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敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女

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冷凍庫



〈ヤマト〉の艦内はどこもかしこも霜で覆われつつあった。壁も天井も白い粉を葺いたように霜だらけだ。そして床も。歩くと、

「うわわっ」

斎藤は足を滑らせそうになった。船外服の靴底はこんなところを歩くようには出来ていない。何かに掴まりでもせねばとても歩けそうになかった。

だが何もかも霜付きだ。自分自身が着ている船外服もまた。

「どうなってんだ。まるで冷凍庫じゃねえか」

と言った。寒い。斎藤は今、ヘルメットのバイザーを開けて顔を艦内の空気に晒していた。その顔の肌さえ凍って霜が付きそうに感じる。目玉を包む涙も凍る。息を吸えばあまりの冷気に口も喉も凍りそうだ。

「暖房が効いてない……」と部下のひとりが言った。「エンジン熱であっためられる仕組みのはずなんだけどな」

「とても追いつかないってことか」斎藤は言った。「そりゃそうだろうな」

通常ならば、絶対零度の宇宙空間の中にいても〈ヤマト〉の内部で乗組員が凍(こご)えるようなことはない。外が真空であるために熱が外には出て行かないと言うのもあるが、それ以上に空調で常に適温が保たれるからだ。艦内は暑くなれば冷房され、寒くなれば昔のガソリンで走る車が冬に車内を暖めたように、エンジン熱で沸かしたお湯をパイプで行き渡らせて暖房する。

普段なら――しかし今は状況が違った。〈ヤマト〉の周りを包んでいるのは真空の宇宙空間でなく、極低音で高圧の水。熱を奪い取る力ははるかに大きい。

それだけではない。何より、敵のビームによって、今の〈ヤマト〉は船体のあちらこちらに穴が開いてしまっているのだ。そこからマイナス数十度でも凍らぬ水が大量に入った。

浸水箇所は隔壁で閉ざした。しかし止めたのは水だけだ。冷気についてはどうにもならない。水を止める隔壁が氷の板となって艦内を冷やす。暖房を上げたところでとても追いつくものではない。

〈ヤマト〉艦内は地球の南極もかくやという冷凍庫となっていた。

戦闘服を着たクルーが皆ガタガタと震えているのを斎藤は見た。斎藤の着る船外服はヒーター付きだ。だからバイザーを閉じたなら寒さを感じずにいることもできるが、多くの者はそうではない。

「まずいな」と言った。「このままだと力を回復させるどころか……」