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同調率99%の少女(9) - 鎮守府Aの物語

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--- 1 壊れ始める日常



 翌日以降、1年生の間では一つの出来事と噂が漂った。それは、内田流留が女子に人気の吉崎敬大に告白して、見事振られたという話である。
 流留が登校して教室に入ると、今までもよそよそしかった女子がさらによそよそしくなっているのに気がついた。その態度には、刺々しい視線による圧迫感もあった。しかし女子からの反応には慣れていた流留は大して気にもとめず、いつもどおり着席し授業の準備を整えたのち日課となっていた仲の良い男子生徒のところに行き朝の挨拶をする。

「おはよー。○○くん、○○くん、みんな。」
「え、あぁ……おはよう。」
「お、おはよう。」

 男子生徒もよそよそしくなっていた。挨拶を返した男子のうちの一人が、小さめの声で流留に訊いてきた。
「なぁ内田さん。敬大に告ったってマジなの?」

 その一言に流留は片方の眉を下げて激昂しかけ、逆に聞き返した。
「なに……それ。誰から聞いたの?」
「いや〜、女子たちの間じゃもう話広まってるぜ。てかマジなの?」
 流留は頭を振る。
「そんなわけない!だって敬大くんの方から告ってきたんだもの。」

 つい、流留は喋ってしまった。この場に吉崎敬大がいない(クラスが違う)ことは幸いだと思ったが、それは逆に状況を悪化させてしまう結果となる。クラスの大半が流留の方に視線を向けてきた。わりと大きめの声で言ってしまったのでクラスの女子にも普通に聞こえてしまったのだ。そして流留の側に数人の女子が詰めかける。
「ちょっと内田。適当なこと言わないでよ。あなたが敬大くんに告白したの、私達知ってるんだからね。」と女子A。
「は?そっちこそ適当な事言わないでよ。当事者はあたしだったんだから。あたしが言うからにはこっちが本当の話よ。」
「ふ〜ん。どのみち告白は本当だったんだ、その口ぶりからすると。」
「……!!」

 流留はしまったと思い苦々しい顔をした。その様子を見て別の女子生徒Bは攻勢をかける。
「否定しないところを見るとマジなんだね。」
 女子たちは顔を見合わせてクスクス笑ったりため息をついたりしている。
「敬大くんに告るなんてなんてことしてくれたのよ。私達は敬大くんに迷惑がかからないように適度に距離を保って彼に接するようみんなで取り決めてきたのに、あんたが告ったせいで私達の均衡壊れるじゃないの。どうしてくれるのよ!」
「んなこと知らないって!あんたたちが勝手に決めたことでしょ。あたしには関係ないしファンクラブごっこならよそでやってよ。」
 手でシッシと払って女子生徒AとBの攻勢を手荒くあしらう流留。だが女子生徒たちも負けてはいない。別のことも持ちだして流留をやり込めようとしてきた。

「敬大くんもそうだけど、Cくんとベタベタするのもアレでしょ?あんた実は私達の友達の想いを知っててやってるでしょ? CくんやDくんを好きって子の気持ちを弄ぶためにわざと男子とつるんでるんだ。」と女子A。
「あんた恋愛に興味ないふりして男子に近づいて色んな男子をひっかけてるでしょ。確かに内田さん、あんたルックスいいし男子から多少は人気あるのは認めるけど、そういう色仕掛けめいたことして色んな人の気持ちを弄んでかき乱すの、正直言ってうざいのよ。何時の時代の性悪気取りなのよ、え?」
 別の女子生徒も加わってきた。

 その後他の女子生徒からも堰を切ったように今まで流留に感じてきた気持ちが飛び出して流留にぶつけられていく。どれもこれも流留にとっては嘘っぱち、尾ひれがついた出元の分からない内容でしかなかったが、彼女らにとって自分らの和を乱す悪と認識したものには必要十分な口撃材料だった。


 チャイムが鳴る。流留のクラスの担任が前の扉から入ってきた。国語の担任の教師である。教室の後ろからは副担任である阿賀奈が入ってきてホームルームが始まった。
「はいはい。ホームルーム始めるぞー。おいそこ!おしゃべりはやめて早く席に着きなさい。四ツ原先生、彼女らを座らせて下さい。」
「はぁい。ホラホラ、あなたたち早く席に座りなさい。」

 先生が来たために女子生徒たちは流留への口撃を一旦ストップさせる。何人かは舌打ちをして自身の席へと戻っていく。流留も気分がムシャクシャするが、授業が始まるのでイライラを我慢して着席するために自席に戻った。


((これだから!!女子同士の交流は嫌なのよ!どいつもこいつも誰が好きだとか誰ちゃんのためにとかお友達ごっこして。みんな自分勝手。))

 方向性は違えど、実際自分勝手さに関してみれば彼女も人のこと言えた義理ではないが、他人に猜疑と嫌悪の念を抱いているうちは自分のことは棚に上げて気づかないのが人の常。彼女も同じだった。


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 途中の休み時間の間、いたたまれなくなった流留は教室を出て適当に他クラスの男子生徒と話そうとするが、尾ひれがついた噂はすでに他クラスにも及び、今まで流留に接していた男子生徒は面と向かって拒絶する男子生徒はいなかったが、理由を付けてその場を離れる者がほとんどであった。彼らは女子から手厳しく注意を受け、流留を見捨てる態度を取り始めた。

 1年の大半の女子が、同性と仲良くせず男子生徒とばかり仲良くする変わりものの美少女、内田流留に対してよろしくない感情を持っていたことが、この数時間で衆目にさらされた結果となった。この話は、一部の生徒を伝って上級生の一部の耳にも入っていった。それは那美恵たちも知ることとなる。

 流留は当事者の吉崎敬大に話をして誤解を解いてもらおうとしたが、午前中のすべての休み時間に彼はおらず、また彼のクラスの女子にあしらわれて話すことかなわずにお昼を迎えた。

 さすがの流留も普段仲良く接している男子生徒の空気の違いを感じ取ったのか、その日は一人で昼食を取ることにした。