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グリモア Pararel-Record EP3:通じぬ思い

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「いやぁ、今日もぎょうさん売れたで。
 ありがとうな、麻子ちゃん!」

山生賀 麻子 (さんしょうが まこ)として生活している間ヶ岾翔子が、極道、則兼 省吾(のりかね しょうご)と生活を始めてから、
彼のシノギであるたこ焼き屋の売り上げは上がっていた。
しかし、麻子は不満そうだ。

「それはいいけど……。
 あのお面、何とかならないの?」

「あのな麻子ちゃん。
 せいぜい警察と小競り合いしているワイらと違って、
 顔見せするのはあかんのやろ?」

「でも、さすがにひょっとこのお面は……」

そう、彼女が身に着けているのはひょっとこのお面である。
ひょっとこがたこ焼きを売るシュールさが、評を博していたのだ。

「ワイかて、ホントは素顔で客前に出してやりたいんよ。
 けどなぁ、それが親分からの条件なんや、堪忍してくれや」

省吾は、組長に掛け合った時、難色を示されたそうだ。
そんな危険な人物を置いては置けん、と。
しかし、必死の説得でどうにか生活の面倒を見ることを承諾してもらった。
『素顔は絶対に知られるな』という条件付き、である。

「うちはなぁ、地域社会と生きることを是としてきた代わりに
 小さなシノギしかできず、所帯も狭いんだわ。
 だから警察も、ワイらの存在を見てみぬふりしてくれとる。
 まあ喧嘩はしょっちゅうやがけどな」

麻子はその話を聞き、こう返した。

「いまどき殊勝な心がけなのね、あなたの組って。
 大きくしていく野心とかはないの?」
 
省吾は答えた。
 
「この組はもともと、代々この街を守ってきた自警団の出なんや。
 法に縛られた警察組織では後手になりそうな仕事を、
 ワイらがやって共存してきた。
 確かに、ワイらは社会から外れたヤクザもんやけどな……。
 この街で生きていきたいって思いはカタギの連中と同じなんや。
 この街に生まれてこの街に埋もれる。
 この組には、ワイ含めてそんなちっぽけな連中しかおらん」
 
麻子は、軽くため息をついて返した。
 
「ほんと、任侠ドラマを絵に描いたような組ね、あなた達は。
 いまどき珍しくて、惚れ惚れしそうだわ。」
 
省吾はその答えを聞き、少し調子に乗ったようで、
 
「な?な?見直したろ麻子ちゃん。
 だから、そろそろワイと付き合うぐらいしてくれてもええんやで?」
 
「あら、今ので全部台無しね。
 ……その軽口さえなければ少しはかっこよく見えるのに。」
 
「お?今なんか言うたか?」
 
「いいえ、なにも。」
 
こんな調子で他愛のない日が過ぎていく。
アンダーグラウンドを生きる二人、テロリストと極道の共同生活。
なんとか嗅ぎつけられることもなく、10カ月の期間が流れていた――。

「麻子ちゃん、何しとるん?」

省吾は、麻子が携帯デバイスにかじりつきっぱなしなのを気にして
声をかけた。
すると、麻子から返事が飛んだ。

「あら、レディの携帯をいきなり覗くなんて失礼じゃない?」

省吾は、済まなさそうに謝った。

「あ、ああそりゃ失礼やった。
 ずっとケータイにかじりついてたから、気になっっとったんや」

「ちょっと情報収集よ。
 私の本来の職業、忘れたかしら?」

省吾は、はっと麻子の職業のことを思い出した。

「そういえば、麻子ちゃんは組織から逃げてるテロリストやったな。
 もう長いこと暮らしとったからすっかり忘れとったわ」
 
麻子は、正直に答えることにした。

「……ようやく、安全なルートで所属組織の情報を
 仕入れることができるようになったのよ」

省吾ははっとした顔で、

「おお、そいつはよかったな!
 じゃあ、少し黙っとこか?」

麻子は真顔で言った。

「そうしてくれると助かるわ。
 ……連絡相手の人、どうやら組織へ潜伏していたスパイみたいなの。
 組織に追われるもの、組織を抜ける者。
 利害が一致してなんとか取り付けることができたわ。
 お互い組織の名簿を乗っ取って別の構成員として話しているから。
 今後お互いを知ることもなさそうだけどね」

麻子は、そこから「霧の護り手に大きな動きがありそう」という
情報を仕入れることができ、
また「魔物を強制的に操る方法を探っている」ことも聞いた。

(……魔物を強制的に従わせる、か。
 それは果たして、お父様の考えていた『共生』なのかしら……。
 あの男、そこまでして『共生』することを急いでいるの……?)

麻子は、霧の護り手の動きに若干不安を覚えていた――。

そして3か月後。

「――私立グリモワール学園の生徒達の活躍によって、
 長きにわたり魔物に支配されていた北海道が
 ついに奪還されました」
 
二人はテレビをつけ、ニュースを眺めていた。
このニュースが舞い込んできたとき、省吾は言った。

「すっげぇなあ、魔法使いって。
 しかも、ほんまべっぴんはんばっかやなー!」

麻子は、むすっとした顔をしてこう返した。

「出会った時も思ったけど、案外年下の子が好きなのね、あなた。
 ……ロリコン?」

省吾は、慌てて否定した。

「ロ、ロリコンちゃうわ!
 女子高生ぐらいの子やったら生物的には健全やろ!」

麻子は、たこ焼きを一つまみすると、

「生物的にはオッケーでも社会的にはアウトよねー」

と呟き、北海道を追いやられた魔物のことを考えていた。

「ときに、省吾さんに聞きたいんだけど」

ふいの質問に、省吾はしかめ面をした。

「なんや?急にかしこまった顔をして
 ついにワイと結婚してくれるんか?」

麻子は、呆れた顔をし、

「あなたのような変態ロリコン野郎と誰がしますか。
 私が聞きたいのは、霧の魔物についてよ」

省吾は、首をかしげた。

「霧の魔物って、よく人間に悪さしてるアレやろ?
 それがどないしたんか?」

麻子は、自分が共生派の人間であることを打ち明けることにした。

「北海道のニュース、見たでしょ?
 あそこだけは、長い間霧の魔物にとって楽園だったといってもいいわ。
 ……実はね、私は『霧の護り手』と呼ばれるテロリストなのよ」

省吾は、驚いた顔をして言った

「『霧の護り手』言うたら、世界4大テロリストの超危険団体やないか!
 麻子ちゃん、そんなとこの構成員だったんか!?」

麻子は、ひと謝りして言った。

「隠していてごめんなさい。
 名前を出すと、匿ってもらえないと思って。
 そして省吾さん、『霧の護り手』としてあなたに問うわ。
 あそこから追い出された魔物達……かわいそうだと思わない?」

省吾は、急に明かされた麻子の事実に驚きを隠せなかった。

「ねえ、あなたはどう思う?
 人間と魔物……。いずれは仲良く暮らす事ってできると思う?」

省吾は、頭を悩ませながら口を開いた。

「麻子ちゃんが『霧の護り手』だっていうのはわかったけど、
 ワイにはようわからへんな。
 襲ってきたのはあっちや。なら、降りかかる火の粉は
 払っていかなきゃならん。
 ちゃうか?」

麻子は、答えを聞いてしょんぼりした。

「そう……やっぱり、あなたにも分からないわね。
 私は、人間が魔物を拒み続けるから襲ってくると思うのよ」
 
省吾は言った。