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日常ワンカット

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自由テキスト


作業場から、カツンカツンと、鎚で鑿を打つ音が聞こえる。
白羊宮の主、牡羊座のムウが現在聖衣を修復中だった。
今日修復に入っている聖衣は、白銀聖衣ばかり。
昨日の稽古当番はシュラだったのだが、いつもは上手く手加減する彼もどうやら腹の虫の居所が悪かったらしく、八つ当たりとしか思えないような様子で白銀聖闘士の相手をしていた。
「あのシュラが八つ当たりをするなんて、一体何があったのでしょうねぇ」
綺麗に切断された聖衣を眺めつつ、ムウが呟く。
こういう真っ二つに割れた聖衣は接着が面倒なので、イヤだ。
「後でシュラには、何か美味しいものでもご馳走してもらわないと割に合いませんね」
冗談めかしてはいるが、恐らくこのムウの言葉は、本気だ。
スペインはオレンジジュースが美味しいのですよねと独語すると、オリハルコンで聖衣のヒビを埋める。
この破損度から推し量るに、今日いっぱいはこの聖衣に掛かりきりになりそうだ。

一方、白銀聖闘士駐屯所。
昨日シュラに稽古を付けられボコボコにされた白銀聖闘士たちが、大部屋の療養室に並べられたベッドの上で、ウンウン唸っていた。
「あんたたち、情けないねぇ」
シャイナが辛辣にそう言い放つが、顔中に切り傷を作ったシリウスは苛々しげに、
「黄金聖闘士相手に、俺たちに何が出来るっていうんだ」
「そうだけど、少しやられ過ぎじゃないかい?」
「今回のシュラ様は、すごかったんだよ」
息を吐きつつトレミーがシリウスの言葉にフォローを入れる。
「アレはマジで殺しにきてたぞ。絶対に稽古だっての忘れてたぞ」
気怠い物言い。全身が痛くて、力が入らないのだ。
「あん時のシュラ様が、滅茶苦茶機嫌悪かった理由なー……」
稽古には参加せず、同僚たちが一方的に嬲られるのを見物していたアステリオンは、ベッドサイドのスツールに座りつつ、そう切り出す。
寝台の上で横たわっていた皆の視線が一斉に集中するのを感じた彼は、小さなため息をついた後、シュラの秘密を暴露した。
「この前、ムウ様とミロ様とアフロディーテ様にいじられたらしいんだよな、白羊宮で」
俯くダンテ。バベルは深く深く息を吐くと、
「牡羊座のムウ様は、優しそうな顔をして、実は相当おっかないからなぁ……」
「それにアフロディーテ様も一緒か。あの方も、顔は聖闘士一綺麗だが、言葉の内容はかなりきついしな」
ジャミアンの言葉に一番端のベッドで休んでいたミスティが抗議の声をあげたが、全員さくっと無視した。
「けど、仲間にいじられたくらいで白銀に本気出すなんて、シュラ様も大人げないねぇ」
シャイナがしみじみと呟くと、その場にいた誰もが大きく首を縦に振った。

その頃、磨羯宮のソファに腰掛けてF1雑誌を読んでいたシュラは、妙に鼻がむずむずするのでティッシュを引き寄せて鼻をかみ始めた。
一度だけでは収まらず、何度も何度も。
時期が時期故、花粉症だろうかと心配になったシュラは、明日はアレルギー科を受診しようと考えて、丸めたティッシュをゴミ箱に向かって放り投げた。
ゴミは見事に箱の縁に当たり、床に落ちた。
作品名:日常ワンカット 作家名:あまみ