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しょうきち
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冒険の書をあなたに

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第四章 天空城にて〜統治する者とされる者


 あまつみそらの城、と書いて天空城────そこは名前の通りに遥か上空に浮かぶ神の城なのだとルヴァは思い込んでいた。
「……何と言いますか、そのー……ごく普通に大地の上にあるんですねぇ……」
 しかも何故か古めかしい塔の真正面にある。
 リュカがぽりぽりと頬を掻きながら曖昧に笑った。
「あー……っと。うん、ちょっと事情があってこの場所に移動させてもらったんです。一応ちゃんと空に浮かびますよ、あんまり高くは上がらないですけど」
(一応浮かぶって……)
 アンジェリークはその言葉に色々と突っ込みたい部分はあったものの、まずはマスタードラゴンに謁見するのが先と思い直した。

 白亜の城へと足を踏み入れてみて、アンジェリークは大きな気配にぞくりと身震いした。
 凍てついた雪原を思わせるその厳粛な空気は、全身の神経が無理やり研ぎ澄まされてしまうかのようだ。
 天空人と呼ばれる有翼人たちは皆リュカ一家と笑顔で会話していたが、アンジェリークを見るなり怪訝な表情へと変わっていった。
 あちこちから浴びせられる不躾な視線に、ルヴァがそっと遮るように並んで囁く。
「アンジェ、あなたの翼が見えるようになっていますよ。彼らはどうやらその翼を眺めているようです」
 ルヴァから見れば、見慣れない顔でありながら彼らと同様の翼を持ち合わせたアンジェリークに対し、同郷の者なのかどうかと気になっているようにも伺えた。
「このお城に入ってから、なんだか妙に緊張するのよ……変な感覚があるわ」
「実は私もです。上から押し潰されそうな圧迫感がありますねぇ……これがマスタードラゴンのお力なんでしょうか」
 小声で囁きながら城の奥へと進むリュカ一家の後を追う二人。

 巨大な白銀の竜が静かに、だが圧倒的な存在感をもって一行を見下ろしていた。
「我が名はマスタードラゴン。世界の全てを統治する者なり……。よくぞ来たな、勇者一家と遠き異世界のものたちよ」
 マスタードラゴンはまるで腹の底を打つような、地響きさながらの声をしていた。
 アンジェリークとルヴァはいつもの通りに挨拶をして、その声を聞いていた。
「先日グランバニアの近くに大きな力が突如二つ現れたが、あれはそなたたちのことであろう……ああ、私は堅苦しい挨拶などは余り得意ではないのだ。気を楽にしてくれ」
 光の加減で白銀の鱗はときに金色にも見え、アンジェリークはその美しい輝きに目を奪われる。
「お気遣いありがとうございます、マスタードラゴン様。お会いできて光栄ですわ」
 堂々と落ち着いた様子の二人に、マスタードラゴンは目を細めた。
「私のこの姿を見ても怯まぬものには久し振りに出会ったな……リュカたちは私が人の姿をしていた頃に知り合った故、態度が変わることもなかったが……。して、この私に何用かな」
 跪いていたルヴァがすっと顔を上げ、真っ直ぐにマスタードラゴンへと視線を向けた。自分たちが異世界から来たことは既に周知されているらしいと判断して、即座に話の内容を切り替えた。
「私たちが元の世界に戻るためには、どうやら図書館で手掛かりとなる書物を探さねばならないようでして……こちらの図書館の閲覧許可を頂きたいのです」
 ルヴァが話している間、この竜の神はうんうんと頷いているかに見えた。随分と人間くさい動きをするものだ、と二人は思う。
「おお、そうか。そのようなことなら自由に見て行くといい。この世界の歴史も随時記されているから、何がしかの手掛かりはあるやも知れん」
 歴史と聞いてルヴァの頬がゆるりと上がったのを、アンジェリークは横目でしっかりと確認していた。もし図書館に寝泊りしてもいいと言われたら喜んで泊り込みそうな表情だ。
「異世界の女王、アンジェリークよ……そなたに話しておきたいことがある」
「はい」
「そなたたちには勇者と共にミルドラースを打ち倒す力が備わっている。だが、そなたたちがこちらの戦いに加担するのは、決して善いこととは言えぬ」
「……」
 何もかも見抜かれている────とアンジェリークは思った。できることならこのままリュカたちと共に、魔王を封じに行きたいと思い始めていたのだ。
「あの者が滅びたとしてもいずれまた第二第三のあの者が生まれゆくだろう……そして今度は次元を超え、そなたたちの世界へと邪悪な思念を飛ばしかねん。今戦いに関わって怨みを買うのが得策とは思えぬ……そなたたちの住む世界を守るためと思って、ここは堪えて貰いたい」
 どこの世界でも、憎しみは連鎖するものだ。ひとたび関わってしまえば憎悪と報復の対象に入ってしまう。そのことを、アンジェリークはもとよりルヴァは特によく知っていた。
「どうすれば良いのかを知っていても見ていることしかできぬ身は歯痒いものだ……だが我々は本来、下界の争いごとに加担するべきではない。力が大きすぎるが故に、敵だけではなく味方にも多大な犠牲を生み出してしまうのだからな……」
 我々、とマスタードラゴンは表現した────つまり、アンジェリークとルヴァもまた統治する側の立場であり、下界の人間とは異なる存在であると。
 マスタードラゴンの助言は正しいと、ルヴァも同意はできた。
 だがこうして人の身と感覚を持ちながら、それでも最早人間ではないように思わされてしまう一瞬に、一体自分は何なのだろうと思うときがある。

作品名:冒険の書をあなたに 作家名:しょうきち