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逆行物語 第五部~交差~

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ルッツ視点~現戦~



 「報告書に間違いが無いと言う事か?」
 首を上下にブンブン振ってる。ちらり、と親方達を見ると拳に力を入れていた。
「ではジーク、其方は?」
 ラルフに聞かれた時点で、次は自分だと分かっていたのだろう。
「ザ、ザシャに聞いて下さいっ!」
 逃げの一択だった。ヴィルフリート様は溜め息を吐いた。
「ザシャ、其方は?」
「…商人は悪辣で、そんなの目指したいって言ってる奴は信用出来ないし、一緒に仕事なんか出来ません。」
「共に作業は出来ないと? ルッツの居た環境は妥当か?」
「? はい。」
 おい、絶対ヴィルフリート様の言ってる意味解ってねーだろ。お前らのやった事が全部真実だって、認めたって事だぞ。ラルフと同じで。
「何故、商人が悪辣と判断する?」
「儲けの事ばかりだからです。」
「具体的に頼む。私は商人でも職人でも無いので、それだけでは解らぬ。」
「ぐ、具体的にって…、えっと…、お、俺達職人が作った物を安く買い取って、高い値段で人に売るんだ、じゃない、です!」
「もっと詳しく。それでは曖昧過ぎる。」
「えっと…、」
「もう良いだろ。コイツらはこれ以上説明出来ねえよ。」
 そこまでヴィルフリート様に畳み掛けられて、親父がまた口を挟んだ。
「その様だな。ではディード、其方の話を聞こう。」
 軽く身を引き、ヴィルフリート様は親父に視線を向ける。
「…商人が全て悪辣だとは言えねぇし、職人が全て善人だって言う訳じゃねえ。まともな奴の方が多い。
 …例えば小銅貨1枚で職人の作った物を買い上げたら、小銅貨3~4枚で売って、差額を儲けにする。それがまともな商人だ。
 だがまともじゃない奴は中銅貨以上で売る。俺達職人は大きな数になれば、計算が出来なくなっちまう。自分の作った物の価値が解りづらいんだ。そこを付かれる。俺も、カルラもザシャくらいの時におんなじ目にあった。あの頃は治安も良くなかったからな。
 無い学を経験で何とか補える時期が来たら、まともなフリして騙す商人が出る。契約書って奴で、理不尽な内容を正当化する。口では大銅貨3枚って言って置きながら、契約書には小銅貨3枚で取引するって書いていたり…、文字が読めねえから格好の餌食だ。
 儲けばかりに突っ走って…、人の心を踏みにじる、そんな商人は大抵、同じ様な職人と手を組んでる。
 俺やカルラくらいの年代の奴は、1度は痛い目見てんだよ。だから腐った職人なら判別出来る。けど腐った商人の見分けは難しい。
 生きる世界が変われば、一番大事な時に守ってやれねぇ。
 …確かに最初の仕事場は、ルッツにとって余り良い場所じゃ無かった。けど、あそこに居た奴は俺達と同じ目にあった奴ばかりだ。若い奴も親がそう言う憂き目にあった。当たりがキツいのは当たり前だ。
 そんな場所にいれば、商人なんてなりたくなくなるだろうって思った。望みを持ったまま、職人の仕事を続けて欲しく無かった。
 そこを付かれて騙されたり、誰かを騙したりする様になって欲しくねえ。
 …親が子の生き方が心配するのは当たり前だ。なのに勝手に仕事場を変えて、挙げ句の果て孤児になってまで、商人になるだと? ふざけるな。」