ」

とシュルツは笑った。最前(さいぜん)、彼はこの司令室を『蓮の台(うてな)』と呼んでいたが、それも基地の構造が地球の蓮そのものであるからだ。戦艦隊とビーム砲台を失ったショックから立ち直った顔とは言い難いものがあるが、

「どうだザマー見ろと言うところだな。あいつらはまだ核を腹に抱いてるようだが……」

ガンツが言う。「射ってきたら水中に潜ってしまえばいいだけです」

「そうなのだが、この基地に〈ヤマト〉を仕留める力があるわけじゃないのだぞ。どうなのだ。やつらは本当に我々のトドメを刺そうとすると思うか」

「わたしはそう思います」とヴィリップスが言った。「必ず〈ヤマト〉の艦長は、第三次攻撃をやろうとする」

「どうもわたしにはその考えがよくわからんのだけどなあ」

「いいえ。やります。やつはやる――リメンバー・パールハーバーです」

ガンツが言う。「その言葉の使い方は、やっぱり間違ってると思うが」

「とにかく、もう我々にはそれしか残っていないのです。なんとかして時間を稼いで避難させた船を戻す。〈ヤマト〉があくまでこの基地の破壊にこだわってくれたなら……」

「我らにもまだチャンスがあることになる」シュルツが言った。「確かにそうだ。『逃げるが勝ち』を決め込まれたら手の出しようがないが、多数で囲み込めるのなら……」

「しかしどうするのです」ガンツが言った。「戦艦はここで全部殺られました。あるのは空母が一隻に重巡が十二隻。他は軽巡に駆逐艦です。駆逐艦ならすぐなんとか戻ってこれるかもしれませんが……」

「〈ヤマト〉相手に大して役に立たんだろうな」シュルツは言った。「タイタンのときとは違う。重巡だ。重巡と空母を戻すのが優先だ。重巡艦隊で〈ヤマト〉を囲い込んでから百の攻撃機で突撃をかける。ここで〈ヤマト〉に勝つとしたらもうそれしか方法はあるまい。かなりの犠牲を払うことになるかもしれんが……」

「はい」とガンツ。「巡洋艦はほとんどが〈ヤマト〉に殺られてしまうでしょうね。攻撃機も半分が墜とされることになるかもしれない……」

「そうなるのがイヤだからこのプランは取りたくないのだ」

「それでも勝てる。勝てるのです」ヴィリップスが言った。「〈ヤマト〉を沈められさえすれば、地球人類は終わりです。波動砲も手に入る。それで我々の勝ちは勝ちです」

「君はそれでいいかもしれんが……」

「他に道はありませんぞ。〈ヤマト〉を逃せば親衛隊に咎められるのは……」

「そうだな」と言った。「わたしだ。〈ヤマト〉はここに向かってくると思うか」

「現に向かってきています」ガンツが言った。「戦闘機隊を収容して星を出てってもいいはずなのに、やってくる。と言うことは……」

「ほう」と言った。「やる気なのか。〈ビールサーバー〉とか言うやつを」