敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女
推論
「どうにかして、〈ヤマト〉はビームを避けたと言うのか」加藤は言った。「だから、代わりに戦艦で敵は〈ヤマト〉を討とうとしている?」
レーダー画面の中の三隻の船は、カロンの母星であるこちらに向かって来ようとしているらしい。この三隻が戦艦ならば、そうする理由はなるほど考えれば明らかだった。その艦隊で〈ヤマト〉を沈める。敵がそのつもりであるなら、逆に言えば〈ヤマト〉はまだ沈んでいないと言うことになる。
「おれ達の帰るところはまだあるってこと……」
『そういうことでしょう』部下の声が通信で来た。『やつらは〈ヤマト〉が波動砲を撃てるかどうかわからなかった。けれど撃てるものならば撃つに決まっているのだから、ここに戦艦を残しておけば星と一緒に吹っ飛んでしまう。そこであっちに置いて……』
「そうか」と言った。「別にあそこに基地があると言うわけではないんだな」
『と思いますね』
「だが、ここでも見つからないぞ」
『それは……』
と部下が言う。加藤はレーダーマップを見た。このどこかに基地が在る、だから探せと指示された直径千キロの円。だが、そろそろ割り当て範囲は索敵を終えようとしている。
どういうことだ、と加藤は思った。〈基地は白夜に在る〉という見込みがそもそも間違っていた? それとも、こちらの想定よりはるかに巧妙に隠されていて、気づかず上を飛び越していた?
どちらにしても、このままでは作戦失敗――いや、考えるな。まだ索敵を終えないうちは、任務に集中しろと考え操縦桿を握り直す。しかし加藤は焦(あせ)る気持ちが膨らむのを抑えられそうになかった。
作品名:敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女 作家名:島田信之