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ただし少女はレベル0.09【1.3】九日後

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まさか私の神様は龍より強いのだろうか。
そういえば、そもそも龍は犬に吼えられて左手を落としたのだ。
イヌ科は苦手とか。
龍と狐はしばし睨み合っていたが、視線をそらせたのは龍の方だった。
すごい。
さすが私の神様。


「多くは望むまい」
龍はため息をついた。
袂から何かを取り出して、私に差し出す。
それは、あの日の赤い糸だった。
「肌身離さず身につけておれ」
「どうなるの」
「これもまた余である。永劫に共に在れる」
なんだか話が元に戻ってきた。
だまされたような気がするんだけど、これは受け取ってもいいんだろうか。
史郎坊の顔色を伺う。
「あの、どうしよう」
史郎坊は渋い顔でため息をついた。
「…仕方がない。携帯のストラップにでも付けておけばよいじゃろう」
いや、これご神体では。
そんな扱いでいいの?
「龍も蛇蝎と同じく執念深い。ここが落としどころじゃの」

許しを得て、おそるおそる糸を受け取った。
「かならず来い」
龍は笑い声を残して消えた。
同時に雨が止む。



「なんだ、もう終わったのか」
双頭の大蛇にのって、市子が現れた。
「いっちゃん来てくれてありがとう」
「つまらん」
暴れ損なって、がっかりしている。
よかった。
市子が来る前に話が纏まって本当によかった。

「どうしよういっちゃん。私、巫女になったんだって。水垢離とかしなきゃいけないのかな」
私は市子に糸を差し出した。
「…なるほど龍か。いっそ斬ってしまえば、せいせいするぞ」
だから市子には会わせたくなかったのだ。
「だめ、こっちも私の神様だから」
私は急いで糸をバッグにつっこんだ。

落胆した市子がみずちに乗って帰っていく。
助六は史郎坊に帰りの電車賃を渡してから、市子を追っていった。

「…電車で帰るしかないの?」
「儂の神通力では無理じゃの。単体ならよいが、人を連れて、この距離は」
「ええー。じゃあみずち君は」
「常人には乗れん」
私は気が遠くなった。

史郎坊が私の濡れた髪を手に取る。
「びしょ濡れじゃのう。どこかで休憩して乾かすか」
「うん」
素直に頷くと、史郎坊はそっと私の頬を撫でた。

とたんに辺りの景色が変わる。
見回すと、そこはホテルの一室で。
何気に豪華で、これはたぶんスイートルーム。
ああ、休憩ってそういう…
私は自分の迂闊さが恥ずかしくなった。
史郎坊は私の「攫われたい」という望みを叶えてくれたのに。
これは子ども扱いされても仕方がない。

史郎坊は私の頬から手を離した。
「可哀想に、こんなに冷え切って。風呂に入ってくるがよい」
「…うん」
私はぎこちなく頷いて、バスルームに入った。
湯船にお湯を溜めつつ、ずぶ濡れになった服を脱ぐ。

ドキドキしながらも、素直に信じる事は出来なかった。
私は勝負に勝ったのだろうか。
今度こそ史郎坊は私を大人扱いしてくれるのだろうか。
私の覚悟は決まっているけれど、そもそも史郎坊に覚悟はあるのか。
いつも飄々とかわされているので、簡単に喜べない。

「入浴中失礼します」
私がバスタブに身を沈めるのと同時に助六が現れた。
ええと、お風呂に乱入されるのは2回目なんだけど。
神様相手に騒ぐ訳には行かないので、平気なふりで答える。
「助六さん、いっちゃんと帰ったんじゃなかったの」
「帰りましたよ。分身は溝越だけの専売特許ではありませんから」
さすが私の神様。
「服を洗って乾かして差し上げようかと思いまして。しばらくの間お借りしますよ」
「あ、ありがとう」
家事までしてくれる神様。
なんて勿体無い。

