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未来のために 8

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未来のために 8


「ジャブロー基地を攻撃するんですか?」
ドックでリックディアスの整備をするアムロが、アストナージに尋ねる。
「ああ、それで地球に降下するモビルスーツ隊と一緒にメカニックを一人連れて行きたいそうだ」
「地球で反連邦組織のカラバと合流するんですよね?そこにメカニックはいないんですか?」
「居るにはいるが、人手が全然足りないらしいんだ」
「それでオレが?」
少し嫌そうに答えるアムロに、アストナージがすまなそうに頷く。
「オレはこっちを離れられないし、他に任せられるのお前しか居ないんだよ。それに今回の降下メンバーにはクワトロ大尉とアポリー中尉、カミーユとお前の兄貴も含まれてるんだぞ」
「え?兄さん達が?」
クワトロや兄の名前にアムロが驚く。
「ああ、少数精鋭で行くらしい」
「でも、こっちの守りはどうするんだ?」
「ヘンケン艦長のラーディッシュと合流する」
「ああ、成る程。エマ中尉の隊が残るわけか」
「そういう事」
エマ・シーン中尉、ティターンズのエリートでありながら、バスクの非道な作戦に同調できず、エゥーゴへと寝返ったパイロット。
女性ながら、その操縦技術はレベルが高く、人間的にも素晴らしい人だ。
「分かったよ。引き受ける。それに兄さんと離れたくないし」
「クワトロ大尉ともだろ?」
「ばっ!アストナージ!!」
揶揄う様に言うアストナージに、アムロが顔を真っ赤にして叫ぶ。
アーガマ内では、既にアムロとクワトロの関係は周知の事実であり、あのブライトですら黙認している。
そもそもクワトロに隠す気が全く無いのだ。アムロとの距離感はとにかく近いし、スキンシップも激しい。
これで気付くなと言う方が無理がある。
と、言うか、アムロに悪い虫が付かないに敢えてやっているとしか思えない。
「大体、百式のあのピーキーなチューニングはお前にしか出来ないだろうが」
「あれは!クワトロ大尉の操縦テクニックに合わせると、ああなっちゃうんだよ!」
「まぁ…あそこまで絞り込んだチューニングの機体を自在に操るクワトロ大尉の腕は流石と言うか…バケモンの領域だけどな」
「確かに」
頷くアムロに、アストナージは“そのチューニングをするお前の腕も大概だ”と思う。
「今日の午後に作戦会議があるから、レイも一緒に出てくれ」
「えー、アストナージが聞いといてよ」
「お前なぁ、自分の耳でちゃんと聞いておかないと完璧な対応は出来ないぞ!」
「ちぇっ、分かったよ」
渋々ながら頷くアムロに、アストナージが小さく溜め息を吐きながら、心の中で呟く。
『まぁ、メカニックはクワトロ大尉からの指名なんだけどな』


