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敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女

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水中活動



「アラヨットオ!」

言ってアナライザーが水中で、自分とほぼ同じ大きさの装置を手に吊り下げる。アナライザーは今、頭と胸の部分だけで液体の窒素とメタンの〈水〉の中を漂っていた。

腰から下は〈ガマガエル〉に残してあり、言わば〈水中クレーン〉となって斎藤の作戦を手伝っているのだ。

〈ガマガエル〉の荷台には、同じ装置がいくつも積み込まれていた。アナライザーがそれを持ち上げ吊るして運ぶ。その形は『大きなサザエ』と言った感じで、つまり何やら壺と言うか龜(かめ)と言った物体の中にグルグルと回転するものが収まっているらしい。そして一部にまるでサザエの口のような丸い大きな穴があり、そこにまるでサザエのように丸い円盤があるのがわかる。

「よーしこっちだ!」

とか言いながら斎藤達がそれを受け取り、数人がかりで〈お化けサザエ〉の円盤部分を、取り付いた敵の〈蓮の蕾〉――基地の中枢と思(おぼ)しき施設の外壁に押し当てる。するとその円盤は、吸い付くようにそこにペッタリと張り付くのだ。

やはり、まるで岩に張り付いたサザエのようにだ。作業は事前に練習でもしていたかのようにスムーズに運んでいた。

20世紀の昔から、地球上で宇宙飛行士が船外活動訓練をするには宇宙服を着てウォータープールの中に潜る――それが基本で二百年が経った今でも行われているために、すべての装備は水中でも支障なく使えるように造られてるし、誰もが水中訓練を何度となく受けている。

その賜物(たまもの)と言えるだろう。斎藤達は戸惑うことなく船外服で海女(あま)のようにこの〈蓮池〉の中を泳いだ。〈ガマガエル〉で水中にいる〈蓮の蕾〉の周りをグルグルと回ってロープを投げかけて、それを伝ってアナライザーの手を借りながらサザエのオバケのような装置をポンポン張り付けていく。こんな作業は斎藤とその部下達にとっては朝メシ前なのである。

九人と一体のうちふたりは〈ガマガエル〉のドライバーだ。このクルマは水中に潜れはするが一定の深度を保つのは容易ではない。人間がついて操縦していなければ、浮かぶかそれとも〈池〉の底まで深く沈んでいってしまう。

「ほらよ、一丁上がりだ!」最後の装置を〈蕾〉に取り付けて斎藤は言った。「撤収! 逃げないと巻き添え喰うぞ!」

「ハイサア!」

とアナライザー。七人と一体はクルマに戻った。二台の〈ガマガエル〉は後部に付いたスラスターから泡の尾を噴き、水中を上に向かって動き出す。

冥王星の低重力の下(もと)では充分、空高くに飛び上がってこの〈ガマガエル〉を〈ヤマト〉に戻らすことのできるスラスター。その力で水から飛び出し、〈蓮葉〉に着地。

すべての作業を終えるのに、二分ともかからなかった。二台のバギーはまた水しぶきを上げて、〈蓮池〉に浮かぶ板の上を走り出した。