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女体化ジルヴェスターの災難~養父と母と娘~

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誰も知らないカーオサイファの加護



 私はカーオサイファの云々だけは隠し、夢で別世界のユルゲンシュミットで過ごし、そちらのローゼマインとジルヴェスターがかなり厳しい環境で生きていたので、連れて還りたいと思ってしまい、夢から目覚めればこうなった、と説明している。するしかなかった。
 そして事が事だけに、ほぼ全領地に知られている訳だが…。

 「失礼ながら、アウブ・アレキサンドリアとの魔力差が増えたのでしたら、エントリンドゥーゲの祝福は望めないのでは?」
(お前でも今のロゼマと魔力差有り過ぎや。子供出来へんよな?)
 ダンゲルフェルガーの者でさえ、今はドレッファングーアの加護無しと判断していると言うのに…。
(空気を読めないダンケルでも気使ってるのにお前何やねん!!)
「アレキサンドリアはフェルディナンドのゲドゥルリーヒだと分かる者には分かるのですから、声高に主張されては如何です?」
(アレキ牛耳っとるのは知ってるわ、お前がアウブやれよ!!)
 しかもシュラートラウムの加護と祝福を重ねられ、随分と都合の良い夢を見せられている様だ。
(自分の都合と理想しか見えてねえな。)
「女神の化身は…、ゲドゥルリーヒ以外必要としない、メスティオノーラ達を要らない存在と見なす、エーヴィリーベの元へ行くべきなのです。」
(ロゼマとの子とか必要ない私が夫になった方が良いに決まってるだろ。)
 それが自分だと言いたいのか。
(ふざけんな!!!!!!)
「そしてフェルディナンドは魔力が釣り合う女性をお迎えになるべきでしょう。これからのアレキサンドリアの為に。」
(アダルジーザってバラしたるから、魔力釣り合っとるジルヴェスターと乳繰り合えや。)

 ドガアッ!!!!!!!!!!

 その音に今までのやり取りに気付いていない者までが振り返る。

 「アウブ・コリンツダウム。王命を出来る限り尊重すると女神の化身はお決めになられ、現・王がそれを受け入れられた。其方はそれに異を唱えた。反逆の意思があると受け取らせても良いか?」
(ふざけんなよ兄貴!!!! 何アホな事言ってんねんっ!!!!!!)
「急にお近づきになられ、私達に挨拶も無いとは血筋の甘えでしょうか。困った事。」
(アンタ何様よっ!!??)

 どうやら王夫婦の怒りが最高値に達した様だ。
「アナ、がっ!!」
 押さえ付ける中央の護衛の力が強まった様だ。私は光の帯で口許を覆うと、理解していない者にも伝わる様に、声を通らせる。

 「アウブ・コリンツダウム。貴方は私に女性になったジルヴェスターと冬を迎えろと仰るのですか? 良き御趣味で。」
 
 身の程知らずの元王子は、私とジルヴェスターには血の繋がりが無いだろう、ランツェナーヴェの血を引いているだろう、と脅した訳だ。吹聴されたくなければ、ローゼマインを渡せと。
 確かに私とローゼマインは最早、子供は望めない。婚姻に魔力の釣り合いは関係無くなってしまったのだ。ならばローゼマインを妻に出来ると考えたのか。
 そして魔力量が増えたジルヴェスターとなら子を作れるのだから、そうしろと。
 エーレンフェストは今以上、領主候補生を増やす必要は無いだろうと。その勝手な言い分に、自身の弟夫婦の怒りを買った訳だ。
 呆然としている様子から、何の予測もしていなかったのだと分かる。彼の護衛含む側近が黙って頭を下げている。
 そして私の言った言葉で、事情を知らない他領地の者が絶句してから、蔑みの視線を浴びせている。
 更に細かなやり取りを見ていないローゼマインにとって、ジルヴェスターと私が冬を迎えるのは、ゲオルギールとの事もあり、許せる事では無いのだろう。…事情を訊けば、より怒り狂うだろう。私の為に。