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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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「あなたはあなた、校長は校長です。リズ先生が校長と同じ威厳を持つ必要などありません。校長が持っていてリズ先生に足りないものはたくさんあります。逆にリズ先生が持っていて校長が持っていないものもたくさんあるのです。あなたはあなたらしく校長の役目を全うすればよいのです」
「教頭先生……ありがとうございます」
 教頭の言葉はリズの胸に深く響いた。リズはこの時に教頭が生徒だけではなく、魔法学校の全てに考えを巡らせ、正しい判断をしているのだと知り、教頭に対する尊敬がより深くなった。



 リコが湯気と良い匂いを漂わせるチーズと卵のリゾットにスプーンですくって、それをみらいの口に運んだ。
「はい、あーんして」
「そんなことしてもらわなくても大丈夫だよ。一人で食べられるから」
「ダメよ! 病み上がりなんだから安静にしてなくちゃ」
「リコのいうとおりモフ」
 リコが本気で心配しているし、モフルンもそう言うので、みらいはあーんと口を開けて卵リゾットを食べさせてもらった。
「おいしいっ! すごくおいしいよこのリゾット!」
「ペガサスのミルクのチーズとフェニックスの卵で作った特製リゾットよ」
「フェニックスの卵!? それはワクワクもんだぁ!」
「ナシマホウ界のフェニックスと違って燃えたりはしていないけどね。体全体が燃えているように赤い大きな鳥なの」
「すごいなぁフェニックス、見てみたいなぁ」
 リコは久しぶりにみらいのワクワクもんを聞いて安心することができた。みらいの食事が終わる頃になって、リズが顔を出した。
「調子はどう、みらいさん」
 リコが急に立ち上がって背筋を伸ばし、リズに向かっていやに丁重に頭を下げる。
「お勤めご苦労様です、校長代理!」
「え? え? えっ!?」
 リコのおふざけに、みらいがびっくりしてリコとリズの何度もいったりきたりして見た。リズは思わず苦笑いしてしまった。それからみらいは詳しい話を聞いて大声を上げた。
「リズ先生が校長先生!!?」
「ほんの短い間だけの代理よ」
「それでもすごいよ! リズ先生が校長先生の代理なんて! でも、あれ? じゃあ校長先生は今どうしてるの?」
「その事なんだけど、二人にお話があるのよ。そのままでいいから聞いてね」
 みらいとリコが黙ってリズの顔を見上げる。みらいがモフルンを抱く腕に少しだけ力が入った。
「心配はいらないのだけれど、校長先生は少しお疲れになって休んでいます。それで、校長先生があなたたちとお話ししたいそうよ。落ち着いてからでいいから、後で校長先生に会いにいって下さい」
 みらいはそう言うリズの姿を見て感動していた。リズの姿は以前とは明らかに違っていた。以前の理知的な美しさに加えて、魔法学校を背負っている者の大きさと風格があった。



 ラナはベッドでぐでっとうつ伏せに寝ている。小柄な体の全てからだらしのなさをにじませていた。
「あ〜う〜、お腹すいたよぅ。アップルパン〜、お肉〜、リンゴジュース〜、美味しいお菓子も〜」
「はいはい、わかったわよ!」
 ラナは起きてからというもの、小百合が優しくしてくれるので、わがままいい放題だった。小百合にはラナをひどい目に合わせた責任があるので、しばらくは我慢しようと思っていた。
「まったく、調子に乗ってるわね……」
 魔法の杖を振って料理しながら言う小百合の声がラナの耳に届く。
「あう〜、からだいたいよ〜」
 ラナがさらに調子にのって言うと、小百合が魔法で操っていたフライパンやフライ返しが浮力を失って大きな音をたてて落ちた。ラナがびっくりして見ると、小百合が血相を変えて駆け寄ってきていた。
「大丈夫!? どこが痛いの!? 手当するから痛い場所を教えて!」
 小百合の心配の仕方があんまりすごいので、ラナはまたびっくりしてしまった。
「ご、ごめん、冗談だよ。そんなに心配すると思わなかったの」
「なんだ、驚かせないでよ……」
 ラナは小百合が怒ると思ったので、心底ほっとしているその姿を見てまたまたびっくりした。
「小百合どしたの? なんでそんなに心配してるの?」
「何でって、あんた自分に何があったのか覚えてないの?」
「う〜んとね、黒いのと白いのがどーんてきたのは覚えてるよ」
「その後あんたは怪我してずっと眠っていたのよ」
「へ〜え、そうだったんだ」
「何も分からないでわがまま言ってたの?」
「いつもより小百合が優しいから、ラッキーって思ってた」
 それを聞いた小百合は呆れてしまったが、後からラナを思いっきり抱きしめたい気持ちになった。
「あんな事があっても、あんたは何も変わらないのね」
「変わってるよ〜、お腹ペコペコだよ〜」
 ラナが微妙に意味の通らないことを言いだすと、小百合は嬉しくなって笑った。そして、ラナの存在が自分の活力になっていることを肌で感じるのだった。



 リコはみらいを一日休ませてから、次の日に校長に会いにいった。みらいとリコが校長の自室に入った時、校長が老人の姿なので少し驚いた。二人は今までも年老いた校長を見たことはあるが、それはいつも魔法を使った直後の事であり、それも苦い薬膳茶を飲めばすぐに元の若い姿に戻るのだ。それが今は、老人であるのが当たり前というように最初からその姿だった。
「おじいさんになってるモフ」
 みらいに抱かれているモフルンが言うと、二人を心配させまいと微笑する。
「少々無理をしすぎてな。なかなか元の姿に戻らんのだ」
 校長はベッドの上で半身起きた状態で言った。その手には湯飲みがあって、薬膳茶を一口すすった。リコが校長にいった。
「校長先生、なにがあったんですか?」
「多くは語るまい。知らない方がいい事もあるのだ。ただ、君たちにこれだけは伝えておきたかった」
 そういう校長の緑の瞳はどこか悲し気だった。彼はしばらく黙っていて、思いを馳せていた。
「近いうちに宵の魔法つかいと魔法界の歴史との関りが明かされるだろう。それは君たちを惑わせ、悩ませるものかもしれぬ。それでも君たちは正しい道を選択すると、わしは信じている。もし道が分からなくなった時は、君たちが正直に正しいと思うことをしたまえ」
「校長先生、わかりました!」
 みらいが元気よく言うと、校長は満足そうに頷いた。
「言いたいことはそれだけじゃ。わしも元に戻り次第君たちに協力しよう」




 リコとみらいが校長と話をしている頃、リズは校長室で事務的な仕事をこなしていた。
「キュアップ・ラパパ、サイン」
 リズの魔法で十数枚の書類に羽ペンが次々とサインを書き込んでいく。その作業が終わった時に、手元に置いてある水晶に紫の頭髪で片眼鏡の男の顔が現れた。彼の鼻の下と顎には髭があり、整った顔立ちの中に精悍さもあり、中年の男の魅力を存分に発揮していた。
「校長、早急にお話ししたいことがあります」
「お父様?」
「なっ、リズ!? どうしてお前がそこにいるんだ!?」
 水晶に映ったのはリズとリコの父親のリアンだった。彼は考古学者で、今は魔法界に突然現れた遺跡を調査していた。
「校長先生が少し体調を崩されて、校長先生の代理を頼まれたんです」
「な、なにぃっ!!?」