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敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女

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裏蓋



視野の半分は星空で、もう半分は暗黒だ。加藤は今、冥王星の北極にいた。124年続く極夜(きょくや)の中心。

残る〈タイガー〉の全機を率いて、古代と山本を通すべく、トンネルの口を塞いでいるはずの〈蓋〉を壊しにやって来た。やって来たのはいいのだが、

「どこにあるんだ、その〈蓋〉ってのは。何も見えない……」

〈ブラヴォー・ワン〉のコクピットでつぶやいた。しかし見えぬのは当たり前だ。何せ極夜の世界ゆえに、地は真っ暗で何も見えない。暗視カメラの感度を一杯に上げて、〈ヤマト〉に教えてもらった座標にレンズを向ける。

送られてきたデータによって、二機の〈ゼロ〉の到達前に破壊せねばならないトンネルの〈裏蓋〉の場所はわかっていることはいる。わかってはいることはいるが、現場について自分の眼で確かめるのは別の話だ。ここでは人の目玉は役に立たないのだから、機械の〈眼〉に頼るしかなかった。

極夜と言っても冥王星の北半球は、外宇宙の無数の星に照らされている。その光を数百倍に増幅する昔ながらの暗視カメラ――それが捉える映像を、ヘルメットのバイザー面に投影させて地面を見れるようにする。

〈マトリクス画〉とでも言うのか、広げた網を見るような画像であるが、それでも星の表面を見て取れるようにはなった。加藤が頭を振り動かせば、それに合わせて線画も動く。決して見易いものではないが――。

それでも、見えた。〈裏蓋〉だ。なるほど地面の起伏の中に、それらしきものがあるのがわかる。

「よし、あれだな」

と言ってから、〈アルファー〉は今どの辺にいるのだろうと加藤は思った。地中を行かねばならない二機の〈ゼロ〉と違い、タイガー隊は冥王星の空の上をものの五分でやって来れた。〈ゼロ〉はあと三分はかかるに違いあるまいから、それまでに〈蓋〉をブチ割る時間は充分あるだろう。

敵に邪魔されなければだが。

邪魔されないわけがなかった。レーダーが敵編隊の接近を報せる。

あのゴンズイ戦闘機だ。やつらがまたやって来たのに違いなかった。

しかもこちらが対空火器の弾幕の下をくぐって来ねばならないのに対し、逆方向からより速いスピードで先回りしてきたらしい。星の丸みの向こうから姿を現し、タイガー隊の行く手に陣を張り巡らしている。

「蓋を開けさせんつもりだな」

加藤は言った。相手の数はこちらのほぼ倍。とは言え機の性能は――。

〈タイガー〉の方が数段上だ。まして今はその全機が核ミサイルを下ろして身が軽くなっている。勝負は〈ゼロ〉の到達前に蓋を壊してやれるかどうか。

「いいだろう。やってやるさ!」

叫んだ。部下らが『おお』と応える声が通信機で重なり聞こえる。

タイガー隊は敵の待つ空の中に突っ込んでいった。