作戦会議には、クワトロ大尉は勿論の事、出撃メンバーとアストナージ、ブライト艦長も同席していた。
そして、モニター越しにカラバのハヤト・コバヤシの姿も。
アムロは部屋の隅で、クワトロの作戦内容を聞きながら、「地上用にMSをメンテナンスしないとなぁ」などと考えながらメモを取っていく。
そんなアムロを、モニター越しにハヤトが複雑な表情で見つめている事にも気付かずに…。
ハヤトは、事前にアムロの情報をブライトから聞いていた。
ア・バオア・クーで怪我を負い、ジオン兵に助けられた事、記憶を失っている事。そして、その記憶を徐々の思い出し始めている事を。
「ー以上だ、何か質問は?」
クワトロの問いに、アムロが手を挙げる。
「レイ」
「降下作戦ではバスクの裏をかくために地球の自転に逆らって降下するんだろう?ならば各機のバーニアを強化しておきたい。それをするのに出来れば一日欲しい」
「作戦決行は28時間後だ。間に合うか?」
「ギリギリだな、了解。なんとかするよ」
「よろしく頼む、他に何か質問は?無い様ならばこれで解散!」
皆が一斉に席を立ってブリーディングルームを出て行く。
アムロもアストナージと整備の相談をしながら部屋を出る。
その姿を見送った後、最後に残ったブライトが、まだ通信の繋がっているモニターに視線を向ける。
「どうだ?」
〈…驚いたよ…。本当にアムロだ。生きていたなんて…〉
ハヤトは、薄っすらと瞳に涙を浮かべてブライトに答える。
〈しかし、やっぱり俺を見ても無反応だったな…〉
少し残念に思いつつも、生きていてくれた事に喜びを噛み締める。
「ああ、さっきも話したが、急激な覚醒はアイツに負担を掛ける。実際に何度か倒れてるんだ。だから、すまんが、アイツとは少し距離を取って接してくれるとありがたい」
〈了解した〉
「それじゃ、頼んだぞ」
そう言ってブライトは通信を終了させる。
「ああは言ったが、ハヤトとカイとはどうしたって顔を合わせる事になるだろう…。まずい事にならなければいいがな…」
窓から見える地球を見つめ、ブライトはため息混じりに呟いた。


作戦当日、アムロはロベルトのリックディアスのコックピット内に予備のシートを取り付けて一緒に降下する事になった。
「レイ、座り心地はどうだ?」
ロベルトのシートの真後ろに取り付けたシートに座り、アムロが深呼吸をする。
「…ん。まぁまぁかな。流石にMSで大気圏突入は緊張するね…ちょっと怖いな」
「そうだな。バリュートがあるとは言え、外の摩擦熱は凄いからな。それに下手すりゃ敵の的になっちまう」
「うん…」
『この緊張感…前にも感じた事がある気がする…。とても…怖かったような…そんな気がする』
アムロはノーマルスーツの胸元を握りしめて目を閉じる。
そんなアムロの不安を感じ取ったロベルトが後ろに振り向き、安心させるように笑顔を向ける。
「レ~イ、心配するな。俺に任せとけ!絶対無事に地球へ降ろしてやるから」
「兄さん…」
ロベルトのその優しさに、アムロの不安が少し薄れる。
「兄さんの腕を信じてるよ!」
「おう!」

リスクの大きいルートでの地球降下作戦は、クワトロの読み通り、バスクの裏を書くことに成功し、無事にモビルスーツ隊は地球へと降下した。
そして、ジャブロー基地の攻撃作戦は決行されたが、それはクワトロの予想通りティターンズの罠であり、ジャブロー基地は既にもぬけの殻だった。
基地には核爆弾が仕掛けてあり、基地ごとエゥーゴのモビルスーツ隊を殲滅する作戦だったのだ。
アムロ達は爆発の危機を、カラバが所有する大型ガルダ『アウドムラ』に救われ、どうにか免れる事が出来た。
その際、潜入調査中にジャブロー基地に囚われていたレコア少尉と、元ホワイトベースクルーでジャーナリストのカイ・シデンも共に救出し、アムロ達はカラバのメンバー、ハヤト・コバヤシと合流したのだった。


「ハヤト艦長、助かった。ありがとう」
「いえ、間に合って良かった」
アウドムラの艦橋で、クワトロとハヤトが握手を交わす。
「エゥーゴのメンバーを紹介します。こちらからアポリー・ベイ中尉、ロベルト・ヴェガ中尉、Mk-Ⅱのパイロットでカミーユ・ビダン、そしてメカニックのレイ・ヴェガです」
クワトロが順にメンバーを紹介し、それぞれがハヤトと握手を交わす。
最後に紹介されたアムロと握手を交わすが、やはり、アムロの反応は初対面の人物に対するものだった。
『やはり…分からないか…』
ハヤトは心の中で溜め息をつきながらも、顔には出さずに対応する。
作品名:未来のために 8 作家名:koyuho