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雋娘と童路

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こんな男をオトすのは、簡単だと思っていた。
事実、訳もない。

般弱に、居所を突き止めらた。
都を離れ、身を偽り、隠し、ようやく滑族とも手が切れたと安堵していたのに、、、。一体どこから知れたのかしら、、。

滑族の王族 センキ公主から、私も般弱も育てられた。
いいえ、密偵として仕込まれたのよ。
あの頃、、、、何一つ良い事なんて無かった。

本当は、般弱になんて協力したくないわ。
でも般弱は、これが最後だと、滑族の若い娘達も解放すると約束したわ。
般弱が入れ込む誉王殿下、般弱が言うには、随分と勢力を削がれてしまったのだ。
今、世間では皇太子が失態を冒して、誉王殿下は飛ぶ鳥を落とす勢いであると聞いているわ。
実態は違うのね。
般弱は元来、権力欲が強い娘、彼女が慕う誉王に力が無くなれば、般弱も手を引いて、滑族そのモノが瓦解して解放される、、、、。
私は、師匠の センキ公主の教えには、嫌々従っていた、怖かったから、、。
でも、般弱ならば、どうにでもなるわ。
滑族なんて、、もう、、、どうでもいいのよ。


童路と言うこの男、私が仕掛ければきっと、聞いてもいない事をペラペラと喋り出すに違いないわ。
ただのしがない野菜売りにしか見えないのに、般弱の手下を解放して、紅袖招の組織を揺るがした。
何を言って、何をして、組織を脆弱にしたというのだろう、、、。
見た目とは違うのかも知れないわ。


この男を般弱は、江左盟の者だと言う。
江左盟、組織も目的も特徴もよく分からない。
そんな建前えを言い訳にして、私はゆっくりと時間をかけるつもりよ。
当の般弱は切羽詰って、急いているようだけど、、、、。
般弱の、事を見通す力は元々弱い。どのみち、私を信じるしかないのよ。

この手の男をオトすなんて、簡単だわ。
きっとこの男もまた、私が優しくすればたちまち私に夢中になるわ。
結局、男なんて皆同じ。
私を自分のモノにすることしか頭に無いわ。
そして、私を良いように扱い、秘密を漏らすのよ、、、、。
センキ公主の言う通りに動き、私の青春を滑族の為に捧げたわ。
今、私が生きた証なんて何も無い。
ケダモノの様な男に身を任せ、情報を引き出し、センキ公主の思惑通りになるように、人の心を操作する、、、、、そんな日々。

私は、未亡人の雋と名乗り、この男に接触する。
たまたま偶然に、この男が通りかかる近くで具合が悪くなるのよ。
そして私が行く先は、この男の隣に住む老婆の家。
仕事の帰りに通りかかった童路に、周りの人々が私を押付ける形で、私は野菜売の荷車に乗せられる。
接触するには絶好の形で、不自然さはどこにもないわ。

ただ、この童路という男、、、、、。
私に対して、酷く臆病だわ。私に興味はあるものの、その様子は、まるで怖がっている様にも思える。
まるで心して、私との接触を避けているような、、。
私に何か、普通の女と違う匂いを感じたのなら、この男、その道の者に間違いはないわ。

私もまた、童路に今までの男とは違う何かを感じていた、、。
何と表していいのか分からないのだけれども、ひどく優しいのよ。
この様な男が、紅袖招組織の一角をつき崩す重要な役目を果たしたなんて、、。
初めは私とは関わりたくない様子だったのだけど、身寄りの少ない弱い女が独りで頑張っているのが、どこか心に触れたようで、次第に他愛のない会話を交わせるようになっていったわ。

私はわざわざ、幾日も食べ物や水を口にせず、体を弱らせて潜入したのよ。
具合が悪く見えない訳はないわ。
そんな女が自分のために掃除をしたり、洗濯をしたり、繕いものをしたり、、、童路が「残り物だから」と、くれた野菜で精一杯の料理をしてみたり、、、、、。
この私の謀に、なびかぬ男などはいない。

時が経つにつれ、童路が、私に心惹かれるのが分かったわ。
次第に仕事から早く戻るようになり、隣なのに私の家の前をわざと何度も通って行ったり、私が童路の家に顔を出すと、あからさまに喜んだりはしないものの、幾分口元が綻んだ。

この男の心はもう、私の事でいっぱいの筈。

私も童路を、何かにつけ頼りにした。

今までの男ならば、ここで力尽くで自分のモノにしようとするのに。
童路は抱きしめるどころか、私に指1本触れないのよ。
「顔色が悪いが、ちゃんと食べているのか」とか、「お金に困っていないか」とか、時には滋養のある物を買ってきてくれたり、、、。
私の事を一日中、気にかけている様子だわ。

身の上話も幾らかしたわ。
童路の妹は、随分前に、母親が騙されるように借金させられ奪い取られ、あげくに妹は妓楼に売られてしまったと。
そして取り戻す前に死んでしまっていたと、可哀想でならなかったと。
そして母親は、遠く離れた地で元気にしていると。
童路は時折、誰かにお金を送っていたようだわ。
幾人かの知り合いに預け、届けてくれる様に頼んでいたようね。送り先は母親に違いはない。
この男が江左盟の最前線で密かに動く者ならば、恐らく母親は、江左盟の仲間たちが守っているのだわ。
江左盟が敵としている者に、人質にされたりしないように、、。
この知り合いの男達をを調べれば、恐らく童路の母親の居所や、仲間達を割ることが出来る。
般弱が知りたかった情報を、私は手中にしている。コレを知らせれば、私の役目は終わるのかも知れないわ。

でも、般弱には教えないわ。

教えれば、般弱は母親を人質に取り、童路を捕らえ、童路が持つ全ての秘密を吐かせてしまう。
これだけ私の色香に迫られても、自分の身の上くらいの秘密しか洩らさなかったこの人。
母親を目の前で切り刻まれたら、吐かぬ訳にはいかぬでしょう、、。
般弱は平気でするわ、、、、センキ公主がそうだったのだもの。
あの子は師匠のそういう残忍な所を、そっくり引き継いだのよ。
ああいうやり方は、もう御免だわ。
生きる為に従っていたけれど、滑族なんてもううんざり。

般弱からは、再三の催促をされたけれど、
「この男、何も出てこないわ。」
「本当に梅長蘇の配下なの?」と、逆に責めてあげたわ。

でも般弱には、この男を突破口にするしか無かったのね。
業を煮やし、年の暮れ寒い日に、私に何の触れも無く、童路を捕まえた。
私は童路を捕らえたことを、誉王府に呼び出されて聞かされた。
そして、この私を餌にして、童路の口を割らせると。
「四姐を人質にしたら、あの男は喋るでしょう?」
「随分入れ込まれていたそうじゃない?流石は四姐よ。」
そう言った。
般弱は私を怪しんで、監視していたのかも知れないわね。
「上手く、演じてちょうだいね。」
般弱がせせら笑う。
ゾッとしたわ。
私がわざと、情報を伝えなかった事を、知っているのかしら、、。

私と般弱が仲間だとは知らぬ童路。
誉王府の屋敷の奥の、小屋の中に囚われていた。
そして既に痛めつけられていた、、、。
攻め具に括られた童路の目の前で、般弱は私を傷つけ、童路はあっさりと主の名を口にした。
主は、妙音房の十三先生だったなんて。
妙音房は紅袖招の目と鼻の先に位置した。
紅袖招はあの場所から見張られていたのね。
これに気が付かないとは、般弱の滑族の頭としての能力など、やはり疑わしいわ。
作品名:雋娘と童路 作家名:古槍ノ標