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敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女

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総当たり



そして、〈コスモタイガー〉は、残る全機が倍の数の群れと正面からぶつかり合った。互いにミサイルとビームを放ち、鍔競(つばぜ)り合ってスレ違う。29対60あまりのチキンゲームだ。

タイガー隊の〈C〉から〈I〉までの編隊は、ビームによってB編隊が〈蓋〉めがけて攻撃を掛ける道を開くのを目的としていた。〈ゴンズイ玉〉に穴を開け、加藤達がそこを通れるようにするのだ。ビームが束となり、敵めがけて一斉に飛ぶ。

けれども敵は、タイガー隊の意図を既に察していた。ならば普通は避(よ)けようとするはずのものが避けない。わざと撃たれて、体当たりでタイガー隊を止めようとする。

タイガー達には同じことができないのを知っているのだ。これは一発勝負であり、失敗すれば態勢を取り直してもう一度やろうとする前にタイムオーバー。二機の〈ゼロ〉が〈蓋〉に激突してしまって意味がなくなると知っている。

だから彼らは命懸けでタイガー隊を止めにきた。何が彼らをそこまで捨て身の戦法に駆り立てるのか、〈タイガー〉に乗る者達に窺い知ることはできない。しかし、タイガー乗りらにしても、今は信じているようだった。自分達エースパイロット集団の中で、エースの中のエースは古代進だと。マゼランから地球に戻り、人類を救う者がいるならそれは古代以外にないのだと。だから剣で突き合うような空中でのチキンゲームに決して怯(ひる)むことはなかった。

ふたつの群れは交差して共に何機かが墜ちる。タイガー隊はこれに勝った。加藤その他の〈ブラヴォー隊〉は、遊星投擲装置の〈裏蓋〉――地球めがけて投げる石を入れる口を隠している裏の扉を破るコースに入った。

バイザーに映る網目のようなマトリクス線画の中に標的の場所が示される。レーダーがそれをロックする。加藤は自分の〈ブラヴォー・ワン〉の翼の下にまだ持っていたミサイルの残りすべてを放った。部下の三機が同じように、〈蓋〉めがけてミサイルを射つ。

合計で十基ばかりのミサイルが命中、そして爆発した。

〈蓋〉はまさしくただの〈蓋〉でしかなかった。特に分厚い装甲板と言うわけでなく、そのようなものであるはずもない。〈表の蓋〉がそうであったと同様に、いくつにも割れて弾け散らばる。

そしてそこに開いた口から、白い光が迸(ほとばし)り出た。核で生まれたプラズマの炎がトンネルの半分、千五百キロを灼(や)いてここまで届いた光だ。

さらにまたその一秒後、穴が巨大な火柱を噴き上げた。高さ数キロにまで立ち昇る遊星投擲装置の火葬の炎だ。二機の〈ゼロ〉はそれに追いつかれる寸前で、翼を振ってクルリと機体をひるがえらせていた。

「おーっ!」

加藤は声を上げた。他の者らがそれに続いた。