二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

Lovin' you 3

INDEX|1ページ/3ページ|

次のページ
 
section10

サイレンが鳴り響く中、「無粋な事だ。」と、目の前の美丈夫が溜息をつく。
これで開放される!とホッとしたのも束の間、そっと掠めるようなキスが落とされた。
「チャンスは最大限に活かす主義なのでな。」
不敵な笑みを浮かべ、身体を離す男にカッと顔が熱くなる。
スクリーングラスを掛けながら部屋を出て行こうとする後ろ姿に、思わず枕を投げ付ける。
しかし、それはあっさりと避けられ、扉が閉まる直前に、男は「続きはまた後で」などと言い残して去って行く。
「続きなんてあるか!!バカ!」

部屋の外からはクルー達の慌ただしい足音や怒声が聞こえる。
荒れた息を整え、ジャケットを羽織るとシャアの後を追うようにドックへと急いだ。

ドックに着くとノーマルスーツに着替えたシャアが百式に向かって走って行くのが見えた。
こちらに気付いたシャアに自分の乗れるモビルスーツはあるか?と尋ねると、シャアは眉をひそめ、グイッと私の腕を鷲掴んだ。
「その身体で出撃するつもりか!?それに怖いのだろう?こんなに手を震わせて!!」
自分の震える手を見せ付けられて、初めて自分が"恐怖"している事に気付く。
勢いでここまで来たが、戦闘を前に身体の震えが止まらない!
「それでも!っ」と言い募ろうとする私にシャアの叱責が飛ぶ。
「まともに戦えない者は足手まといだ!さっさと部屋に戻れ!!」
その激しい怒声に言い返す事も出来ず、自分の不甲斐なさに唇を噛む。
「ドクター!アムロを部屋に連れて行ってくれ!」
シャアは背後にいたアルに私の腕を掴ませると、足早に百式へと走って行った。
振り向き、医師であるアルが、通常居るはずのないドックにいる事に驚く。
「えっ!アル?どうしてここに?」
震えるアムロの腕を掴み、怪訝な顔を浮かべると、アルは無言のままドックの外へとアムロを連れて行く。
「アル?」
通路まで出ると、アルはアムロの腕を離し、そのまま向き合う様にしてアムロの両肩を掴む。
「君がドックの方へ走って行くのが見えたから追いかけてきたんだよ。」
アルは辛そうな顔をアムロに向ける。
「アル…」
「こんなに震えて!もうずっとモビルスーツに乗っていないだろう?無茶するな!」
その言葉に、さっきのシャアの叱責が重なる。アルが自分を心配してくれているのは分かる。でも、それよりも何より、ままならない自分に腹が立つ。
『自分はなんて役立たずなんだ!こんな情けない自分に何が出来ると思ったんだ!』
「くそっ!!」
アムロはアルの腕を振り払うと、アルの制止も聞かず部屋へと走って行った。

「アムロ…。」
その場に残されたアルは、振り払われた腕を握り、アムロの後ろ姿を見送る。
ーーー戦後の君の7年間はなんて辛い時間だったのだろう…。


アムロは部屋に戻るとベッドに突っ伏し、シーツを握りしめた。
「情けない!!クソっ!!クソっ!なんでこんなに怖いんだ!なんで!!」
震える両手を胸元に抱え込み、震えを止めようとするが止まらない。
「なんで!!!!」
情けなくて涙が出てくる。シャイアンでの長い幽閉は戦士としての自分をも殺してしまったのだろうか…!


