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逆行物語 第六部~エーレンフェストの女達~

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フロレンツィア視点~義弟の婚約者~



 ジルヴェスターからフェルディナンド様がご婚姻を望んでいると聞かされた時、真に驚いたものです。
 フェルディナンド様にその様に想われる女性が現れた事もそうですが、逸早くアンハルトゥングに臨んだ相手がお義母様だと言うのですから。
 私がエーレンフェストに嫁いで直ぐから、お義母様の当たりは随分キツイモノでございました。ジルヴェスターの嫁はアーレンスバッハから選ぶ積もりだったと嫌味を言われたモノです。
 フェルディナンド様と夫が随分仲が良かったものですから、私も親しくしておりましたが、私と同じくお義母様から辛く当たられていると聞いて、同情心と仲間意識が芽生え、本当に好ましく弟と思う様になりました。
 故にフェルディナンド様がお義母様に真っ先に知らせた事が意外過ぎて、驚いたものです。増してはジルヴェスターはお義母様からその話を聞いて、初めて知ったそうです。驚きは私以上だったでしょう。
 当初、お話し合いはお義母様とジルヴェスターだけでしたが、途中から急遽、私も呼ばれ、向かいますとお義母様はおりませんでした。
 ジルヴェスターやジルヴェスターの側近達は只々呆然としておりました。私が何があったのかと眉を潜めますと、フェルディナンド様からお声を掛けられました。
 紹介されたのは確かに女性ですが、洗礼式も済ませていない子供でありました。いえ、洗礼式を迎えたばかりの少女だと訂正します。身食いの為、人より体が小さいそうです。

 …貴方、幼女趣味だったのですか!?

 済んでの処で叫びそうになりました。そしてそれ以上の驚きが放たれたのです。

 お義母様が引退!!??

 目を丸くしながら、私はフェルディナンド様とお義母様が和解された事を詳しく聞かされたのです。
 動揺はありましたが、取り敢えずマインの事を決めなければなりません。フェルディナンド様から聞かされた事を纏め、実際に立ち振舞いを確認すれば、確かに領主候補生として預かるべきであると分かります。
 しかし平民の身食いを領主候補生等、流石に厳しいモノがございます。真実がどうであれ、領主候補生として認めるべきであると認識させるには、平民から取り立てたと知らしめる訳にはいきません。せめてジルヴェスターの血を引いている事にしなければ…。
「イヤだ、其方以外と、等思われたら第二夫人とか押し付けられそうではないか。」
 本当にこの人は…。
「ふむ、その通りだな。私もマイン以外と等、絶対嫌だからな、気持ちは解るぞ、ジルヴェスター。」
 フェルディナンド様、あの、貴方のそれはまさかノロケですか??
「そうかっ!! 解ってくれるのだなっ!! 兄は嬉しいぞっ!!」
 フェルディナンド様が今まで見た事も無い様な柔らかい笑みを浮かべました。その様な表情を引き出したマインに驚くと同時に、エルヴィーラがさぞかし狂喜狂乱するだろうと思いました。
「あの…、私も意見を申し上げて宜しいでしょうか。」
 マインが申し訳無さそうに間に入って来ます。
「うむ、申せ。」
 にこやかに言いながら、ジルヴェスターは不意に屈み、
「シュミルみたいだな。ちょっとぷひ」
 指を伸ばし掛けたのをそっと押さえます。
「貴方?」
 私の声にマインがクスリと笑いました。何故でしょうか、懐かしそうな目をしています。