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機動戦士ガンダムRSD 第24話 届かぬ思い

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ミサキ中尉とアイリス曹長の目の前には、観光コロニーのガイド本が広がっていた。
「あの、地球の真ん中って南極?
それとも北極?」
 アイリス曹長が唐突にミサキ中尉に質問した。
「そうなのかもしれないわね。
私の世界の真ん中は、アイリスなんだけどね」
 ミサキ中尉は、真顔で答えた。
アイリス曹長は、照れた。
(とか3人なら冗談に聞こえるかもしれないけど2人だとマジっぽく聞こえるな)
 ミサキ中尉は、自らも少々照れながら心の中で考えた。
「私、そろそろ帰るっていうから引き留める下りを一通りやってね」
 ミサキ中尉が突然そんなことを言った。
「なんなんですか、それ」
 アイリス曹長は、困惑した。
2人は、しゃべろうとしてかぶってしまった。
2人は、気まずくなった。
「かぶってしまいました。
すみません」
 アイリス曹長が謝った。

 ミサキ中尉は、帰り際にコーラを自販機で買い飲みながら帰った。

「ただいま」
 ミサキ中尉がロンデニオン訪問からアイリス曹長の部屋に帰ってきた。
目的は、教育と訓練であったがほぼ観光がメインだった。
「おかえり」
 アイリス曹長とケイト中尉は、ミサキ中尉を迎えた。
「英国バージョンだ」
 ケイト中尉は、ミサキ中尉が英国染まりになったと感じた。
「でも食事も旧イギリスを受け継いでて困ったよ」
 ミサキ中尉が食事について愚痴った。
「そんなにまずいの?」
 アイリス曹長が半信半疑に質問した。
「そうなの。
まずかった」
 ミサキ中尉が必死に訴え部屋に入った。
「ミサキ中尉、また髪の毛が痛んでませんか?」
 その時アイリス曹長がミサキ中尉の髪の毛が痛んでいるのに気づいた。
「なんかほかのコロニーに行くとこうなっちゃうの」
 ミサキ中尉も原因不明のこの症状に悩んでいた。
「もったいないですよ、きれいなのに」
 アイリス曹長の言葉にミサキ中尉は、うれしくなった。
「おやおや良いですな、いちゃいちゃと」
 ケイト中尉は、2人をからかった。
2人は、振り返りケイト中尉を見た。
「お金出すからしばらくやっててくれない?」
 ケイト中尉が無茶なお願いをした。
「うるさい。
見ないでください」
 アイリス曹長は、ケイト中尉の両眼を覆いたかった。
「はい、お土産。
変なお菓子」
 ミサキ中尉は、2人にお土産を渡した。
「気が利いてるね」
「ありがとうございます」
 2人は、ミサキ中尉に礼を言った。
「重い」
 お土産は、割と重かった。
「どうだった?
ロンデニオンは?」
 ケイト中尉がロンデニオン訪問の感想を聞いた。
「楽しかったよ」
 ミサキ中尉は、幸せそうに答えた。

                                      ※

 スティング少尉とアウル少尉の二人は、ガーティー・ルーの娯楽部屋でバスケットボールをしていた。
アウルのオフェンスをスティングがディフェンスしていたがアウルがスティングのディフェンスをうまく抜けてゴールを決めた。
 夕刻スエズ基地では、連合オーブの同盟艦隊が発進準備の最終調整に入っていた。
「僕は、過去の失敗にねちねちといつまでも言う男ではない。
でも失敗にそういつまでも寛大なわけでもない」
 ジブリールは、ネオ大佐と話していた。
「はっ」
 ネオ大佐は、円柱の細長い水槽に入った小魚の正面ガラスをたたきながら聞いていた。
「人材や機材の損失も僕もデュランダル大統領も仕方ないと思っている。
戦闘となれば皆必死だ。
誰かが犠牲になるのは、必須だ。
それをいちいち責めていては、指揮官は過度なストレスで体調を壊してしまう。
でもね目的は、達せられなければならない。
すべての命令は、必要だから出ているのだよ。
遊びでやっているわけでは、ない」
 ジブリールは、命令一つ一つの重要性を訴えた。
「ええ、そのことは十分に」
 それは、ネオ大佐も承知していた。
「わかっているならさっさとやってほしいね。
言われたとおりのことを。
でないとこっちの計画も狂っちゃうから」
 ネオ大佐は、真摯に聞いていた。
「あの艦隊旗艦は、いまや正義の味方のコロニー艦として反連合部隊のヒーローに祭られている。
まったくナチュラルの船だというのに。
それもやつらが勝ち続けるからだ」
 ジブリールは、コーディネイターがナチュラルの艦隊をたたえている現状を無視できなかった。
「そうですね」
 勝者が正義になってしまう。
それが世の中だ。
「民衆は、おろかだよ。
先のことなどまったく考えずに今自分たちに都合がいいものばかりを歓迎する」
 ジブリールは、民衆のバカさに反吐が出そうだった。
「民衆は、温まりやすいからですよ」
  ネオ大佐は、的確に理由を言った。
「なぜあんな原人どもを受け入れる?
あのナチュラルが我らコーディネーターより劣っているにもかかわらず。
世界は、我らコーディネーターが統括しなければならないのに。
だからあの艦隊は困るんだよ、危険なんだよ。
これ以上のさばれては。
今度こそ討ってよね、ネオ・ロアノーク大佐。
そのための君たちなんだから」
 ジブリールは、念を押して命じた。
「ええ。
肝に銘じて」
 そこで通信が切れた。

                                       ※

 η艦隊のパイロットたちは、朝勉強会に出席していた。
「おはようございます」
 その時アイリス曹長とケイト中尉にアル・ギザの整備兵があいさつした。
「おはよう」
 アイリス曹長がすぐにあいさつした。
「おはよう」
 ケイト中尉がやや遅れてあいさつした。
「ミサキ中尉は、どうされたんですか?」
 整備兵がミサキ中尉がいないことに気づいた。
「今日は、どこかに行ってしまって」
 アイリス曹長が状況を説明した。
「なんですか、それ。
では、また」
 整備兵は、笑いながら言うとその場を去った。
「どうしたんですか?」
 アイリス曹長は、ケイト中尉が困ってるのに気づいた。
「今の誰?」
 ケイト中尉は、必死に思い出そうとしながら質問した。
「わかってなかったんですか。
アル・ギザの整備兵です」
 アイリス曹長があきれつつ説明した。
「人がいっぱいで覚えられないよ」
 ケイト中尉は、ドゴス・ギアの乗組員を覚えるだけで手一杯だった。
「わかりますが堂々とそれを公言しないでください」
 アイリス曹長は、ケイト中尉に発言には注意するよう言った。
ケイト中尉は、苦笑した。
「おはようございます」
 そこに眼鏡をかけたミサキ中尉が現れた。
しかしケイト中尉は、誰か判別できていない様子だった。
「おいおい」
 アイリス曹長が思わず突っ込んだ。
するとミサキ中尉は、眼鏡をはずした。
「ミサキ中尉だ」
 ケイト中尉は、嬉しそうにミサキ中尉の手を取った。
「さすがにわざとですよね?」
 アイリス曹長は、わざとだと信じたかった。
 3人は廊下を歩いていた。
「なんで眼鏡なんて持ってきたんですか?」
 アイリス曹長がミサキ中尉に質問した。
「もしもの時のために」
 ミサキ中尉が意味深に答えた。
「もしも?」
 ケイト中尉が食いついた。
「でもめったにかけませんよね?」