二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

不運と幸運は表裏一体

INDEX|2ページ/3ページ|

次のページ前のページ
 

葛之葉雨彦いわく。
何にでも例外はあるもので、ネガティブな感情を弾き返すタイプの人間には纏わり付く汚れが殆ど無く、顔もクリアに見える。そういった人間の傾向として、ポジティブシンキングであることまたはエネルギッシュであること、あるいはその両方。315プロのメンバーなら、天ヶ瀬冬馬や天道輝がそのタイプの人間だ。他のメンバーは多かれ少なかれ汚れを弾き返せずに纏わり付かせている。あまり酷い時は汚れを祓ってやるが、普段は個々の自浄能力に任せる形にしている。毎回祓っていたのではキリがないからだ。
「……雑多な人間が行き交う場所だから仕方無いか」
今日はプロデューサー同行で後半ライブメンバー全員でクリスマスライブ会場を下見して回る予定で待ち合わせ場所がこの港なのだ。そこには大きな客船が停泊し、ステージを組むための工事が行われている。通りかかる人々は立ち止まりその様を興味津々で眺めていく。
人が多ければネガティブな感情から生まれる汚れも多くなり、葛之葉が見る風景に煤けた色が増えていく。
「仕方無くありません、むしろ必然です。船上ライブに心躍らない人間なんていませんよ!」
いつの間にか隣に来ていた古論が寒さではなく興奮のあまり頬を紅潮させながら何やら力説するが、単に船を見て興奮しているだけなので放っておくことにした。
「古論、あんまり騒ぐと目立って囲まれるぞ」
だが古論は海関連の物を見ると周りが見えなくなるので、念のため一応たしなめる。
葛之葉がたしなめたおかげで一旦落ち着いた古論だが、これ幸いと葛之葉を話し相手に決めて客船の構造やら海上での過ごし方やらの講釈をプロデューサーが到着するまで延々と話し続けたのだった。



「済みません、お待たせしました! トラブルがありまして」
少々おっとりとしていて取り乱すことは稀と言われている315プロ唯一のプロデューサーが、今日は珍しく慌てた表情でやってきた。プロデューサーの後ろには舞田、神谷、木村の3名が居り、これでこの場にXmas Liveのメンバー全員が揃うこととなる。
「いや、俺達もさっき来たばかりだ。古論の話を聞いていたから退屈もしなかったしな」
隣の古論に目配せをしながら、プロデューサーに気を使わせないように目を細めて笑顔を作る。
「ええ、有意義な時間でした」
それを受けて古論は満面の笑みで応えるが、こちらは存分に好きな話ができた満足感の笑みだ。
それでも恐縮する様子を見せるプロデューサーに、木村がポンと軽く背中を叩く。
「もう大丈夫、不運は俺が吸収したからな! プロデューサー」
瞬間、背筋を伸ばして木村を見て苦笑いする。不運のかたまりのような男にそんなことを言われてしまっては切り替えざるを得ない。やたらと恐縮していたのはどうやらプロデューサー自身のトラブルで所属アイドル達に迷惑を掛けたからなのだろう。
「……そういうことか。これは大変だ」
「何がですか?」
言葉が口に出てしまっていたのをすぐ隣に居た古論は聞いていたらしく不思議そうな顔で問われるが、何でもないこっちの話だと言ってごまかす。
「手続き完了しましたので、行きましょう」
プロデューサーの声で皆、連れ立って船上の人となる。
まだ仮組み中のライブステージの上に立ち、ステージの広さと立ち位置の確認を軽くやっておく。正式なリハーサルはまた後日にあるが、感覚を掴むためにやっておいた方が良いとのメンバーの提案で急遽簡単にリハーサルを行うことになったのだ。
まずは一人ずつソロパートを確認するため、ステージに立っている人間以外はステージが見える位置で観客の代わりをする。今、リハを行っているのは神谷で、次が古論なので古論はステージ横に居る。
「あの……雨彦さん、今お話いいですか?」
恐る恐るといった風情で木村が声を掛けてきた。
「ん? なんだ?」
チラリと目線だけを隣の青年に向け言葉を待つ。
「ええっと……以前顔合わせした時のことなんですけど」
「うん?」
「あの、俺、あの時に雨彦さんに見つめられて『俺の顔、何か付いてます?』って聞きましたよね? で、雨彦さんは何も付いてないって言って、でも雨彦さんそんな何も無いって顔してなかったと思うんですよ。それが今まで少し気になってて……。雨彦さん、本当はどうだったんですか?」
恐る恐る話を切り出したら、言いたいことが溢れたらしく勢いよく一気に話し切る。
「お前さんそれをずっと気にしてたのか。済まん、思わせぶりな態度をした俺が悪いな」
木村の肩に手を置きながらそこに座れと座らせて自身も座る。
「初顔合わせの時か。実際何も付いて無かったんだ。逆に何も付いて無いのに驚いてね。お前さんだったらなにがしか憑けてそうなイメージだったんでな」
「それって俺が異常な不運体質だからってことですよね? てことは逆に悪いことなのかな?」
首を傾げたかと思えば肩をガクリと落として意気消沈して表情を曇らせる様がなぜだかすごく痛ましく見える。
「ほら、お前さんは物事を悪い方へ悪い方へ考えちまう。不運体質ってこともあるけどそうやって悪い方に思考を巡らす傾向があるようだから、さぞ煤けた顔してるのかと思ったんだがな。むしろ逆にキレイな面構えで来るもんだから驚いたぜ」
木村は肩を落としたまま顔を上げ葛之葉の言葉を聞くが、よくは分からないといった顔だ。
「分からないって顔してるな? まあそれでも聞いてくれ。不運体質だって言うお前さんが採用試験を受かり僅かな期間でも奉職してこれたのはお前さんの実力だ。そしてオーディションにも受かりこうやって俺達と共にアイドルをやれているのもまたお前さんの実力だ。不運でさらには実力も無いのなら試験に受からずオーディションにも合格していないしどっちもやれてないだろうよ。さて、本当にお前さんは不運なのかい?」
「え、えっと……」
突然の自分自身の話に戸惑いつつ、安心させ元気づけようとしていることは理解したらしく居住まいを正す。
「自信を持て木村。それだけでたいがいの不運は吹き飛んでいく。そもそもお前さんが不運に見舞われるような人間に見えないんだがな? 俺から見たら」
話は終わりとばかりに木村の両肩をポンと叩くと葛之葉は立ち上がり、リハを行ってるステージを見つめる。丁度古論のリハが終わったところだ。
「Mr.きむらー! 出番だよー! hurry up!」ステージ正面に陣取っていた舞田が手を振り木村を呼ぶ。
「はーい! いま行きまーす!」
パッと立ち上がり大声で返事をして大きく手を振る。
「雨彦さん、ありがとうございます。俺行ってきます!」
「おう、行ってこい」
振り返ってお礼を言う木村の笑顔に釣られるかのように、葛之葉も笑顔で返して送り出す。
作品名:不運と幸運は表裏一体 作家名:tesla_quet