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その先へ・・・2

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(3)

アレクセイの脳裏にはあの時の光景が鮮やかに蘇っていた。

あの廃屋でのつかの間の再会。

自分を追ってきた事に驚いたが、えも言われぬ喜びに震えた。

震える手を伸ばし、頬のぬくもりに触れ、深いくちづけを交わした。

幾度も角度を変え、絡めあい、息つく暇も無いほどに求め合う夢の様な
ひととき。

アレクセイも、ユリウスも夢中になった。

ようやくユリウスのくちびるから離れ、怪我を負っていながらも彼女の体を
きつく抱きしめると、「クラウス、クラウス」と泣きむせんでいた。

ユリウスへの愛しさで胸が張り裂けそうだった。

いく度も見た夢の様な気さえしていたが、胸に感じるあたたかなユリウスの
涙が、これは現実だと教えてくれたのだ。




しかし……




あの時の状況と負っているものの重さは、アレクセイから甘やかな夢を奪い
取っていった。

自分の心の震えを悟られないように、ユリウスの体を無情にも手放した。

ユリウスの絶望したような瞳が目に焼きついて離れない。


「あばよ!故郷へ帰るんだ。おれのことは忘れるんだ。出会わなかった男だと思って、すべて忘れてしまってくれ!」」


ひどい事を言っていると分かっていた。

それでも、それがユリウスの為にも自分の為にも一番最善だと思ったのだ。


ユリウスを置き去りにして、アレクセイはあの場を離れた。





………心も体も引き裂かれそうだった。




そして時を経て、今、再び奇跡の様に彼女と出会った。


ユリウスはすべてを忘れてしまっていた。

輝かしい青春時代をすごした故郷の事も、自分自身の事も。

クラウス・ゾンマーシュミット、いや、アレクセイ・ミハイロフの事も。


目の前が真っ暗になる、とはこういう事なのだ、と思った。



……おれが最善だと思っていた事は、最悪だったのだ!!!




アレクセイの胸は、きりきりと痛み続けている。


作品名:その先へ・・・2 作家名:chibita