敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女
推察
『いいえ、それはないでしょう』
山本の声が通信で入ってくる。カロンの〈夜〉の中から敵の戦艦が現れたと知って古代が、『やつらの基地はあっちなのでは』と言ったのに対し、返してきた言葉がそれだ。
山本は続けて、『もしそうなら、これまでにわからなかったはずがありません。冥王星であれカロンであれ、〈夜〉の中で光るものが動いていれば、いくらなんでもとっくに見つけているはずです』
「そうか、そういう話だったな」
『おそらく万一の事態を避けて、あそこに逃げていたのでしょう。敵は〈ヤマト〉が波動砲を撃てないことに百パーセントの確信が持てなかったはず。もし撃てたらおしまいだから、この星にいるわけにいかない。だから避難したものと見せてあそこに隠れていたのじゃないでしょうか』
「そうか」と言った。「なら、〈ヤマト〉は……」
『はい、おそらく健在です』山本は言った。『少なくとも、沈んではいないと……』
作品名:敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女 作家名:島田信之