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日常ワンカット

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シベリアの平凡な食卓編


……ミロは、度々シベリアの客人となっていた。勿論、食事のためだ。
「カミュの飯も美味いよな」
ダイニングキッチンで料理するカミュの後ろ姿を眺めながら、ミロが笑う。
白羊宮の主の食事はとんでもなく美味かったのだが、この宝瓶宮の主の食事もかなりの美味であった。
さすが、食の大国・フランスの出身。カミュは眉一つ動かさずに、
「昔からやっていれば、いやでも上手くなる」
「でも、アイオリアは上達しないんだよな」
アイオリアは何時になっても、料理がうまくならない。その話はカミュも聞いていた。
アイオリアに料理の手解きをする事になったムウが、
『あの人、なかなか筋が悪い』
とぼやく位なのだから、相当なのだろう。
「アイオリアに料理を教えるなんて、一体何があったんだろうな?」
「知らんよ。ムウもあまり話したくない様子だったからな」
「そうか」
カミュはそこで会話を切ると、フライパンの中身を用意していた皿に移した。魚にパン粉と香草を付け、バターで焼いたものらしい。
バターの焦げた香りが香草の芳香と相まって、食欲をそそる。
「キャビネットからナイフとフォークを出せ。それくらいなら、料理の出来ないお前にも出来るだろう」
「……厳しいな、お前」
苦笑いしたミロは席を立つと、食器棚の中から指示されたものを取り出す。
「これでいいだろう」
「構わん」
手早く配膳を済ませると、テーブルにつく二人。
なお氷河は、現在ヤコフの家に出掛けているので不在である。
黒パンと紅茶、それに魚のバター焼きが、本日のランチメニューだ。
早速口に運ぶミロ。口の中に入れた途端、魚の身がバターの風味とともにほぐれる。
「……美味いな、この魚」
「今朝漁港で買ってきた」
フォークとナイフがカチャカチャと皿に触れる音が、ダイニングに響く。
ミロは黒パンをちぎりながら、いつもの闊達な様でカミュに訊ねた。
「なぁ、カミュよ」
「何だ」
「魚とパンのお替わりはあるか?」
その問いに対するカミュの回答は、絶対零度よりも冷たい視線だった。
「お前には『居候三杯目にはそっと出し』が当てはまらんようだな」
「何だそれ?」
いつの間にか、ミロの皿は空になっていた。
作品名:日常ワンカット 作家名:あまみ