「あのね、助六さん」
「はい、なんでしょう」
「龍王様の巫女になっちゃってごめんね」
「構いませんよ。龍王と同列に祀るなら、私は実質格上げですし」
「そんなものなの」
「私の信者は芹香嬢だけですから。あなたが私を龍王と同格と見做せば、そのようになります」
「ほんとは助六さんの方が、すごい神様だと思ってるよ」
「…敬虔な信者にはご利益が必要ですね。他に何か願い事はありませんか」
助六が笑顔を浮かべた。
願い事というか、相談に乗って欲しい。
「あのね。この状況って…どう思う?」
「無理強いされたら私を呼びなさい。溝越など私の尻尾一本で捻り潰して差し上げましょう」
「無理強い…してくれるかな」
助六は首を傾げた。
「天狗は仏僧の満たされない欲望の象徴とも言いますが。溝越はあれでも、子供は守るべきものと本気で考えているようですから」
「やっぱり」
私はがっくりと肩を落とした。
「溝越はどうしようもない男ですが、あなたに対する振る舞いだけは、私、認めておりますよ」
助六は私の服を持って、消えてしまった。
…下着も含めて。
普段市子の下着も洗っているらしいから、私の下着なんかで騒ぐのも申し訳ないけど。
宗教の事はよくわからないので、神様との距離感が掴めない。
皆はどうしているのだろう。


体を念入りに洗って、ゆっくり温まって。
これ以上、バスルームに立てこもる訳にも行かない。
服を全て持っていかれたので、しかたなくバスローブを着る。
私は覚悟を決めて、おそるおそるドアを開けた。

史郎坊はベッドに仰向けに寝ころがって文庫本を読んでいた。
この期に及んで文庫本。
予想していたとはいえ悔しい。
やけになった私はベッドに忍び寄って、史郎坊にダイブをかました。

「ぬお!?」
変な声を出して史郎坊が驚く。
その隙に私は史郎坊の上に這い上がった。
せめてキスくらいはさせて欲しい。

史郎坊は私の左肩を掴み、くるりと体を返して組み伏せた。
真顔で私を見つめる。
いつもおしゃべりな癖に、どうして何も言ってくれないの。
私は何か言おうとしたけれど、のど元が締め付けれて何も言えなかった。

史郎坊はしばらく無言で私を検分してから、口元を綻ばせた。
「よい覚悟じゃ。健気な娘御はよいものじゃな」
史郎坊がゆっくりと顔を近づける。
私はぎゅっと目を閉じた。

なのに。

「怯えておる癖に、無理をするでないわ」
史郎坊が私の耳元で低く囁く。
「無理なんかしてない!」
私は目を開けて叫んだ。

史郎坊は苦笑して私の髪を撫でた。
「…濡れておるではないか。髪も乾かさんと」
「あ…忘れてた」
「しょうがないのう」
史郎坊は私を抱えてベッドを降りた。

化粧台の椅子に座らせて、ドライヤーを取り出す。
私は暴れたせいではだけてしまっていたバスローブを慌てて直した。
史郎坊は気付かぬふりで、私の髪を丁寧に乾かしてくれる。
「え、あの、自分で…」
「じっとしておれ」
「…うん」
髪に触れる手付きが優しくて、なんだか物凄く恥ずかしい。
化粧台の鏡に映る史郎坊の顔は涼しげで、私ばっかり真っ赤な顔で、やりきれない。
やっぱり子ども扱いしかして貰えなくて。
こんな時は何て言ったらいいんだろう。
帰りたくない、とか?
…言える訳がない。

「どうせ夕餉の時間までには帰れん。ルームサービスでも頼むか。家には出屋敷邸で食べるとでも言うておけ」
「え、それって高いんじゃないの?」
そもそも、ここってちゃんとチェックインしているのだろうか。

「今回はスポンサーがおる。助六がやけに気前良う払うていった」
「あ、助六さん。服、乾かしてくれるって」