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日常ワンカット

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ミュージックファイターズ編


ローテーブルに置かれたノートパソコンから、ハッと耳を引くような、何ともフックのあるポップなメロディが流れている。
「う~ん、アレンジどうしようか」
パソコンの前でウンウン唸っているのは、冥界在住のミュージシャン兼聖闘士、琴座のオルフェ。
彼はハーデスに請われた為、今も冥界にて音楽活動を行っている。
現在オルフェは、曲作りの真っ最中であった。
最近はMacintoshを使用して、打ちこみで曲を仕上げることも多い。琴やギターだけではなく、様々な楽器や道具を使ってみたかったのだ。
だが、いいインスピレーションが浮かんでくるのは、琴やギターを何の考えもなしにじゃかじゃか鳴らしている時だという。
「パステルカラーっぽく仕上げるか、いっそダンサブルにしてみるか……」
ソフトを駆使し、色々と編曲を考えていると。
「またやっているのか、お前は」
窓からヒョイと、ファラオがのぞく。オルフェはそちらには全く目もくれずに、マウスを操作していた。
「またやってるって言うけど、これが僕の仕事だから」
「いや、そんなのハーデス様の前で奏でられるのか?ハーデス様に同期打ち込みでも聴かせるつもりなのか?」
ハーデスに献ずるにはあまりにも現代っぽいので、心配になってしまったファラオがオルフェに訊ねる。
オルフェの答えは、一言だった。
「グラード財団がらみの、CMソング」
「ああ」
ようやく納得するファラオ。
確かにこれは、CMソングに向いている。メロディにフックがあり、どうにも耳に残る。
「気付いたら口ずさんでいた系の曲だな。アレンジはどうする気だ?」
「ダンスミュージックにするか、80年代ポップスにするか、悩んでいるところ」
「ダンスミュージックを取り入れたポップスは?マイケル・ジャクソンじゃないが」
「はいはい、打倒クインシー・ジョーンズ」
そんな会話をしながら作業をしていると、なにやら花畑の出口から何やら雑多な気配を感じる。第二獄方向が、何やら騒がしいのである。
「どうしたの?」
作業の手を止めぬまま、オルフェが訊ねる。今ベースラインの打ち込みを行っているところだ。
ファラオは自分の家の方角を眺めながら、
「第二獄方向が、何やらざわついている」
「別に、変な小宇宙は感じないのだけどな」
こういう小宇宙を感じ取るセンサーは、何年も戦士としての修行を積んだオルフェの方が上であるが。やがて彼も、微妙に顔色を変えた。
花畑の入り口、ファラオのエリアと自分の居住エリアの境目が、何となくザワザワしている。
「……ん?」
データを保存し、Macをシステム終了させるオルフェ。
曲作り自体は早いのだが、打ち込みはまだまだ素人仕事なので、マニピュレーターほどの速度はない。
「ちょっと見てくる」
フラットを出るファラオ。然程大したことではなかったのだろう。
オルフェが台所でお茶の支度をしていると、非常に重い足取りで戻って来た。
「何があった?」
オレンジペコをティーカップに注ぎながら問うと、ファラオは苦虫を噛んだ顔で一言。
「スタンドやギガントやイワンが、ケルベロスにモフモフしていた……」
あまりにも予想外の答えに、流石のオルフェも言葉を失う。
「どうしてまた!」
「今テレビ番組で可愛いペット特集をやっていて、それでどうしても犬をモフモフしたくなったんだと」
ファラオの表情は暗い。愛犬を同僚に勝手にいじられたのが、相当堪えたものと見える。
オルフェは困ったようにため息をつくと、
「みんなに可愛がられるんじゃいいじゃないか。いじめられるよりは絶対にいいよ」
と慰めた。
冥闘士と聖闘士。それぞれ立場は違うが、お互い奇妙な友情を感じているのだ。
作品名:日常ワンカット 作家名:あまみ