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敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女

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核でも殺れない



「〈アルファー・ワン〉より〈ヤマト〉へ! ダメだ! 核が起爆しない!」

通信機のスイッチを入れて古代は叫んだ。

「タイガー隊の何機かに核ミサイルを射ち込ませたが、爆発もしないんだ! 一体、どうなってるんだか――」

『わかった。その攻撃はやめろ!』相原の声が返ってくる。『分析によると、その〈池〉は底なしだ! ミサイルは泥の層で止まって信管が働かない。たとえ爆発してもおそらく基地は殺れない!』

「了解」と言った。「けど――」

なら、どうしたらいいんだ。核でも殺れない? ならば〈ヤマト〉の主砲でも、まず無理だと言うことじゃないのか……考えながら古代がレーダー画面を見れば、〈ヤマト〉はこちらに向かって来ていてもうすぐそこになっている。

――と思ったら、地平線の向こう辺りでピタリと止まった。

相原の声が、

『砲撃を開始する! 航空隊は離れていろ!』

言ったかと思うとドカドカと撃ち始めた。主砲に実体弾を込めての放物砲撃らしい。

昔の〈大和〉が水平線の向こうの敵を、砲の角度をこれだけ上げてドカンと撃てば、ヒューッと飛んでまあ大体あの辺にズドンとタマが落ちるだろ、てな具合に大まかに狙いを付けて撃ったやり方だ。あまり効果があった例(ためし)はないはずだと古代は思った。

『おいおい、なんだありゃあ』通信で加藤の声が入ってきた。『あんなんじゃ何年かかるか知れやしねえぞ。核でもダメだっつーもんをあれで殺れると思ってんのか』

『グズグズしてたら敵の船が来るんじゃないのか?』別のタイガー隊員が言う。『こんなことしてたら、きっと――』

そうだ、と古代も思った。何やってるんだ、あの船は! だが考えるヒマもなくレーダーが警報を鳴らす。

下だ。氷原の丸い紋、とばかりに思っていたのがそう見せかけた板であり、おでん鍋にハンペンを並べて浮かべたようなのだった。で、その下におツユがあって、ツミレとかコンニャクとかがハンペンの隙間をこじ開け顔を出す。

そういう仕組みだったのだとどうやら今では古代にもわかった。わかったがその〈おでん種〉どもが対空ビームの砲台で、こちらめがけて猛然と斉射を始めたのだ。

「わわっ」

言って古代は〈ゼロ〉の機体をひるがえさせた。周囲で他の者達も、バラバラの方角へと逃げ散らばる。

対空砲火を躱すのはそう難しいことではなかった。なかったがそういつまでもやってられない。いずれ全機殺られてしまう!

これはそういう状況だ。右に左に〈ゼロ〉の機体をひねらせながら、なのに〈ヤマト〉は何を考えていやがるのかと古代は思った。あんな砲撃でこの敵を殺れるわけがないだろう!

何もわかっていないのか? 『分析によるとどうのこうの』と相原は言ったが、古代には、丸い板が浮き並ぶ下がどうなっているのかまったくわからなかった。

あのカモフラージュ板は上空からの探査をまったく不能にする造りになっているらしい。だからこれまで上を飛びつつ何も気がつかないでいたのだ。しかしエコー探査では、ここが基地だと〈ヤマト〉は知り、核もダメだと言うことまで――。

わかったと言うことなのだろう。だが、わかっているのならもう少しマシな攻撃ができないのか! 一体全体何やってるんだ、あの船は!

〈ヤマト〉の撃った砲弾はカモフラージュ板にボコボコと穴を開けて水中に沈み、そこで爆(は)ぜて次々に水柱を噴き上がらせる。とは言えしかし、適当に撃ってるだけと言うのもひとめでわかる。

本当に一体なんのつもりかと思っていると敵の方も〈ヤマト〉めがけてミサイルなど射ち始めた。それを〈ヤマト〉が対空砲で迎え撃つ。冥王星の〈ハートマーク〉の上で百のキューピッドが矢を射ち合っているかのような放物線が乱舞した。

しかし、

「〈アルファー・ワン〉より〈ヤマト〉へ。そんなことをしてもダメだ!」叫んだ。「あいつだ。あいつを殺らなきゃ――」

敵の〈おでん鍋〉の中心と思(おぼ)しき方に眼を向ける。そこには無数の〈おでん種〉に囲まれて、あれはタマゴか大根かと言った感じのひときわ大きな物体があった。

古代の前に最初に現れ、昇る龍かと思わせたもの。それがどうやらおでん種の親玉らしい。

そいつはまさに、最初は昇る龍に見えた。首長竜が海上でその鎌首をもたげるように、下から柱で支えられた構造物を伸び上がらせる。そのときはまさに海竜のように見えた。

だがその後で首を降ろし、頭だけをプカプカと水に浮かべたようになる。そしてまわりを鎧(よろ)っているウロコのような板を開いて対空砲を外に出すのだ。どうやら蛇の頭と言うより花の蕾に似て見える。

それをめがけて〈タイガー〉に核を何発か射たせてみた。けれどもダメだ。強力な弾幕によって墜とされてしまう。ミサイルはことごとく、核物質を地に振りまいて四散した。

『隊長、無理だ!』加藤が叫ぶ。『それにあいつは当たっても、たぶん潜っていっちまうぜ! そこで核が炸裂しても……』

「ダメージを与えられない?」

と言った。加藤が言う意味は、もちろんすぐに理解できた。〈ゼロ〉と〈タイガー〉が腹に抱く核ミサイルには時限信管が付いている。標的に命中したときタイマーが作動、二十秒後にピカッとなる仕掛けになっているのだ。だから古代ら航空隊は、爆発にドーンとやられないように二十秒でそのエリアから遠ざかる。

と言う寸法になっている。だが、おそらく水面に浮かぶ花のようなあの敵は、二十秒あれば蕾を閉じて水に潜ってしまえるのだ。そこで核が起爆しても、多量の水に吸収されて威力は大きく減衰する。あいつを殺すことはできない――。

「それじゃ、勝てないじゃないかよ! どうすりゃいいんだ!」

『知りません!』

言ったときだった。地平線の上に〈ヤマト〉が船体を出し、主砲をビーム弾に替えてまっすぐ敵めがけて撃ち出した。

狙うのは中心にいる親玉だ。どうやら〈ヤマト〉は何も考えていなかったわけではないらしい。さっき撃った実体弾は敵の力を探るためのジャブであり、『ここだ』と見つけたテンプルめがけて必殺のストレートを見舞ったのだ。

そういうことであるように見えたが、しかしそれも効かなかった。敵の装甲は〈ヤマト〉の主砲をハネ返し、やはりすぐさま〈蕾〉を閉じて水の中へ潜ってしまった。