敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女
失探
「氷を割って海に逃げ込んだと言うのか、〈ヤマト〉は!」
シュルツは言った。スクリーンには噴水の中に突っ込む〈ヤマト〉を衛星がカメラで捉えた画像が映し出されている。
「こしゃくな……しかし、本当に海に潜り込んだのか? 途中でひっかかってくれてるようなら大助かりだが……」
「わかりません。いま探査中です」
とオペレーター。その横でガンツが、
「海中に潜っていたら、どうします。ビームでは攻撃できませんが……」
「フン、どうせあと何発も撃てはしなかったのだろう。注意エリアにやつはまっすぐ入ろうとして向きを変えた。そのまま行けば砲台に行き着いたかもしれぬところを、寸前でな……つまりやつは、〈反射衛星砲〉の秘密をまだ解いてはおらんのだ。勝負はまだこちらに分がある」
「そうとも言えるでしょうが、いずれ……」
「だろうな。時間を与えれば、やつは力を回復する。深手は負わせていないのだから、ほんのひと息つくだけでやつらには充分だろう。そしておそらく、衛星砲の〈死角でない死角〉に気づく……」
「そうなると厄介では?」
「わかっている」シュルツは言った。「だがやりようはあるさ」
作品名:敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女 作家名:島田信之