悪魔言詞録
82.幻魔 クラマテング
ああ、もう! なんなんだよ、あのぼんくらどもは!
あ、ちょっと召喚主さん、聞いてくれよ。え。嫌だ? そんなことを言っても、無理やりにでも聞いてもらうんだけどな。
最近、俺の手下のテングどもがろくすっぽ仕事をしやがらねえんだよ。斥候とかワナの設置とか、簡単なところばかりを任せてるのに、それすらもしくじりやがる。こんなんじゃ、これからのうちらテング業界、お先真っ暗だ。
俺が若かった頃は、こんなんじゃなかったはずなんだけどなあ。どんな小さい仕事でも一生懸命にこなして少しでも上の階級に所属できるよう努力してたし、嫁さんを楽にしてあげられるように努力もしてたんだけど。今は家庭を持つテングも少なくなってきているし、これも時代ってやつなんかな。
へ? 俺が若い頃、上の偉い人はどうだったかって?
ああ、そりゃあもう、とにかく厳しいの一言に尽きたね。なんかあったら殴る、蹴る、張り飛ばす。そんなことが日常茶飯事だった。
でも、たまに飯をおごってくれることもあったっけなあ。飲みながら朝まで理想のテング像について語り明かしたこともあったっけ。
…………。
どうだい。召喚主さん。今からちょっとギンザのバーまで飲みに行かねえかい。
え? あんたと、理想のリーダー像について語りたくなったんだよ。あんたとはそれこそ俺がコッパテングだった頃からの付き合いだし、俺を含めたたくさんの悪魔を率いて連戦連勝しているんだ。持論が全くないだなんて言わせねえぜ。
何? 未成年だからお酒が飲めない? おいおい、あんた悪魔だろ。いまさら人の法になんか従う必要はないし、そもそも悪魔ってのは悪いことをするんだぜ。
でも飲みに誘うんなら、若いテングたちを誘ったほうがいいんじゃないかって? ああ、下の話をよく聞いてコミュニケーションを取らなきゃいけないのは、さっきのあんたの話で十分よく分かってるよ。
でも、まず今夜はあんたと杯を酌み交わしてえのさ。それじゃあ、行こうぜ。