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逆行物語 第五部~フェルディナンド~

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再教育の思惑(1)



 ドレッファングーアの糸紡ぎは人の意思等聞かず行われる。ジルヴェスターの長子、ヴィルフリートの洗礼式も終わり、御披露目の時期が来た。


 逃げ出した、らしい。


 ヴィルフリートの教育は全くされていなかった。基本文字すら書けず、フェシュピールの音源も押さえられず……………、呆れて物が言えぬ。
 ヴェローニカはかなり甘やかしていたらしい。この事態はジルヴェスターに許せる事では無かった。ヴィルフリートを次期アウブに決めていた故に、ヴェローニカは怠慢では済まぬ罪に問われる。
 今までは悪事に手を染めても、証拠がなく裁けなかったが、今回は衆目がある。これを軽く扱えば、アウブの尊厳に関わる。
 ヴェローニカは側近達のせいだと言い切ったらしい。自身はジルヴェスターと同じ用に教育した、違うのは側近だと言い切ったのだ。だがそれはジルヴェスターの怒りを煽るだけに終わった。

 …それが狙いか…。

 ヴィルフリートの側近にはエルヴィーラの息子がいる。ヴェローニカ派閥の者もいるが、ヴェローニカに逆らわないだけで、信用している訳ではない。罪を着せて、丸ごと排除してしまえば、不要な者と一緒に、エルヴィーラを失脚させ、第二夫人のトルデリーデを遣い、カルステッドをヴェローニカ派閥へ引き摺り込める。
 だが……、穴が有り過ぎる。如何なる能無しであっても、傀儡にする未来を予定していても、衆目がある中、恥を平気で晒す主等、足を引っ張る存在だ。ヴェローニカに心酔している者は従うだろうが、忠信を持つ者は離れていく。取り合えず従っている者は言うに及ばず。
 ジルヴェスターが母親を支持すれば止まるだろうが、何よりそれが一番無い。ヴェローニカはジルヴェスターを舐め過ぎだ。そしてジルヴェスターがヴェローニカを切れば、彼等はジルヴェスターに着くだろう。
 ヴェローニカの罪は犯罪ではなく、連座に問えるモノではなく、ヴェローニカの派閥から心酔者のみを追放して、それ以外はジルヴェスターの派閥になる。
 …案の定、ジルヴェスターはヴェローニカを白の塔へ投獄、序でにヴェローニカが庇う為、罪に問えなかったベーゼヴァンスも投獄し、心酔者は意義を唱えて来たので、丸ごと捕らえた。連座にしないと言う約束でジルヴェスターはその家族の信用を勝ち取った(トルデリーデのせいで、カルステッドやエルヴィーラに類を及ばさない為だが)。
 その為に辣腕を奮ったのはギーベ・ゲルラッハで、彼は派閥融和の実質的な主導者になる。
 そして私は…、ヴィルフリートの教育者となった。私の還俗はヴィルフリートを教育し終わってから、と決まった。詰まり…、ヴィルフリートは神殿行きが決定していた。事実上の廃嫡である。
 例え、ヴェローニカの被害者であったとしても、ヴェローニカ派の神輿を何もなく、過ごさせる事は出来ない。つまり教育とは、神殿長教育であった。
 投獄に比べれば、まだ自由がある。私の様な者は例外で、通常、神殿は貴族になれない者の集まりな為、皆、貴族の事情に疎い。その組織の一番上になるのだ。神官長に信用出来る者を着けて置けば、何とでもなる。ヴィルフリートに対する情だ。だが…。
「何故、私が其方の言う事を聞かねばならぬ!!! お祖母様が捕らえられたのも、其方のせいだろう!!?」
 未だ現実が見えておらぬ我儘な子供の、ジルヴェスターソックリな容姿に、髪色が浮いて見える。暴れるヴィルフリートに同調する様に、視界がチカチカする。
「お祖母様が仰っていた!!!! 其方は害毒だと!!!!! 父上と母上を騙したのだろうっ!!!!!! このシセイジめっ!!!!!!!」
 立場を全く解っていない。私がこの事を報告すれば、アウブの決定に異議を唱えたと見られ、今度こそ投獄するしかない。
 寧ろ投獄した方が面倒がないと言い切ったギーベ・ゲルラッハに対し、魔力不足の理由を、領地に役立たせる建前を、神殿行きを推したいジルヴェスターに与え、引き継ぎと言う教育を施すと言ったのは私だ。その理由は………、

 「ジルヴェスターの親心も解らぬかっ!!!!!!」

 ジルヴェスターに我が子を見捨てる事が出来ぬからだ。ジルヴェスターは甘い、過ぎる程に。
 だが、情を捨てられぬと嘆くジルヴェスターは、それでもアウブが故に割り切らねばならぬ。
 その苦しみを知らぬヴィルフリートが解った様に、ジルヴェスターを語るのは我慢ならなかった。

 「其方がジルヴェスターを語るな…っ!!!!」

 逃げようとするヴィルフリートを抑え、私は言い切った。
「離せっ!! 離せ~っ!!!!」
 床に倒れた状態でもがくヴィルフリートの体に、体重を掛ける。ユストクスが僅かに目を見開く気配があった。
 喚くヴィルフリートに解りやすく、シュタープで攻撃を放ち、黙らせると体を離す。
 一瞬の固まりの後、逃げ出す背中に叫ぶ。
「与えた課題を行うまでは食事を抜く!!」
 貴族の人間は、そう簡単には飢えて高みに昇らぬ。