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第1章・9話『最恐と最凶の姉妹』

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東方星写怪異録 第1章・9話


―紅魔館―館内―
禍霊夢の『人間では無い』という一言に魔理沙はしとねへとゆっくり視線を向ける。
当のしとねは────
しとね「……バレてしまいましたかぁ」
笑顔のままだった……ただその笑顔は先程まで見せていたものとは違い、悲しげで弱々しい笑顔だった。
魔理沙は思わず何かを喋ろうとするも、しとねの顔を見て言葉が出てこなかった。
禍霊夢「奴、暴食はお前の力を狙っていた」
しとね「恐らくは……ジン、龍の力ですね」
禍霊夢「奴はその力を手に入れて、何をするつもりだ」
しとね「私にも分かりません」
禍霊夢「八雲紫がお前を幻想郷へ招いたとしても、私はお前がここに居続けるのを許す訳にはいかない」
しとね「そう……でしょうね」
魔理沙「ま、待てって今はそれ所じゃないだろ!」
2人の会話へ口を挟めなかった魔理沙だったが、このままでは2人が闘い始める気がし止めようとした。
禍霊夢「私の……博麗の巫女である者の目的は幻想郷を結界で守り、脅威を廃すること」
そう言う禍霊夢が右手を前へ出すと、その手に刀が現れ、禍霊夢はそのまま刃先をしとねへ向ける。
その後ろでモコモコ……とみるみる兎擬きの一体が、禍霊夢の2回り程大きくなりその口を開く。
魔理沙&しとね「……あ」
禍霊夢「何だ?貴様ら────」
2人が少し間が抜けた声をだし、禍霊夢が喋っていたがバクっと兎擬きがかぶりつき途中で遮られる。
禍霊夢「モゴ!?モゴっモガガっ!ゴガァ!!」
禍霊夢が何かを叫びながら刀を振り回すが、影から出来ている兎擬きに効くわけが無くその抵抗は無駄に等しかった。
魔理沙「お、おい……食べ物じゃねぇって!だから食うなぁ!!」
しとね「っは……わあぁー!!ダメですって!」
数分間、魔理沙としとねは兎擬きから禍霊夢を救出するのに奔走する事になる。


―紅魔館―書物庫―
兎擬き「(ㅇ ㅅ ㅇ)♪」
レミリア「ねぇパチェ、このウサギっぽいの……何?」
パチュリー「魔理沙とは別の誰かが魔法で作った捜索用のゴーレムよ」
パチュリーにそう言われたレミリアはええ……と怪訝そうな顔をしながらも兎擬きをつつく。
レミリア「これで、ゴーレム?」
レミリアの言葉を聞き、兎擬きは威張る様に少し仰け反る。
レミリア「……カッコ良さが足りない」
レミリアの残念そうな声を聞き、兎擬きの耳が垂れる。
パチュリーは後ろを向き見えないよう必死に笑うのを堪えていた。
レミリア「フランは……大丈夫かしら」
パチュリー「……大丈夫よ、咲夜が様子を見に行ってくれたのだし……何より、貴女の妹なんだから」
パチュリーにそう言われたレミリアは少し誇らしく笑い、兎擬きをまた突つこうと指を伸ばす。
咲夜「お嬢様っ、パチュリー様!」
パチュリー「そんなに焦ってどうしたのよ咲夜、貴女らしくも無い」
寸前まで誰も居なかったその場所にメイドが1人現れる。
咲夜と呼ばれた彼女はとても急いでいる様だった。
レミリア「咲夜、一旦落ち着きなさい」
そう言われた咲夜は、深呼吸をして話し始める。
咲夜「……妹様が、お部屋に居られませんでした」
レミリア&パチュリー「!?」

