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MEMORY 死神代行篇

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 記憶の中では、この事件のすぐ後から、石田雨竜が死神に対する対抗心を筋違いの一護にぶつけてくるという事態が始まり、結果、ルキアの意場所がばれて四十六室に成りすました藍染の命令で連れ戻される事態になった。
 つらつらと記憶を辿っていたが、一護はグランド・フィッシャーと対峙した時に思い出した事実を、浦原に告げておくべきかどうかを迷っている。愚図愚図している暇はない。石田雨竜の復讐心を止めるには話をするしかないが、今の段階では聞く耳を持たないだろう。かといって、この儘浦原に告げなければ、ルキアを迎えに来る隊長格に霊力を封じられかねない。ルキアから貰った力で死神をしているならそれも一つの方法だが、生憎と現在の一護の力は間違いなく一護自身の力だ。封じられたら死神の力を完全に失ってしまう。
 石田雨竜に絡まれて虚を大量に退治しなければならず、走り回って大変な思いをした記憶があった。浦原はルキアを助けに走る一護に手を貸していたが、それは一護の実力を一護自身に思い知らせる為と、朽木白哉に鎖結と魂魄を斬られて霊力を失い、その力を取り戻す為に協力という恩を売られ利用された事に繋がる。
 思い出して唸る一護を不審に思い、ルキアが声を掛けると、一護はルキアの顔を見て溜息を吐いた。

「試験勉強があるから、暫く浦原さんとこ寄って帰るからね。」
「何故、浦原の所など……。」
「あの人知識欲が強いんだろうな。高校レベルどころか一流大学卒業並みの知識持ってるから、勉強理解らない時にはお願いしてる。」
「現世の勉強など、死神には必要ない……。」
「だろうね。」

 肩を竦めてルキアの意見は聞き流す。

「浦原さんとこへ行く事に対する文句は、私の試験勉強を見る事が出来たら付けても良いよ?」
「ぐっ……。」

 一護は学校帰りに鞄を持った儘、制服で浦原商店まで歩いた。
 歩調の速い一護に、ルキアは息を切らせて漸くの思いで付いて行く。

「い、一護、貴様……歩くのが……随分と…速いのだな。」
「毎朝走ってるから、体力くらいある。」

 不愛想な一護の返事にもめげたりしないくらいには、ルキアは一護に慣れた。一護に附いて来ようと後ろを歩いている啓吾と水色は、ルキアよりも息を切らせて附いて来る。
 浦原商店に着いた頃には、啓吾と水色は息を切らせて喋る事も出来なくなっているのを尻目に、一護はルキアを伴ってさっさと店に入って行く。
 ルキアは一緒に行動してはいるものの、勉強ではまるで付いていけない。それでも浦原に質問し説明を受け試験勉強をしている傍ら、一護がルキアに理解るように問題の解き方を教えてやっている。
 水色と啓吾は宿題をやるだけで精一杯になってしまうので、浦原に質問するまでのレベルに至っていない。

「こんにちは~。」
「イラッシャ~イ。おや、朽木サンも御一緒ッスか。」

 珍しく店番に出ている浦原が出迎える。

「邪魔をするぞ、浦原。」
「悪い、浦原さん。啓吾と水色も附いて来た。」
「構わないッスよ。」

 片手で浦原を拝む一護に浦原は苦笑する。
 浦原の先導で一護とルキアは奥へ通されるが、続こうとした啓吾と水色はテッサイが店の客として扱い奥へ行かせない。

「いっちご~。」
「僕達、一緒じゃ駄目なのかな?」
「いけません。」

 一護に話し掛けた水色に応えたのもテッサイで、障子を閉めた事で本当に一護の耳には水色の声も啓吾の声も届かなくなっている。

「良いのか?」
「良い。金魚の糞じゃあるまいし、何時でも何処でも附いて来るなんて真似、毎回毎回許せるか。」

 問い掛けるルキアに応えて、一護は溜息を吐いて鞄を置く。
 雨がテッサイが用意しておいた茶を運んでくる。

「ありがとな、雨。」
「あい。」

 雨は眉を寄せた儘、だがにっこり笑って大きく頷く。
 一護は躊躇い無くお茶を口にする。ルキアは一護の反応を見てから口を付ける。
 一護がこうして学校帰りに寄る時は、浦原に重要な話がある時だ。
 真剣に相手をするのが礼儀なのだろうが、面倒な内容の可能性が高い事も事実だ。
 浦原は制服で正座する一護をつくづく眺めて口を開く。

「黒崎サン、漸く制服見せてくれたッスねぇ。」
「入学式の帰りに寄ったのに、浦原さん寝てたし。」
「だからって、何も衣替えしていい加減経つまで見せてくれないなんて殺生ッスよ。中間考査の時もうちに通っていたのに、ジャージ姿で制服姿見せてくれなかったじゃないッスか。」
「生足がどうのなんて言うから、余計見せたくなくなったんだ。」

 一護がそっぽを向いて言う。

「え~。良いじゃないッスか。黒崎サンの脚、綺麗なんスから。」
「細いばっかりで、ちっとも綺麗じゃないし。」
「…そんな事ないッスよ。余分な脂肪も贅肉も着いてなくて、薄いけど滑らかに筋肉が載って綺麗ッスよ。」

 浦原にとっては事実を口にしただけだ。
 浦原のその意識は判るので、浦原の綺麗という言葉を誉め言葉とは受け取らない。
 一護は目を閉じて、周囲にある霊絡を視覚化する。

「一護っ⁉」
「黒崎サン?」

 驚くルキアと不思議そうな浦原に、目を開けた一護が視線を向ける。
 視覚化された霊絡の中には、店にいる啓吾と水色の霊絡も混じっている。

「微弱な霊と違って、啓吾も水色も私の霊圧の影響受けてるな。入学式で顔を合わせた頃より霊力上がってる。」
「判るんスか?」
「何とか、ね。霊絡の太さと厚みに出るって気が付いたからさ。でも、視覚化しないとそれもなぁ。」

 情けなさそうに眉尻を下げる一護に、浦原は苦笑する。
 霊絡を視覚化する事自体、高位の席官でなければ出来ない事だというのに、一護は随分と簡単にそれをしてのけている自覚が薄いように見える。

「姫とチャドも最近霊絡が太くなってきているしなぁ。」

 溜息を吐く一護に、浦原が帽子の陰で目を光らせた事などルキアは知る由もなく、一護は浦原が何を目論むか知りながら、敢えて情報を伝える。

「小島サンと浅野サンを店で足止めさせたのって、コレだけが理由じゃないッスよね?」

 浦原が一護が視覚化させて弄ぶ霊絡を同じように指に絡めながら訊くと、一護は唇だけを笑みの形に歪める。

「勿論。」

 一護は雨が用意してくれたお茶で唇を湿らせながら少し思案して口を開いた。

「何から話したら良いんだか判んないんだけど、結論から言うと、思い出した。」
「何をッスか?」

 一護が淡々と告げると、浦原も淡々と訊き返す。

「ん~。私が死神になった時の事。」
「「!」」

 一護の言葉に、ルキアは勿論、浦原すら驚いて動きを停める。
 二人の反応に頓着する事なく、一護は話を続ける。

「この間、グランド・フィッシャーと対峙した時に思い出したんだ。」

 脳裏でスパークした景色が、あの日の記憶だと認識出来たのは少し時間が経ってからだった。
作品名:MEMORY 死神代行篇 作家名:亜梨沙