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忘れないでいて【if】3 〜birthday2〜

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忘れないでいて【if】3 〜birthday2〜



 その日、クワトロとアムロはアムロ専用の新型機の受領の為、月のフォンブラウンを訪れていた。
 二人でエレカを走らせ、アナハイム・エレクトロニクス社のプラントへ向かう。
「クワトロ大尉、僕の為に新型機なんて良いんですか?僕は別にディジェのままでも…」
「ディジェは元々リックディアスを地上用に改造したものだろう?あのままでは宇宙での戦闘に限界がある」
「それならディジェを宇宙仕様にもう一度改造し直します」
アムロの言葉にクワトロが小さく溜め息を吐く。
「アムロ、君にだって分かっているのだろう?ディジェでは君の能力を最大限に生かせない」
「…っ…それは…」
実際に、かつてマグネットコーティングを施す前のガンダムがそうだった様に、ディジェではアムロの反射速度に対応出来ない状態だった。
アムロとしても新型機をあてがって貰えるのは嬉しい。しかし、その機体の特徴に尻込みしてしまっていたのだ。
「今回の新型機がガンダムタイプなのが嫌か?」
クワトロの鋭い指摘にアムロは思わず言葉を詰まらせる。
「……」
「アムロ?」
「…今の僕に…ガンダムに乗る資格はあるんでしょうか…」
「資格?」
「はい…。貴方も気付いているでしょう?今の僕には、あの頃みたいな能力はありません」
「アムロ…」
「カミーユの方がよっぽどニュータイプ能力も高いし、モビルスーツの操縦技術も優れてる。そんな僕にガンダムに乗る資格なんて…それに、僕のガンダムは…父さんが造ったガンダムはもう無いから…」
ジャブロー基地の地下に唯一コアファイター部分だけが残っていたが、他はあのア・バオア・クーの炎に沈んだ。
「君の父上が造ったガンダムか…アムロ、君はエドヴァルド・レイブンという男を知っているか?」
「エドヴァルド・レイブン?もしかして、昔父さんと一緒にガンダムの開発に携わっていた…でも、例のサイド7の強襲の時以来行方不明で、たぶん父さんと同じ様に宇宙に投げ出されてしまったと…」
「彼は生きている。あの時に片眼を失った様だが健在だ。今はアナハイム・エレクトロニクス社のモビルスーツ開発部門の統括をしている。今回、君に配備される新型機は彼の開発した機体だ」
「エドが生きてる⁉︎それに新型機がエドの開発した機体⁉︎」
アムロは目を見開き顔を上げる。
「ああ、彼の開発した機体では不服か?」
「そんな!エドはあの偏屈な父さんが信頼していたくらい優秀で…家にもよく来てくれて僕の相手もしてくれました…。そうか…エド…無事だったんだ…良かった…」
アムロの瞳に薄っすらと涙が滲む。
当時、多忙な父親に代わってよく家まで様子を見に来てくれていた。
他に家族のいないアムロにとって、エドヴァルドは家族様な存在だった。
アムロの目に滲む涙を、そっとシャアの指が拭ってくれる。
「彼の機体に乗りたくはないか?」
優しく問いかけるその声に、アムロが小さく答える。
「…乗りたい…」
その返事に、シャアが優しい笑みを浮かべる。
「そうか…」



 アナハイム・エレクトロニクス社に到着した二人は、早速新型機が格納されたプラントへと向かう。
「クワトロ大尉、アムロ大尉。ようこそアナハイム・エレクトロニクス社へ!お待ちしておりました」
二人を、技術者の一人、スミレ・ホンゴウが出迎える。
「スミレ、久しぶりだな」
シャアと握手を交わすスミレをアムロが不思議そうに見つめる。
『子供…じゃないよな…。こんなに小さくて可愛らしい人がモビルスーツの技術者なんだ…』
小柄で、童顔に眼鏡を掛けたスミレの姿に、アムロは思わず見入ってしまう。
「これでも大人ですよ、アムロ・レイ大尉」
「えっあ、すみません!」
顔に出ていたいたのか、心を見透かされて焦る。
「ふふふ、気にしてません。大概初対面の方は同じような反応ですから」
笑顔で対応してくれるスミレにアムロも笑顔を返し、握手を交わす。
『あ、この人良い人だ…』
触れた手から伝わるスミレの心にアムロは思わず微笑む。
「アムロ・レイです。よろしくお願いします」
「スミレ・ホンゴウです」
「スミレはこう見えても腕の良い技術者だぞ。リックディアスは彼女が基礎設計をした機体だ」
「え⁉︎リックディアスの⁉︎凄い!僕もアレの地上用への改造に少し携わったんですけど、見れ見るほど凄くて!装甲やフレームにガンダリウンムγを採用して軽量化された上に、姿勢制御システムの導入でガッチリしたフォルムにも関わらず高い運動性!駆動系や細部に渡って本当に良く出来ていて、何より機体全体のバランスが最高に良い!タイトな操縦性で物凄く反応も良くて!」
拳を握り締めて熱弁するアムロに、スミレが思わず笑い出す。
「ああ!すみません、僕つい熱くなってしまって」
「いえ、褒めて戴いて嬉しいです。でも、流石はテム・レイ博士のご子息ですね。そこまで細部に渡って理解して頂けるとは…」
「だって、本当に凄いんですから!多分ジオンのドムがベースで、連邦の技術者じゃこうは…って…えっと…もしかしてスミレさんは…」
少し言い辛そうにアムロがスミレを見つめる。
「ふふ、気付かれましたか?」
「あの…じゃあやっぱり…スミレさんは元ジオンの…?」
リックディアスはガンダリウムγを採用している事から、アナハイムエレクトロニクス社ではガンダムシリーズに分類されるが、そのフォルムや機動性、操縦性はかつてのジオンのモビルスーツの特性がベースになっている。
当然その技術を持っているのはジオンの技術者である為アムロはスミレの素性を察する。
「はい、まぁ私に限らず、戦後はジオンの技術者も色々と分散しましたから」
「あ…そうですよね」
「今回のアムロ大尉の機体の開発にも参加させて頂きました。気に入っていいただけたら幸いです」
「そんな!スミレさんが開発に携わってくれたなら言う事ありませんよ!」
「今回、私は助手ですけどね。メインはウチの尊敬するチーフです。さぁさ、そのチーフがお待ちですよ。どうぞ此方へ」
 スミレに案内され、たどり着いた格納庫に入ると、白をベースに、ブルーのカラーリングが施された機体が目に入る。
「凄い!」
思わずアムロの口からこぼれた言葉に、スミレが笑顔になる。
「アムロ大尉専用機、MSZ-000通称“零式”です」
「零式…」
「装甲にはガンダリウムγを使用し、肩アーマーや背部のバインダーはリックディアスから発展させたものを採用しています」

「気に入ってもらえたかな?」
背後から掛けられた男の声にアムロが思い切り振り向く。
そこには、白髪混じりの髪に眼帯をした老成の男が立っていた。
「エド!」
その懐かしい姿に思わず抱きつくアムロを、その男、エドヴァルド・レイブンが優しく受け止める。
「アムロ、久しぶりだな!元気そうで良かった」
「エドこそ無事で本当に良かった!」
柔らかな癖毛を撫でながら、エドヴァルドが懐かしそうにアムロを抱き締め返す。
アムロの事情を予め聞いていたエドヴァルドはその昔と変わらない懐かしい姿に胸が熱くなる。
「ははは、アムロは相変わらず可愛いな。テムに似なくて本当に良かった」
「なんだよそれ!」