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マスターキーを投げないで

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淡い新緑の目は真剣そのもの。
この男、俺を描くまで男は自画像しか描いたことがないと豪語したが、確かに下手なモデルを雇うよりずっと良いんじゃあないかと思う。
美しいものは誰だって好きだ。
俺なんか超の付くメンクイだから、大学の食堂でシーザーに突然呼び止められてヌードモデルになってくれって頼みこまれた時、普通ならグーパンボコボコおととい来やがれってな感じでお分かりいただくところを、速攻でオーケー出しちゃったもんね。そりゃあこんなブロンドの美形にあっつい目線の上目遣いで至近距離でオネガイされちゃあころっと落ちちまうのも当然だろ?
きつめで癖のある眉と、凛々しい目尻、普段は皮肉しか寄越してこない唇は、俺の裸体を描くときだけは切り結ばれて時折感嘆の言葉を漏らす。
「こう……足を組んで体をひねってくれ」
「こんな感じ?」
「……ママミーヤ……‼︎ 嗚呼神よ、なぜこれほどまでに美しい人間をお作りになったのですか……あっJOJOそのまま動くなよ」
「へいへーい」
ざくざく音をさせながら動く木炭、次々めくられるクロッキー帳。窓のない部屋には煌々と明かりが点いていて、俺の裸体を余すことなく画家のタマゴにさらけ出す。
「そろそろ疲れて来ましたことよシーザーちゃん」
「……もう少し……もう少しだけ我慢してくれ…ハァ……美しすぎるッッJOJO‼︎‼︎」
褒められるのはやぶさかではないが、それにしたって泣きながらって……そこまでか?
確かに俺はパーフェクトにキュートでデンジャラスビューティー、それでいてベリープリティーのマーベラスマッチョだから、もちろん全裸だって人びとはひれ伏し獣はこうべを垂れ草木は花を咲かせ俺の存在を祝福……いやちょっと言いすぎた。でもまあ俺が世界を魅了するムキムキシューティングスターなのは間違いない。だからってこの男嫌いで有名なシーザーにヌードモデルを頼まれるだなんて、天地がひっくり返ってもあり得ないことだと思うだろ?快諾した後に確認しちゃったもんね「なんかの罰ゲームじゃないよな?」って。
「……ふぅ……悪かったな、楽にしていいぞ」
「おう!だはーーーーー!もう三回目だけど、じっとしてるのって意外と疲れんなァ」
俺は手足を投げ出して全裸で大の字になった。一応空調は効かせてくれてるから、全裸でゴロゴロしてたって何の不自由もないわけなんだが、シーザーは自分の椅子にかけてあったタオルケットを俺の腹にかけ、ミネラルウォーターを寄越してきた。
「お前は動いている方が性に合ってるだろうな。今度はどこかジムでも借りるか」
「動いていいなら屋外ボルダリングとか行かねえ?駅からちょっと離れてるけどバス出てるとこで気になってるとこがあってさぁ」
「いや密室がいい。お前の裸が観たい」
「今のセリフだけ聞いたらお前変態じゃん」
「うるさいぞスカタン」
俺を題材にして絵を描いている時のシーザーは正直教祖を目の当たりにして感動のあまり正気を失った信者って感じなんだけど、スイッチが切り替わると途端に小姑みたいに口うるさくなるのだ。ギャップ萌え……とはだいぶ違う気がするが、普段兄貴風を吹かしてくる奴が俺の魅力にゾッコンってのはやっぱり優越感を感じたりしちゃうよな。いやでもどっちかっていうと、いつもの世話焼きシーザーの方が好みなんだけど。
「ちぇー折角シーザーとデートできると思ったのに」
まあ確かに人体のデッサンがしたいなら裸の方がいいんだろう。美術のことも絵画のこともよくは知らないけども。何だって基礎ってもんは大事だ。俺はタオルケットにくるまってクロッキー帳を勝手にペラペラとめくる。俺のスケッチをするときは、シーザーは少なくとも二冊以上クロッキー帳を用意している。埋まっちゃってる方のページをめくっていけば、木炭でざくざく描かれた……俺らしき前衛的な線が踊っている。
……うん、基礎は大事だからな。伸びしろいっぱいあるなシーザー‼︎‼︎
その伸びしろいっぱいな独創的なスケッチを、なんだかうちの大学の芸術系の教授陣はこぞって絶賛してるらしい。……正直頭がおかしいか目がめっちゃ悪いと思う。
俺はこれでも審美眼には自信ある方で、知り合いの富豪の爺さんとお忍びで出かける会員制のギャラリーなんかでは、いつも次に来るアーティストを当てて買ってくってんで、オーナーにアドバイザーになってくれって正式に頼まれたことがある。大げさだと思ったけど確かに気に入った作家の作品を買えば、その作家がしばらくしてから国際的に大きい賞をもらったりすることが結構ある。さすがに百発百中とは言わないけど。
その俺からしたらもうシーザーの絵っていうのは「何で?」って毎回声が出そうなくらいの出来栄えなのだ。なんかどっかのマダムのご好意で学生の身分ながら個展をやったこともあるらしいが、原画もポストカードも完売。そん時の画廊の写真も見せてもらったが、今とそんな変わらない画伯ぶり。いっそ安定した画伯ぶりと言えるだろう。おいおいマダムもガールズも大丈夫か?って内心汗をかきながら心の中でだけ突っ込んだが、まあだって……アイドルやタレントの絵が大して芸術的でなくてもネームバリューでがっぽり儲けられるもんな。シーザーの顔とカラダが目当てなんだろうお前もお前も!まあ俺もそうなんだけど俺は中身も愛してるから!シーザーは芸術面的にはこれから多分サナギがプテラノドンに羽化するように成長するから……多分!だから問題ないな!
「お前とはデートしないぞ」
「ええーーー!なんだよシーザーちゃん今までヌードモデルの女と片っ端から寝てんだろ!いーじゃんデートくらい‼︎俺の身体大好きなくせに!なんならモデル料身体で払ってくれてもいいんだぜ?」
「ま……まて、まくし立てるな!どこでそれを聞いた!?それに彼女達とはちゃんと付き合って……いた!モデル料はちゃんと払う!」
「あ、図星だった?寝たのと恋人になったのどっちが先よ?例の個展のマダムとも寝たんだろ?俺も恋人にしてくれるならお前のパトロンくらい喜んで引き受けるぜ!多分シーザー養うぐらいは俺の資産とか小遣いとかやりくりしたらいけると思うんだよ〜なあいいだろ?俺たちもハダカの付き合いしだしてもう四ヶ月じゃん!」
「だめだ!お前とそんなふしだらな関係になるわけには……」
「あっ今ふともも見ただろ?シーザーちゃん脚?脚フェチなの?」
迫る俺、突っぱねるシーザー、色気を出すべくくねくねナヨォナヨォとアピールするも、鼻をギュッとつねられて制止される。
「違う‼︎‼︎いやお前の脚は芸術的だが……っこらめくるな‼︎だいたいお前は勘違いしてるんだ、芸術における裸体とは、性愛を超える生命力という美の……」
「ンなぁに言ってんだよ!昔のギリシャ神の絵画がおっぱいもちんこも丸出しなのは春画でポルノだからだろ!お前は小学生の頃星座の図鑑を裸体目的で見たことがないというのか‼︎」
「ない‼︎‼︎‼︎‼︎」
「嘘つけこのむっつりスケベーーーーー‼︎‼︎‼︎おりゃーーーーとったどーーーーーーーー‼︎‼︎‼︎‼︎」