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しょうきち
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冒険の書をあなたに

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第九章 海の神殿にて〜さよなら、異世界


 小鳥たちの囀りと蝉の鳴き声が賑やかに飛び交う頃、ルヴァは目覚めた。
 二つある寝台の片方は前日に整えられた状態のままで、窓から堂々と入り込む陽射しを受け止めている。
 異世界で夫婦として過ごした二人の最後の夜、夜着はあったけれど結局袖を通す事はなかった。
 お互いの熱を何度も確かめ合い、離れ難い愛おしさを感じながらいつしか深い眠りの海へと沈んだ。

 先に目を覚ましたルヴァが、物音一つ立てずにアンジェリークの安らかな寝顔に魅入っていた。
 その心に、身体に、触れれば触れるほど増していく愛おしさに胸が締め付けられて堪らない。
(退任後の私は一体どうなってしまうんでしょうね。それを今から考えると……少し怖いんですよ、アンジェ。比翼連理の約束で生涯縛り付けてでも、あなたを誰にも渡したくなかったんです。そんな私の身勝手で苛烈な想いをあなたは真っ直ぐに受け止めてくれた。そのことを私がどんなに嬉しく思っているか……いつかあなたにお話できる日が来ることを祈っています)
 彼女の睡眠の邪魔をしないよう恐る恐る金の髪を一房手に取り、そうっと口付けた。
 そのとき、小さく身じろいだアンジェリークが微かに微笑んで言葉が零れた。
「……ルヴァさま、だいすき……」
 一体どんな夢を見ているのか、幸せそうなその表情に惹きつけられて、思わず柔らかな頬に唇を寄せた。
「大好きですよ、私のアンジェリーク」

 小鳥たちのかしましいお喋りは遥か遠くに去り、入れ替わりに蝉たちの合唱がいよいよ煩くなってきた。
 二人はようやく寝台から抜け出して身支度を整え、二階のテラスへと向かう。
 席に着くと早速女将が挨拶と共に柑橘類を絞ったジュースを持ってきた。
 朝にふさわしい爽やかな味わいのそれはからからに渇いた喉を潤して、まだ気だるげな体に活を入れていく。
 焼きたてのパンとたっぷりのサラダ、ベーコンエッグなどシンプルながらも素材の良さが分かる朝食を摂りながら、アンジェリークは少しだけ緊張した面持ちで切り出した。
「……ね、ルヴァ」
「はい? 何でしょう」
「あのね、あの……わたしたち、これから聖地に戻るでしょ。またわたしは女王、あなたは守護聖に戻るわね」
「ええ、そうですね」
 突然何を言い出すのかと訝るものの、その後に続く言葉を待つルヴァ。アンジェリークは一瞬だけ視線を宙に彷徨わせ、ゆっくりと言葉を紡ぎだした。
「……『天に在りては願わくは比翼の鳥となり、地に在りては願わくは連理の枝とならん』……」
「……!」
「わたしからも改めて約束するわ、この先何があってもあなたとずっと一緒にいるって。ルヴァが嫌だって言うまでは離れませんから!」
 言うだけ言って一口大に千切ったパンを頬張り、照れた様子で視線を手元に落とすアンジェリークに、ルヴァは一度僅かに目を見開いてから嬉しさに口角を上げる。
「奇遇ですね、私もあなたに捨てられるまでは離れる気なんてありませんよー」
 ゆるゆるとアンジェリークの口元が緩んで、ちらりと上目遣いにルヴァへ視線を投げた。
「これからもよろしくねって言いたかっただけなのに、なんか重いこと言っちゃった」
 ルヴァはそっと左手を伸ばし、アンジェリークの手に手を重ねた。
「ちっとも重たくなんかないですよ、とても嬉しいです」
 頬に熱が集まっていくのを感じながら重ねた手を握り締めたその直後、町の入り口のほうから聞き慣れた声が聞こえて来た。
 こちらへ向けて子供たちが笑顔でぶんぶんと手を振っていて、その後ろをリュカとビアンカが歩いていた。
「あ、リュカさんたちが来たわね。わたしたちも下りて行きましょ」
「そうですねー、私は荷物を下ろしたら忘れ物がないかもう一度確認してきます」
作品名:冒険の書をあなたに 作家名:しょうきち