禍霊夢を兎擬きから救出し、書物庫でレミリア達と合流出来たしとね達はパチュリーからレミリアの妹、フランという子が行方知れずだと伝えられた。
パチュリー「もしかすると暴食が何か仕掛けてくるかもしれないわ、気をつけて」
魔理沙「ああ、分かった……そっちも気をつけろよ」
書物庫で美鈴を寝かせ、禍霊夢とパチュリー、小悪魔は書物庫に残り紅霧を解除する為に、レミリアとしとね、魔理沙と咲夜の2組でフランを探す事になった。
レミリア「それじゃ、行くわよ」
しとね「了解です」
レミリアとしとねは館の屋上を探す事に。
魔理沙「んじゃ行くぞ……ってまだ根に持ってんのか」
咲夜「当然よ、得体の知れない外来人とお嬢様が一緒に行動なんて」
魔理沙「仕方ないだろ、レミリアたっての希望でこうなったんだから」
魔理沙と納得がいかない様子の咲夜はフランの部屋周辺を。
他の場所は兎擬き達を使って捜索する事となった。


―紅魔館―屋上近く―
レミリア「じゃあ貴女は霊夢の代わりとして幻想郷に来たのね」
しとね「結界の維持は無理なので異変解決だけですけど」
道中レミリアから招かれた経緯を聞かれ、しとねは大まかに話しながら屋上へ向かっていた。
レミリア「屋上に居てくれれば楽だけど」
しとね「……(あれ、確かレミリアさんの能力って)」
そう言うレミリアを見ながら、魔理沙からレミリアの能力を聞いていたしとねは少し疑問を持っていた。
レミリア「どうしたのよ」
しとね「ああ、すみません……」
だが、足を止めたしとねへ声をかけるレミリアに返事を返し、しとねはその考えを後回しにした。
屋上へ到着した2人は軽く見渡し、2手に別れて探す事にした。


―書物庫―
書物庫で禍霊夢から話を聞いていたパチュリーは驚愕せざるを得なかった。
パチュリー「ちょ、ちょっと待って……それは本当なの?」
禍霊夢「嘘をついても仕方ないだろ、アイツの身体は消滅した……」
パチュリー「でも、あの子……しとねが言うには魂だけがすでに逃げていた」
禍霊夢「ああ、そう言っていた」
頷く禍霊夢と、その言葉聞いたパチュリーは連絡用の兎擬きへ叫ぶ。
パチュリー「魔理沙とレミィへ繋いで、早く!」


―同刻―フランの部屋―
フランの部屋を探していた魔理沙は、咲夜が考え込んでいるのを見て。
魔理沙「咲夜、何か気になる事でもあるのか?」
咲夜「魔理沙、貴女は……お嬢様に何かが引っ掛かるように感じなかった?」
魔理沙「レミリアに?……特には感じなかったけどな」
咲夜「そう……」
魔理沙はまた考え込む咲夜に声を掛けようとするが────
兎擬き「(((( ’ω’ ))))」
魔理沙「わわ、何だ急に震えて?」
魔理沙が手を伸ばすが、兎擬きは手の甲に乗り……
パチュリー「魔理沙、咲夜、聞こえる!?」
兎擬きからパチュリーの声が聞こえる……通信ってこういう感じなのか、などと思う。
通信先のパチュリーは何処か焦っている様子に思えた。
魔理沙「パチュリー聞こえてるぜ、どうかしたか?」
パチュリー「良かった、こっちには繋がった」
魔理沙と咲夜はパチュリーの言葉に首を傾げ。
咲夜「パチュリー様、何かあったのですか?」
パチュリー「よく聞いて、アイツ……暴食は────」
魔理沙と咲夜はパチュリーから教えられた内容に驚く。
魔理沙「マジかよ」
咲夜「まさか、あの時に?……お嬢様!!」
咲夜はレミリアへ少しだが違和感を感じていた、何か別のものが中に入り込んでいる様なそんな感覚を────


―屋上―
頭に乗っていた兎擬きからの通信を受けようとしていたしとねは、誰かに手で目を塞がれていた。
しとね「……(えっ、何?)」
???「ふふっ、貴女は魔理沙と同じ人間なんでしょ?」
イタズラ好きな無邪気な子の様だった。
しとねは取り敢えず、フランって子なのだろうと思う事にし声を出さず、問い掛けに対し軽く頷く。
『そうなんだ』、と声の主は囁きながら首筋に頬を擦り寄せて来る。
しとね「間違ってたらゴメンね、もしかしてフランちゃん?」