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18 全てはあなたのために~ロストフスキーの憂鬱Ⅳ

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邸に戻り、ロストフスキーは見たままをレオニードに報告した。
部下からの報告にいたく満足げに微笑みながら、当然のごとくその後の指示を申し渡した。

「今後は基本10日に一度。様子を見て、何かあればおまえの判断で差し入れておけ。頼んだぞ?」

「⁉こ、侯!それは・・・」
---それは私に、あの小娘を四六時中見張っていろと?あなたのお傍を離れて⁉

「うむ、当分私の側付きはユーリーに務めさせる。案ずるな」

忠臣の懸念をすぐさまくみ取るように、レオニードは残酷な気遣いで更に追い打ちをかける。

---なぜ...ファーストネームで?なぜ、あのような若造に⁉
「は・・・承知いたしてございます」
---そうか・・・侯は私とご自身を試しておられるのだ!私の愛と、忠誠を。
ああ、侯!

---しかし、なぜこんなにもあのような小娘に・・・たしかに、アデール様とはうまくいっておられないようだが、だからと言って素性も知れぬドイツ女をなぜ?アレクセイ・ミハイロフの子供まで産んだ女をなぜ?
ああ、嫌な予感がする・・・。
そうだ、いっそあの娘に言ってしまおうか?おまえと息子が食いつなげてるのは、ユスーポフ侯のお慈悲のお陰だと・・・。

~~~~~

ある夜、ロストフスキーが何度目かの援助物資に関する報告を終えると、レオニードは面映ゆそうに口を開いた。

「あれは・・・ドイツでは音楽学校で学んでいたのだったな?」

「・・・そのようですね。ピアノが専攻だったとか。しかし、あの生活ぶりでは音楽などとても・・・」

「次の小包にこれを・・・」

そう言われて手渡されたのは・・・来月マリインスキー劇場で開かれるオペレッタのチケットと、ドレスのひと揃えが入った箱だった。