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MEMORY 死神代行篇

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 しつこく体勢を立て直した虚に、一護が斬魄刀を突き立てる。巨大な百足の巨体が伸び上がり仰け反る。改造魂魄が駆け出し屋上の床に崩れ落ちそうになった虚を蹴り上げる。反動で一護の体が落下しそうになるのを、一護が慌てて腕を掴んで引き留める。
 改造魂魄が守ったのは、何故か屋上に隊列を為している蟻の行列だった。

「俺は絶対、命を奪わねぇ。そう決めてるんだ。」
「それがお前の意思、か?」

 一護の確認に、改造魂魄は、中断された話の続きだと気付いてこっくり頷いた。

「や~れやれ。やーっと見つけたと思ったら、ボロボロじゃないッスか。」

 浦原の声に、一護は『そういえばこの人が粗悪品として回収に掛かってたんだった』と思い出す。
 そのままひょいっと杖を伸ばして、改造魂魄を抜き取ろうとするのを、一護は寸でで杖を掴んで止める。

「黒崎サン?」
「こいつの回収は不要だよ、浦原さん。」
「いや、でも……。」
「体を持ち逃げするようなら、浦原さんに回収して貰おうと思ってたけど、どうやらその心配は要らないみたいだしね。」

 あっさりと言ってのける一護に、浦原は困惑を浮かべる。

「そいつは改造魂魄ッスよ。」
「だから?」
「破棄する決まり……。」
「そんな決まり事を作ったのは、中央四十六室の保身の為だ。」
「……それを言っちゃあ、身も蓋もないッスよ。」

 低くなる浦原の声に、ルキアは浦原も一護の言葉に反対意見を持っていない事に気付く。

「面倒な事になったらアタシ達トンずらするッスよ?」
「普通の義魂丸に、私の体を預ける事が出来るとでも?」

 表情は変わらないが、瞳に笑いを滲ませた一護に、浦原は言葉に詰まる。
 確かに普通の義魂丸では、特殊な一護の存在を技術開発局に報告して仕舞いかねない、その点、脛に傷持つ身である改造魂魄ならその心配はあり得ない。

「それも計算の内、ッスか。」
「計算がないといえば嘘だけど、私がこいつを気に入ったのはそんな理由じゃないよ。」
「でしたらどんな理由ッスか?」

 一護の強い光を宿した瞳が柔らかく細められる。

「どんな命も奪わない。そう決めていると言ったからね。実際体現して見せたし。」

 その為に私の体を危険に晒したのは戴けないけど。
 ぼそりと付け加えて苦笑した一護は、軽い気持ちでもお気楽に考えた結果でもない覚悟を示している。

「……知らないッスよ。この一件には関与しないッスからね。」

 溜息を吐いて言った浦原に、一護はふわりと笑う。
 浦原は肩を落として引き上げていった。

「本当に良かったのか、一護?」
「ルキアに目を瞑って貰う事になるけど、些細な事として流されるだろうし。」
「何?」
「ん~ん。それより、傷、治して貰える? こいつを測る為とはいえ、こんな傷作られるほど弱いと思わなかった。」
「んだとぉ⁉」

 弱いという言葉に反応する改造魂魄に、一護が冷たい視線を向ける。

「反論の余地があるとでも?」

 ぐっと詰まる改造魂魄に、一護は溜息を吐いた。ルキアが鬼道で一護の体の傷を治しながら聞いていると、一護は初めからぬいぐるみに改造魂魄を入れておく心算だったようだ。

「普段はぬいぐるみに入っとけよ。見つからなければ自分で動き回る自由くらいはやる。」
「一護、甘やかし過ぎではないのか?」
「自由は勝手とは違うからな。自分で起こした事で生じる事態の責任は取れよ? 責任を取れない事態を引き起こすような真似はするな。」

 ルキアは、先ほどの考えが違っていた事を知る。一護は改造魂魄を甘やかすどころか、かなり厳しい事を言ってのけた。

「そういえばぬいぐるみはどうした? お前が自由に動き回る為にはあれしかないぞ?」
「へ? 何で?」
「ソウル・キャンディーとして容器から初めに入れたのがぬいぐるみだったからな。次に私の体。戦闘用の改造魂魄である以上、多くの体を渡り歩けるようには作られていないと思うぞ?」

 その言葉に改造魂魄が一護の体で青くなる。

「あの後、傍にあったバッグに入れて教室に持って行こうとしたら、取り上げられて捨てられたんで、そいつを蹴り付けた。」
「鍵根を蹴り付けたのはそういう理由か。」

 一護は溜息を吐くと、ルキアの腰を抱えて屋上から飛び降りる。改造魂魄が後に続く。
 身長差に物を言わせて一護はルキアを縦抱きしていたので、ルキアのスカートは捲れなかったが、改造魂魄は気を使わなかったので、着地の際に派手にスカートが捲れてしまう。
 一護は改造魂魄が姿勢を戻すと同時に体に戻り、吐き出した改造魂魄を手に受ける。

「ルキア。」
「なんだ?」
「ぬいぐるみを取り戻したら、みんなの記憶置換を頼む。」
「先の方が良いのではないか?」
「順番を入れ替えると、ぬいぐるみの行方が判らなくなるかも知れないだろ。」
「なるほど。」

 ぬいぐるみを取り戻す事を優先する一護に、ルキアは唇を綻ばせる。
 厳しい事を言いながら、一護は周囲の者の為に動く。自分の事はあまり顧みない。
 改造魂魄が一護の体で傷を負った事に文句を言ったのも、痛いからというよりは、傷を負って帰宅すると家族、特に妹達がが心配するからだ。
 いくら記憶置換を行うとはいえ、ぬいぐるみを見つける事を優先するのは改造魂魄を一つの人格と認めて自由に動ける状態を確保してやる為だ。義魂丸として扱うなら、ソウル・キャンディのケースに戻してしまえば良いのだから。


作品名:MEMORY 死神代行篇 作家名:亜梨沙