二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

Never end.3

INDEX|2ページ/6ページ|

次のページ前のページ
 

「そうですね…」
「…ャア…」
二人に支えられたアムロが何かを呟く。
「アムロ?」
「シャ…ア…」
今度は、はっきりと聞き取れた言葉に、ブライトが肩を揺らす。
「艦長?」
「あ、いや、すまん。急ごう」


医務室に着くと、アムロをベッドに寝かせて、ジュドーがハサンを呼びに行く。
そしてその帰りに、カミーユの病室を覗く。
カミーユは特に変わりなく、ベッドで眠っていた。
カミーユは初めの頃に比べると、随分と回復してきた。
まだ会話は出来ないが、寝食などの生理的な行動は自分で出来るようになった。
突然暴れる事もなくなり、偶に微笑みかけてくれる事さえある。
今も、安らかな寝息を立てるカミーユにホッとすると、アムロの元まで戻っていった。

ジュドーはアムロのベッドのカーテンを開けようとして、中から聞こえるブライトの声に、その手を止める。
「アムロ…お前はあの時…俺たちの所になんて帰って来ずに…クワトロ大尉…いや、シャアと共に行った方が良かったのか?そうすれば、ニュータイプ研究所であんな目に遭わなくても済んだかもしれない…」
ブライトが膝の上に置いた拳を強く握りしめる。
「すまん…俺が無理やりお前を戦わせたばっかりに…お前の運命を大きく変えてしまった…」
そんなブライトの手を、いつの間に気が付いたのか、アムロの手が上から覆う。
「アムロ?」
「…ブライト…良いんだ…もう終わった事だ…。それに…俺があの人の元になんて行けるわけないだろう?あの人は…ジオンの人間で…俺は…過去にジオン兵を大量に殺した人間なんだ…受け入れられる訳がない…」
アムロがそう言いながら悲しげに笑う。
「…アムロ…ずっと聞きたかったんだが…お前は彼と…同志として戦う事に蟠りは無かったのか?その…戦時中…誰よりも彼と剣を交えていただろう?」
「それを言うならブライトもだろう?」
「まぁ、そうだな。しかし、セイラから彼の事情は聞いていたし…ジオンの士官だったとは言え…彼はザビ家に傾倒していた訳ではなかった…。それに何より、彼の目的はブレックス准将の…我々の求めるものと同じだった。だから共に戦えた」
「そうだな…。多分…今もあの人の真の目的は変わってはいない…。けれど…その方法を変えようとしている…」
「“今も”?…アムロ、お前!まさかクワトロ大尉に会ったのか?」
驚くブライトに、バツの悪そうな顔をしながらも、コクリと頷く。
「黙っていてすまない…。補給でコロニーに停泊した時…あの人の方から接触して来た…」
アムロのその言葉を聞き、カーテンの外にいたジュドーの脳裏に、以前アムロが会っていた黒髪の男の顔が浮かぶ。
『あの男!?』
「まさかお前、また同志になれって勧誘されたのか?」
「勧誘って…」
「他に何だって言うんだ?」
「いや…確かにそう言う意味もあったかもしれないけど…俺が欲しいって言われたよ」
「欲しいって…」
「俺を自分だけの鳥籠に閉じ込めておきたいってさ」
そこまで言われてブライトは、はたと二人の関係がどう言うものかを察する。
昨今では特に珍しくもない。ましてや圧倒的に女性の少ない軍隊ではよくある事だ。
しかし、まさかこの二人がそう言った関係にあるとは思ってもみなかった。
「まさか…お前たち…」
「ああ、過去にあれだけ殺し合いをしていたのにな。戦時中…いろんな事があって…あの人を恨んだりもしていたけど…優しい人だって事も知ってた。だから…憎み切れなかった…」
「アムロ…」
確かに、二人の間には宿命めいた“何か”があったように思う。そう思うと、二人の関係がそう言ったものになったとしてもおかしくは無いのかもしれないが…。
「シャイアンを脱走してカラバに合流した時、まさかあの人に会うとは思わなかった。あの人と直に接して…初めはかなり戸惑ったし…腹立たしい事もあったけど…気が付いたら、いつもあの人を目で追ってた」
そう。避けながらも、いつも目で追っていた。
そして、そんな俺をあの人もいつも見ていた。
ふとした瞬間、何度も目が合ったのだ。
その度に、自分の心の奥底までを見透かされいるようで落ち着かなかった。
「あの人に惹かれていく自分に戸惑ったよ…。あの人は…俺が大切な人を…この手で殺してしまった…きっかけを作った人なのにって…」
アムロは自身の掌を見つめ、辛そうに顔を歪める。
カーテン越しにその会話を聞き、ジュドーは以前に聞いた“ララァ”の事を思い出す。
あの時、アムロは結局口にはしなかったが…“ララァの死”は察する事が出来た。
そして…もしかしたら、彼女を手に掛けたのが、アムロではないかと言う事も…。

「でも…あの人に求められて…嬉しかったんだ…。だから…自分の想いを受け止めた」
アムロは自分の胸に手を当てて目を閉じる。
「…そうか…。それで彼は…今どこに?」
「さぁな。いつも向こうから現れて、言いたい事だけ言って去っていくから…」
悲しげに微笑むアムロに胸が締め付けられる。
おそらく、何のしがらみも無ければ、アムロはシャアの手を取りたいのだろう。
しかし、シャアには求める理想がある。
そして、それを実現する為の彼の仲間は間違いなくジオンだ。そこにアムロが入る事は出来ない。
また、おそらくそれなりの規模があるであろう組織で、シャアにはあまり自由は無いのだろう。
だからこそ「自分だけの鳥籠に閉じ込めておきたい」などという切望の言葉が出たのかもしれない。
「…お前は…どうしたいんだ?」
「俺は……」
アムロは視線を彷徨わせ、少し思案して目を閉じる。そして目を開き、ブライトを見上げる。
「なぁ、ブライト。ダカールでのあの人の演説を覚えているか?」
「あ、ああ」
「あの人は、地球から宇宙を支配する時代は終わったのだと、人類は皆、宇宙へ上るべきだと言った。そしてスペースノイドは…人類は地球からの支配から解き放たれ、地球の汚染も食い止められると言った」
「そうだな…」
「だが、ブライト。正直に言って、現実的にそれは不可能だと思わなかったか?」
確かに、理想だとは思ったが、それを直ぐに実行に移すのは難しいだろう。
何より、地球の重力に引かれ、地球から宇宙を支配すると言う“特権”を連邦政府が手離すとは思えない。
「あの人は…エゥーゴで連邦政府の腐敗を目の当たりにして…内側から連邦を変える事は出来ないと見切りを付けてしまった…。そして、汚染から地球を守らなければという思いにも駆られただろう。そんなあの人はどんな行動に出ると思う?」
アムロに問われ、ブライトはある事を想像して背筋を震わせる。
「察しがつくだろう?」
「…いや、しかしまさかそんな大それた事をするとは…」
「あの人は純粋なんだ。例え、自分が大罪人になったとしても、その理想を追い求める」
「シャアは…地球を潰す気か?人の住めない星にして…強制的に人類を宇宙に上げると?」
ブライトの言葉に、アムロはコクリと頷く。
「多分、そのくらいの事はすると思う」
「しかし…クワトロ大尉はそんな人では…」
「クワトロ大尉はね。でも、シャア・アズナブルはそう言う人だよ。目的の為には手段を選ばない。そう言う男だ」
作品名:Never end.3 作家名:koyuho