どのくらい経ったのだろう。
爆撃の音が止み、モビルスーツが着艦する振動が響く。
「終わったのか…」
こんなんじゃシャアに笑われても仕方がないな…。
涙に腫れた顔を洗い、髪を整える。
せめて整備だけでも手伝おうと重い腰を上げドックに向かう。

丁度ドックにレトロなプロペラ機が不安定な気流に機体を揺らしながら着艦しようとしていた。
「凄いな。あんなレトロな機体がまだ飛ぶんだ。」
感心しながら眺めていると、
「これから向かうヒッコリーまでの道案内をしてくれるカラバのメンバーだ。」
いつの間にかハヤトが隣に来て説明してくれる。
プロペラ機が無事着艦すると、中から細身の女性が颯爽と現れた。
「カラバのベルトーチカ・イルマです。ヒッコリーまでの道案内をさせていただきます。!」
良く通る意思の強そうな声がドックの中に響いた。


応接室でベルトーチカを囲み、ハヤト、カミーユ、アルが談笑しているところに、整備の手伝いを終えたアムロも加わる。
ベルトーチカは立ち上がると、ふわりとした金髪を揺らし、気の強そうなエメラルドグリーンの眼差しでアムロを見つめる。
「ベルトーチカ・イルマです。よろしく!」
差し出された手に握手を返すと、自分も自己紹介をする。
「アムロ・レイです。」
「!?アムロ・レイ!?あなたがあの一年戦争の?!」
いつもと同様、女である事に疑念や当惑を向けられると思っていると、彼女からは予想外の反応が返ってきた。
「まぁ!あのアムロ・レイが女性だったなんて!!素敵!同じ女性として誇らしいわ!」
女である事をあっさりと肯定され、且つ誇らしいと言われ、呆気にとられる。と、同時に喜びが心に込み上げた。
『こんなの初めてだ…。女である事を認めてもらうのがこんなに嬉しいと思わなかった…。』
ベルトーチカに好感を覚えると、正面に座り、会話に加わった。
その後も雑談をしていると、部屋の前をクワトロ大尉が通り過ぎる。
その姿を見たベルトーチカが、露骨に不快な表情を浮かべた。
なんだ?何に怯えてるんだ?ベルトーチカから"不安感","恐怖"そんな思惟が伝わって来る。
「あのサングラスの方はどなた?」
ベルトーチカの問いにハヤトが答える。
「エゥーゴのクワトロ大尉です。この作戦の指揮をしている。」
「なんだか怖い人ね。ギラッとしてて。戦争以外の世界では生きていけない人じゃない?」
「あなただってカラバの一員なんだ、戦いを全く否定する訳じゃないんでしょう?」
カミーユがクワトロ大尉を擁護するがベルトーチカは更に言い募る。
「でもねぇ。あの人には平和なインテリジェンスを感じないの。」
ベルトーチカの言に何故だか無性に腹が立った。
「クワトロ大尉はそんな人じゃない。本質的には優しい人だよ。」
サイド6での情景が瞼に浮かぶ。
少なくとも困っている子供を見捨てたりはしない人だ。
よく分からない怒りと自分の感情に困惑してその場を後にした。
そんな私をベルトーチカ以外の三人が複雑な表情で見つめていた。


通路を歩きながら胸に手を当てる。
『なんだってこんなに腹が立つんだ!別にシャアの事を誰がどう言ったって私には関係ないじゃないか!』
「あーっ!もう訳が分からない!!」

自室に戻り、ベットに座るとポスンと上半身を横に倒して目を閉じる。
少しして落ち着くと、ベルトーチカに失礼な態度をとってしまった事に気付き、反省する。
「後で謝りに行こう…。」
とりあえず、今日は朝からいろんな事があって疲れた…。
「チョット…休憩…。」
ベットに横になるとそのまま深い眠りに就いてしまった。


ふと目を覚ますと、頬に暖かい温もりを感じる。思わずその温もりに頬ずりするとクスリと笑う気配がした。
「えっ?」
目を開けると、そこには綺麗なアイスブルーの瞳が愛おしそうに私の顔を見下ろしていた。
「シャ、シャア!?」
頬に当てられた手が額にまわり、前髪を掻き上げる。するとそこに優しいキスが降りてきた。
「まだ夜中だ、寝てていいぞ。アムロ」
優しく髪を梳く手が心地いい。
作品名:Lovin' you 3 作家名:koyuho