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敵中横断二九六千光年4 南アラブの羊

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時間差攻撃



「出ました。前方右下方、距離150!」

〈ヤマト〉第一艦橋で森が叫ぶ。通常空間に〈浮上〉してきた敵潜宙艦だ。レーダーが捉えた敵にすぐさまカメラが向けられ、望遠で拡大された像がメインスクリーンに映される。

水面上に飛び出したワニ――まさにそのように見える敵は、すぐに姿を揺らめかせてまた画面から消えてしまった。ただし、何やら小さなものがふたつそこに残って見えて、波紋のようなものがまわりに広がっている。

「あれは……」

と太田。後を継いで新見が言う。

「〈潜望鏡〉です。敵は潜望鏡深度を取った……」

『潜望鏡』と言ってもそれは、地球の海の潜水艦が持つものとは形が違う。どちらかと言えばやはりワニの眼玉だけが陸の獲物を狙うために水面から出ているような感じに見えるが、ともかく、それがガミラス次元潜宙艦の〈潜望鏡〉。ここで敵がそれだけを通常空間に出しているということは、

「来たな。やはり親誘導で魚雷を射つ気だ」

沖田が言った。そうだった。ここで敵が確実に〈ヤマト〉に魚雷を当てようとするなら潜望鏡を使う。直接に眼で見ながら魚雷を誘導するには〈ワニ〉はそうするしかない。

そして〈ヤマト〉は、今そのワニの鼻先にいるようなものと言えた。こうなったら逃げられず、ガブリと喰らいつかれるだけだ。

しかし沖田は続けて言った。「島、ここはお前の腕だ。やり方はわかるな」

「はい」と島。

「では任せる。それに古代だ。相原、〈ゼロ〉に敵を殺れと伝えろ」

「はい」

と相原。彼と島とが、コンソールに向かって機器を操り出す。

――と、そのときだった。森が叫んだ。

「魚雷です! 〈ワニ〉が魚雷を発射!」

「ちっ」

と島。操縦桿を掴んでひねる。森は続けて、

「数は一……いえ、二……じゃない、三! 時間差で射ってきてる!」

そして四つ目の魚雷を示す点が、彼女が見るソナーの画面に表れた。〈ワニ〉は一本、また一本と、数秒ずつ間隔を開けて魚雷を四つ射ってきたのだ。

四基の魚雷を一度に射つより、そのようにして射つ方が、射たれる側はより避(よ)けにくい。森が示すものを見やって、島はまた舌を鳴らした。〈ヤマト〉は彼の操縦により、今やクルマのドリフトレーサーが峠に挑むような動きを始めている。

右に左に船体を揺らし、大きく尻を振らせながら進む方向を転じさせる。三次元の宇宙だから、これにジェットコースターか、エアレースの軽業(かるわざ)飛行のような上下機動が加わる。

それを重い〈ヤマト〉の船体を用いてやるのだ。中にいる者達は、そのたび体をあちらこちらに持っていかれる。

クルーはいま全員が重力アンカー無しの波動砲発射に備えて耐衝撃シートに座り、安全ベルトを締めたままでいた。主計科の鍋の蓋などは、しっかりと閉じて決して開かぬようにロックを掛けた状態にあった。そうでなければ船の中はえらいことになってるだろう。

いや、えらいことになっていた。医務室で佐渡先生が、この状況でも酒を飲んでいたために「わーっ!」と叫んで転がっている。

時間差を取って射たれた四基の魚雷は、少しずつ角度を変えて扇形に広がりながら〈ヤマト〉めざして進んでくる。島の操舵はその〈ワニの眼〉による誘導を少しでもしにくくさせるためのものだった。その間に相原が、古代に向けて指示を飛ばす。

〈潜望鏡〉――〈次元海面〉からわずかに出ているだけの〈ワニの眼〉は、〈ヤマト〉のスナイパーである副砲をもってしても仕留めにくい相手だった。地球の海の潜水艦の潜望鏡が、敵には波に見え隠れしてしまうように。

次元海面スレスレにいる敵を〈ヤマト〉は狙い撃てない。けれどもそれができる兵器が別にあった。

そうだ。対潜ロケットランチャー。古代と山本の〈ゼロ〉がまだ二発ずつ持っているロケット弾なら敵を討てる。

古代が〈ワニの眼〉を潰すのが先か、魚雷が〈ヤマト〉に届くのが先か。この二隻の果し合いはそこにかかっていることになった。まずは山本の〈アルファー・ツー〉が、〈波の下〉にいる敵に向かって突っ込んでいく。