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永遠にともに〈グリプス編〉3

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section 4

月面都市グラナダを出港したエゥーゴの新造艦「ラーディッシュ」は無事アーガマと合流した。

「クワトロ大尉、お帰りなさい。新型モビルスーツは無事に受領出来たようですね。」
アーガマに帰艦したシャアをブライトが迎え入れる。
「ああ、多少トラブルはあったがね。」
「ははは、ヘンケン艦長から聞いています。貴方とアムロで蹴散らしたともね。」
2人は笑顔で握手を交わす。
「ところでアムロは何処に?」
周りを探すブライトにクワトロが笑う。
「早速ドックで零式の整備だよ」
「あいつは!挨拶くらい出来んのか!全く。昔と全然変わらんな!」
頭をガシガシと搔きむしりながらブライトが吐き捨てる。
「ホワイトベースでもこんな感じで?」
「…ああ。そうですね。人付き合いが苦手で、それに元来メカニックの方が性に合ってるらしくて、常にドックに入り浸っていましたよ。まぁ、ホワイトベースは人手不足だったんで自身で整備せざるを得なかったというのもありますがね。」
ブライトは両手を上げ、溜め息を漏らしながら言う。
「なんだかんだ言ってもただのメカオタなんですよ。機械をいじっている時のあいつが一番活き活きています。」
「ははは。確かにな。アーガマ内でもアムロをあまり知らないクルーは彼の事をパイロットではなくメカニックだと思っている者もいるからな。」
「そういえばアムロはまだ一度も出撃していませんね。」
アーガマが就航してからまだアムロは一度も出撃していない。
体調が思わしく無かったのもあるが、シャアが極力出撃をさせなかったのだ。
「アムロ・レイの存在を自軍やティターンズに知らしめる事は良くも悪くも影響が大きい。敵を威圧し、自軍内の指揮を高める効果もあるがその強さ故にパイロット達がアムロに頼りきってしまう可能性もある。」
クワトロの言葉にブライトが頷く。
「その通りです。事実、1年戦争時はアムロに頼りきり、アムロの情緒や体調が顕著に戦況に反映されていました。」
「しかし、ティターンズとの抗争に口火が切られた今、アムロの出撃無しではいられまい。その為に零式を受領したのだからな。」
「そうですね…。それにエゥーゴは人員不足とはいえ、クワトロ大尉やアポリー中尉をはじめ精鋭が揃っています。昔と違い、アムロに頼りきりと言うことにはならないでしょう。」
ブライトはクワトロの肩を叩く。
「ああ、そうだと良いがな。それから…」
と、クワトロは話しかけて言葉を止める。
「クワトロ大尉?」
「もう一点、気になる事があるのだが、それは場所を変えて話したい。」
周りに視線を配るクワトロにブライトが頷く。
「では、艦長室へ」

艦長室のソファに向かい合って座るとブライトが飲み物をテーブルに置く。
「それで気になっている事とは?」
ブライトの問いにクワトロが膝の上で指を組む。
「アムロの体調の事だ。地球圏に近付いてから突然、スイッチが入った様に激しい頭痛に襲われる事がある。蘇生してからアクシズで過ごした3年余りで、弱り切っていた身体は随分回復した。ほぼ完全と言っていい程に。しかし、地球圏に近付くにつれ体調が悪化したのだ。」
「頭痛だけですか?」
クワトロが頷く。
「それに、頭の中で誰かが呼ぶ声がするとも言っていた。」
「精神的な…トラウマによるものでは?」
「私も始めはそれを疑ったが、それにしては発症するタイミングがまばら過ぎる。」
ブライトが目を伏せドリンクのボトルを握る手に力を入れる。
「もしや…、ニュータイプ研究所の実験による何らかの影響が出ているのでは…?」
クワトロは溜め息を吐くとブライトに視線を向ける。
「その可能性が高いのではと思っている。現在、私の手のものを連邦のニュータイプ研究所に潜入させている。そこにアムロの実験データが保管されている事も突き止めた。しかし、管理が厳重でまだ閲覧出来ない状態だ。」
「研究内容が把握できていない以上、手が打てないと言う事ですか。」
「そう言う事だ。もし戦闘中に頭痛に襲われた場合、非常に危険だ。」
それがアムロを出撃させないもう一つの理由だった。しかし、もうそんな事は言っていられない状況に来ていることも事実だ。
「しかし、ただ手をこまねいていても仕方ないのでな、先日グラナダで健康診断と称してアムロの精密検査を行った。」
「アムロは嫌がったでしょう?」
病院や検査と言ったものは研究所での実験を思い出させる為か、かなりの抵抗を感じるらしくアムロは嫌がる。アーガマ内での検診ですら受けてくれない。
「ああ。かなり…。しかし放置する訳にはいかんのでな。」
アムロはかなり抵抗したが最後は「君を失いたくない」と言うクワトロの切実な願いに、ようやく折れてくれたのだ。
「それで結果は?」
クワトロはアムロのCT画像をブライトに見せる。
「これは頭部の画像だ。ここ、脳幹のすぐ近く、薄っすらと小さな影が見えるのがわかるか?」
ブライトは画像を手に取り目を凝らす。
そこには小さい0.5cm四方程の影が写っていた。
「チップですか?」
「ああ、おそらく。このチップが地球圏から発せられる何らかの電波を受信して頭痛を引き起こしているのではと考えている。」
「ではこれを摘出すれば!」
ブライトの言葉にクワトロが首を横に振る。
「場所が悪過ぎるのと、どうもチップが脳内に癒着しているらしく摘出は難しいとの診断だ。摘出を試みたとしても何らかの障害が起こる可能性が高いと…」
「なんてこった!」
ブライトは手で顔を覆い、大きく溜め息を吐くとソファに身を沈める。
「とりあえず、零式のコックピットに登録外の電波が外から入るのを防ぐ様にブロック機能を特注で追加した。完全にシャットアウトとはいかないが、かなりの効果を得られる筈だ。」
「そうですか…。しかし、連邦のアムロに対する非道な行いには反吐が出る!!」
ブライトはそう言い捨てると、テーブルに拳を思い切り叩きつける。
「同感だ」
クワトロの拳も怒りで震えていた。


その頃、アムロはドックで整備士用の繋ぎを着て零式の整備をしていた。
「アストナージ!零式の整備が終わったからMK–Ⅱの整備手伝うよ!」
零式のコックピットからフワリと降り立つとメカニックチーフのアストナージの元に行く。
「アムロ中尉、帰って来たばっかりで疲れてないんですか?」
工具を手に取り、MK–Ⅱの整備に行こうとするアムロにアストナージが心配気に聞く。
「全然!オレはクワトロ大尉達と違って何にも仕事してないからね。」
「いやいや、グラナダを出港して直ぐに戦闘したって聞きましたよ。」
「んー。でもクワトロ大尉も一緒だったからね。実質戦闘してたのなんて5分位だし。」
事もなげに言うアムロにアストナージは冷や汗をかく。
「その5分で12機を撃墜したんですよね?」
「そうなんだよ!零式の性能凄いんだ!加速も良いし、動作も本当にスムーズで自分の手足の様に動くんだ!リックディアスだとたまに反応が遅くて0.02秒くらいズレが出るんだけど零式はそれが無いんだ!それから…」
と、アムロは延々とアストナージに零式の性能を語りまくる。
それを聞きながらアストナージは思う。