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第三部 1(101) プロローグ

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ネッタは結論から言うと、バレエダンサーとしては成功しなかった。

それには色々な理由はあったが、一番の大きな理由は、2つ歳下の天才ー、後に名プリマとして世界中に名を馳せたマーゴ・フォンティンの存在があった。

彼女の天分と存在は、ロシアバレエの本場の教育を受けたネッタのプライドをズタズタにした。イギリスのバレエをどこか見下していたネッタの鼻はこの天才によって見事にへし折られた。
やがてネッタはバレエの情熱を次第に失って行き、レッスンをサボッて遊び仲間たちと遊び歩くようになった。
幸いというか、元来身体能力もセンスも悪くなく、要領もいいネッタは、試験や公演はソツなくこなしていたが、少女の頃夢に描いたヨーロッパ中の舞台にプリマとして立つという目標は到底手の届かない所に行ってしまっていた。いや、そんな夢を抱いていた事すら、彼女は記憶から追いやろうと、ひたすらにバカをやって無為に遊び歩いていたのかもしれない。

そんな姪を、伯母は最初こそは叱り、時には頰を張って、バレエに真摯に向き合うよう注意したが、頑なに聞き入れず、ますます荒れる姪に、最後は諦めて「バレエから逃げたいのだったら、それで構わない。だけどせめて…自分を大事になさい。必ず日付が変わるまでには家に帰って来なさい。私は待っているから」と、そのややきつめの美貌を曇らせて、姪に告げた。その伯母の悲しそうな顔に、漸くネッタは夜を徹したパーティはやめるようになったが(ネッタはこの厳しいけれど愛情に溢れた伯母が大好きだったのだ)、それでも相変わらずバレエにも打ち込めずフラフラした青春をここ大都会ロンドンで送っていたのだった。