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敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女

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ライオン



「そうだ」と沖田は言った。「やる。基地を叩かずにこの星を出るわけにはいかん」

「え?」と真田。「いえ、でも、しかし……」

「そうです」と新見が言った。「時間をかけたなら、敵は必ず避難させていた船を呼び戻してきますよ。おそらく重巡と空母で囲んで攻撃機で空襲してくる。そうなったらとても太刀打ちできるとは……」

「わかっている。しかし時間をかけなければいいのだろう」

「ま、まあそうかもしれませんが……」

「でも、どうやるんです?」南部が言った。「主砲も魚雷ミサイルも役に立たないんじゃ、どうにも……」

「それはこれから考えるんだ」

「艦長!」

叫んだ。士官達全員が、艦長席の沖田を見て正気を疑う顔をしていた。

沖田は言った。「まあ待て、みんな。わしをそんな顔で見るな。討てるものならあの基地は討ち取っていった方がいいだろうが」

「そりゃそうかもしれませんが……」

「新見。君は昨日の会議で言ったな。〈ヤマト〉が太陽系を出れば、やつらは地球に総攻撃を掛けるかもしれん。新たに百の船を寄越して倍の戦力で襲われたら、地球は勝てはしないだろう、と」

「ええまあ」

「しかしここで基地を潰せば、その心配は無くなると言った」

「ええまあ」

「ならばやっぱり、やるに越したことはなかろう」

「ええ。それはそうですけど」新見は言った。「昨日とは事情が違います。何しろ今、戦艦三隻を殺ったのですから、敵は現在、主力を失くした状態です。今なら地球が艦隊を組んで冥王星に来れるでしょう。基地がどんなものかを知れば攻略法も見つかるでしょう。ですからこの情報を地球に送って後は任せる。敵の増援が来るとしても何ヶ月も先でしょうからその前に……」

「なるほど、君は優秀だな。いい分析だが、しかし敵を甘く見ている」

「は?」

「いいか。いま我々は、ライオンに傷を負わせたうえにその子供を殺したようなものなのだ。野生の母ライオンの気持ちになって考えてみろ。太陽系を出る〈ヤマト〉を追うに追えないのなら、その怒りを地球に向けるに決まっとるだろうが。『総攻撃を掛けるかもしれない』、ではない。掛けるのだ。何がなんでも地球人類を皆殺しにしてやるつもりで突っ込むのだ。『主力がないから大丈夫』、などと言う考えでいたら敗けるぞ。戦(いくさ)は敗ける。敵の力を見くびったなら心の隙を突かれるのだ」

「はあ……」

と新見。他の者らの顔をキョロキョロと見やってから、

「確かに戦史には、艦長の言われたような例は多くあるでしょうが……」

「そうだろう。〈ヤマト〉は戦う船ではない。すべての武器は船を護るためのものとし、交戦はできる限り避けねばならない――我々はその考えでやってきた。この作戦でもそれは変わりはしなかった」

沖田は言った。〈ハートマーク〉の上に〈ヤマト〉は辿り着いた。艦橋窓の向こうは真っ白な氷原だ。表面にはまさに蓮池を眺めるような丸い紋様。

「その原則を今は破る」沖田は言った。「この星を出るのは基地を叩いてからだ」

真田は言った。「わかりました。ですが艦長、どうやって?」

「だから、これから考えるんだよ」