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しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
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冒険の書をあなたに

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 支度を整えて朝食を済ませた後、リュカが食後のミントティーを口にしながら唸っていた。
「皆に質問です。人間の城や街以外で、大きな書庫がある場所と言えば?」
 ポピーがまず一番に手を挙げた。
「ハイ! 妖精の城ー!」
 続いてティミーも負けずに手を挙げて答える。
「ハイハーイ! 天空城!」
 ミントティーに砂糖をザラザラと入れながら──実は相当な甘党のようだ──ビアンカも答えた。
「あとは……これから行く魔界のどこか、とか?」
 リュカはうーんと更に唸って眉間に皺がよった。
「その中で行きやすいのは……やっぱり天空城かなあ」
 ルヴァとアンジェリークは吐きそうなほど甘ったるいお茶を少しずつ飲み下しながら、一家の話の流れを聞いていた。
 ティミーが二人のほうを見ながら話を補足してくれた。
「天空城にはね、竜の神様マスタードラゴンがいるんだよ。でっかい竜なんだ!」
 マスタードラゴンの住まう城。
 ルヴァの視線がちらりとリュカのほうへ向けられ、彼の言葉が続いた。
「じゃあ、まず天空城へ行ってみましょうか。そこで手掛かりがないようなら、妖精の城って流れかな」

 出発前にルヴァはもう一度改めてテルパドールの風景を眺めた。

 風が作り出した規則的で美しい砂紋。白く輝く太陽に照らされた砂丘。
 そして薄青の空に舞う羽根のように軽やかな雲────偶然訪れたこの世界は何処もかしこも全てがそれぞれに美しいと、ルヴァは感慨に浸った。

作品名:冒険の書をあなたに 作家名:しょうきち