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しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
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冒険の書をあなたに

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 アンジェリークと二人だけでこの先乗り切るには、この世界の情報が不足し過ぎている。ルヴァは少し逡巡したあと、この青年に事情を話してみることにした。
「ええ、私どもも正直言って困り果てていましてねー。どうやらいきなりこちらの世界へ飛ばされてきたようでして……この地図にも全く見覚えがないんですよ」
 青年は顎をさすりながら、ふむ、と小さく唸った。
「というと、もしや違う世界からいらしたということですか……?」
「ええ……どうもその可能性がありましてね。まだ詳細は分からないので、はっきりとしたことは言えませんが」
 青年はさして驚くふうでもなく話の続きを待っている様子だったが、続きは幌馬車近くにいた長い金髪を三つ編みにした女性の声に突然遮られた。
「リュカ! パオーム三匹がそこまで来てるわ。誰が行く?」
 すぐ側の森の奥から、ガサガサと茂みを掻き分けて近付いてくる何か大きな生き物の影が見える。
「ピエール、プックル、行け!」
 リュカと呼ばれた紫ターバンの青年の指示で、馬車の中から大きなヒョウのような生き物とぴょんぴょんと飛び跳ねるゼリー状の生き物──わらびもち状のアレのようでちょっと苦手だ──に乗った鎧の騎士が飛び出てきて、パオームと呼ばれた生き物がいるらしき方角とルヴァたちの間に立ちはだかった。
「ティミー、ぼくはお二人の護衛をする。行けるな?」
「うんっ、任せて!」
 親子で手と手をぱしんと叩き合い、ティミーはピエールとプックルのほうへと駆けていく。
 ルヴァは突然の出来事に目を丸くして、リュカに尋ねていた。
「あの馬車から出てきた方たちは、どちらがピエールでどちらがプックルなんですか?」
「ああ、驚かせてしまってすみません。ヒョウみたいなのがキラーパンサーのプックル、鎧がスライムナイトのピエールです。彼らはこちらの世界で魔物と呼ばれている者たちですが、ぼくの大事な仲間です」
 リュカはにこりと微笑むと、大して心配する様子もなく幼い息子の背を見つめていた。ルヴァもそれにつられてこれから始まる戦いを見守ることにした。

 プックルがしなやかな体を低くして、唸り声を上げた。その遥か頭上に紫の光を放出する稲妻が音を立て集まり始めた頃、大きな象のような生き物が三匹──これがパオームだろう──が姿を現したのだ。
 そして一頭のパオームが突如プックルのほうへと向かった。どうやら彼らを敵とみなしたようだ。
 次の瞬間、咆哮とともにパオームたちへと稲妻が降りかかった。激しい閃光とパオームの鳴き声が入り乱れる。
 そこへとんでもない速さで右へ左へとステップを踏むように動き回るゼリー状の生き物──凄いと思うがやっぱり好きになれそうもない──を華麗に乗りこなし、剣を掲げたピエールが何故か近くの木の幹目掛けて突っ込んでいく。幹を足掛かりに更に高く跳躍して太陽が翳り、逆光でピエールの姿を見失ったと思った刹那、落下する勢いに任せてパオーム一頭が叩き切られた。
 パオームは悲鳴を上げる間もなくどうと倒れ、さらさらと砂になり朽ちていく。
 駆けつけて様子を見ていたティミーが叫ぶ。
「なに遊んでるの! まだ二匹いるよ、もう一気に片付けるからね! ──ギガデイン!」
 ティミーが白銀の剣をまっすぐに空へと掲げた。
 先程のプックルの稲妻よりも激しい輝きが満ちて、けたたましい轟音とともに二つの落雷がパオームを貫き大地に突き刺さる。体中にびりびりと伝わる振動が治まった頃、辺りには肉の焼け焦げた匂いが漂っていた。

 二匹のパオームの姿は、既にそこにはなかった。

作品名:冒険の書をあなたに 作家名:しょうきち